– あまりなじみがない方も多いと思いますが、訪問美容とはどういったものでしょうか?
例えば、歩行が困難な方や寝たきり等の要介護状態にある方など、何らかの理由で美容室に行くのが難しい方のお宅や施設に伺いサービスを行うのが訪問美容です。高齢者のお客様が多いですが、私が訪問美容を始めた頃に規制が緩和されて、乳幼児の育児中の方や介護者なども対象になりました。パニック障害のように精神的な障害に悩んでいる方もいます。そういった方々のためのサービスです。
– 高齢化社会の日本では必要とされる方も多そうですね。サロンワークとはやり方も違いますか?
サロンに来るお客様は基本的に動かないのでやりやすいですが、訪問美容の場合、車いすに座ったままで首が曲がってしまい顔を上げられない方や、髪を切るのを嫌がって抵抗する方もいます。ベッドに寝たきりの方もいらっしゃいますので、寝たままの状態でカットすることもあります。今までのサロンでの常識が通用しない世界です。最初は試行錯誤しながらやっていましたが、訪問美容の経験を積むことにより、様々な状況に対応できるようになりました。今でも難しいと思うこともありますが、それをどう工夫して対応するかという楽しさもあります。本当に困っている方からの依頼がほとんどなので、感謝の重みが違います。やりがいを感じる部分ですね。髪を切るのをあきらめていた人もいるので、このサービスがあるのをもっと多くの人に知ってほしいです。
– 困っている人を助けられる。やりがいも大きいですよね。三重県で訪問美容をやろうと思ったきっかけは何ですか?
元々、埼玉のサロンで美容師をやっていたのですが、朝から晩まで働いて自宅に帰って寝るだけという生活が続いていました。妻は助産師・看護師なのですが、夜勤もあるため一緒にいる時間もなく、「結婚しても夫婦というよりは同居人みたい」と言われることもありました(笑)。結婚してから2年程埼玉でそのような暮らしをしていましたが、お互いにこのすれ違いをどうにかしたいと考えていました。そこで、私が30歳になるタイミングで、生活の拠点や生き方を変えてみよう思い、妻の出身地である三重県に移住することを決めました。
以前から「美容師と助産師の両方を活かせる仕事ができたら面白いよね!」と妻と話をしていたのですが、規制緩和で育児中の方も対象となることを知り、訪問美容なら理想の働き方ができるのではと思い始めることにしました。助産師の妻は、育児中はなかなか美容室に行けないという相談を受けることも多く、需要はあると感じています。