外国人観光客だけでなく、日本で働き暮らしている外国人も増えています。しかし、日本人の多くは英語を話せず、日本語でコミュニケーションをとれる外国人の方も少数派でしょう。日本語は日本以外の国ではほとんど話されていない言語であり、外国人にとって馴染みのない文字ですので、話すことができても、読み書きする難易度が非常に高いわけです。

あらゆる分野でますます多言語対策が必要になる中、弊社が以前リリースしたTOKIでも、Webサイト訪問時にインデックスページを表示し、任意の言語を選択できる機能を実装いたしました。カスタマーサポートへのお問い合わせでも、Webサイトの多言語化についての質問が増えている印象があります。しかし、残念ながらWordPressは多言語(バイリンガル・マルチリンガル)ブログには対応していませんので、今回は多言語化するのに便利なプラグインをご紹介させていただきます。

WordPressにおける多言語対応とは

一言で「多言語化」といっても様々な方法があり、一概にプラグインを利用すればいいわけではありません。よく「プラグインをいれれば全部自動で各言語に切り替わる」といった誤解をされている方もいらっしゃるようですが、実はそう単純なことではないのです。現状では別サイトなどにコピーし手動で翻訳する方法が一般的です。わかりやすくこちらの記事にもまとめられておりますので参考ください。
WordPress で多言語サイトを作成する

多言語化にあたって考える事

多言語化に取りかかる前に

実際にサイトを多言語化していくには、これから紹介するようなプロセスで行うのが一般的です。
かなり骨の折れる作業ですので、まずは「サイト設計」「サイトマップ」「内容」を見直し、本当に多言語化が必要かを考えましょう。

多言語化のプロセス

多言語化のプロセスですが、下記のような手順で行って行きます。

  1. サイトの設計(どんなサイトを作成するか。ターゲットは?)
  2. WordPressの実装方法の選択(すごく重要です!)
  3. 原稿の作成と翻訳
  4. WordPressのインストール
  5. テーマの選択
  6. プラグインの選択
  7. コンテンツ投入

この中でもまず重要なのがWordPressの実装方法の選択です。
多言語化の方法を下記に記述しますが、まずは自身のサイトの何を多言語化するのかというコンテンツから考える必要があります。

コンテンツについて

コンテンツにはそのまま直訳で使えるものもあれば、完全に新しいものを作成しなければならないものもがあります。例えば、TCDテーマの販売サイトを多言語化するとすると、内容としては3つに分ける事ができます。

・製品のテーマ機能やマニュアルページ
→これは言語が変わっても、同じ内容となるため、そのまま翻訳すれば使用できます。
・製品の価格
→価格は国によって、通貨、税金などが変更になるため、一部コンテンツの修正が必要になります。
・製品のサポートや販売元
→海外営業所や問い合わせ先が変更になる場合にはオリジナルコンテンツの作成が必要になってきます。

といった具合にコンテンツ毎に修正がでてきます。この割合によって、ここからの実装方法の選択を決めましょう。

多言語化の方法

それでは多言語化の方法ですが、大きく3つあると考えます。

  1. 言語別にWordPressを分ける
  2. マルチサイトで作成する
  3. プラグインを使う

言語別にWordPressを分ける

WordPressを言語事に別々の海外サーバーへインストールする方法です。
日本国内サーバーだと海外のユーザへのデータ転送が遅くなる可能性があることから、言語事に別の海外サーバーを借り、WordPressを運用します。予算と人員がおり、大手のサイトなど海外での事業が大きい場合にはこちらをおすすめします。

メリット:各国へのデータ転送速度などの影響を受けない。
デメリット:運用とメンテナンスコスト・手間が増える。

マルチサイトで作成する

WordPressをマルチサイト化し、1言語1サイトで運用する方法です。
マルチサイト機能とは、1つのWordPressのインストールでブログを複数管理出来る機能です。プラグインを使用すれば、独自ドメインなども使用できます。ただし、設定が少し複雑なため、WordPress初心者の方にはおすすめできません。TOKIのデモサイトTOKIの英語版サイトでは、こちらの方法を採用しております。

