– 「何度でも繰り返し見たくなる。」そんな、クセになるせいのさんの作品ですが、この独特なタッチはどのように描いているんですか?
サイトに掲載しているイラストは鉛筆や色鉛筆などのアナログな画材で描いています。鉛筆にも様々な種類があるので、ザラザラした質感を出すときは3Bや5B、ツルツルした質感を出すときはHや2Hを使うというように表現したい質感に合わせて使い分けています。鉛筆の濃さと筆圧を調整することで、独特な質感が表現できるんです。
鉛筆の魅力は、手書きの温かみとザラザラした特有の質感だと思います。例えばこのページに載っているケーキのイラスト。参考にする写真を見て、陰影などの特徴をつかみながら丁寧に描いていますが、鉛筆特有の温かみが感じられると思います。
– この作品など、花びら一枚一枚の細部まで繊細な描写に圧倒されます。
武蔵野美術大学で日本画学科を専攻していたこともあり、意識している訳ではありませんが、日本画の技法を活かせている作品もあるのかもしれません。菱田 春草や田中 一村という植物を美しく描く日本画家にも影響を受けました。日本画は情緒を描くという特徴があると思いますが、そのもののリアルさではなく、感じた情緒をイラストに落とし込みます。リアルな部分と私の感性で描いた情緒的な部分が融合している。そんな作品もあります。甘過ぎず、少しミステリアス。そんな不思議な世界観が好きなので、ちょっとしたスパイスを入れたイラストを考えることが多いです。
– 日本特有の美意識である「侘び」「寂び」のような言語化の難しい感覚が、情感のある表現に繋がっているのではないかと感じました。
日本画の経験の影響もあると思います。いわゆる立体的なデッサンよりは、平面的なイラストが好きです。ただ、リアルさが好きな面もあり、どちらも融合させるような工夫をしています。対象物の良さを引き出し、想いを伝えることが一番の目的だと思っているため、最適な表現方法を常に考えています。完成した作品に感動できるか。その部分を大切にしています。