メリット:1つのWordPressで多言語テーマを管理できる。管理者を分ける事ができる。
デメリット:設定やメンテナンスが複雑で初心者には難しい。

マルチサイトを構築する方法に関してはこちらの記事なども参考ください。

※弊社ではマルチサイト機能に関してはテーマとは無関係の部分で不具合が起こることが時々あり、サポート対象外となっております。

プラグインを使う

最後にプラグインを使用する方法を解説します。
多言語プラグインは多くあり、それを使用することで実現する方法です。

メリット:既存のサイトを多言語化できる。
デメリット:テーマやプラグインと干渉する可能性がある。

多言語プラグインの紹介

多言語プラグインと一口にいっても、たくさんの種類があり、それぞれに一長一短がありますので、以下の3つのタイプごとにまとめてみました。

  • マルチサイト(1サイト1言語)型
  • 1言語1記事型
  • 1記事複数言語型

また、一部を除いた大多数のプラグインは、他言語のページはサブディレクトリに設置されます。それでも問題ないよという方はいいですが、サブドメインや別ドメインで運用したいという方には向きません。サブドメインで運用したい場合は、「Polylang」をおすすめします。

いずれのプラグインも自動翻訳されるわけではなく、ご自身で言語ごとのページを作成する必要があります。それらを紐づけるためにこれらのプラグインをご活用いただけます。

マルチサイト(1サイト1言語)型

Multisite Language Switcher
マルチサイトタイプのプラグインで一番有名なのはこのプラグインです。非常にシンプルな設定画面です。ただし、カスタム投稿には対応しておりません。

1言語1記事型

Bogo
ContactForm7の制作者が作られたプラグインで、安心感があります。WordPressに元々ある多言語機能を有効活用しており、シンプルなサイトを作る人向けです。
参考サイト
Bogo で WordPress を多言語化
WPML
WPMLは有料プラグインです。多言語プラグインとしては一番有名でとにかく多機能です。日本語のサポートもあります。デメリットとしては、プラグインの重さと他のプラグインとの干渉が多いということがあります。こちらを使用する場合にはWPMLを中心にサイト構築を行うことになりそうです。
参考サイト
WPML – WordPress用多言語プラグイン
Polylang
プラグインが軽く、他のプラグインやテーマとも相性のいいプラグインです。投稿や固定ページだけでなく、メディア、カテゴリー、タグ、メニュー、ウィジェット、カスタム投稿、カスタムタクソノミー、スティッキーポスト、ポストフォーマット、RSSフィードにも対応しており、筆者としてはおすすめのプラグインです。

1記事複数言語型

qTranslate X
1つの投稿に全ての言語をいれる形の方式です。そのため同じ画面の中で複数の言語を編集できるというのは人気の理由です。ただし、他のプラグインとの干渉などが懸念点です。

2021年8月31日よりWordPress公式からはダウンロード不可になっています。なお後継は、Githubで公開されているようです。WordPressの管理画面からは更新できませんが、ご興味のある方はどうぞ。
>>https://github.com/qtranslate/qtranslate-xt

自動翻訳ツールは使えるか?

WordPressプラグインには「Google翻訳」と連携しているものもあり、翻訳の自動化が可能です。下のような翻訳ウィジェットを使うことで、サイトを丸ごとGoogle翻訳で他言語に変換することも可能です。

>> FREE Website Translation Tool/Widget – TranslatePress

また、DeepLといったGoogle翻訳よりも優れたツールを使うのもありです。

ただ、そもそもこうしたビッグデータを使った自動翻訳ツールは、どこまで信用性があるかも頭に留めておきたいところです。中にはほぼ100%信用している人もいますので。

基本的に、自動翻訳ツールは「直訳」です。ネイティブから見れば、自然な言葉にはなっていません。そのため、LPのキャッチコピーや広告を作る際には自動翻訳ツールは役に立ちません。

自動翻訳ツールは直訳されることを前提に元言語の入力内容を工夫することが重要です。それによって、意味が通じる文章になりやすいです。以下を気をつけます。

  1. 教科書通りの文法に直す。
  2. 抽象的・独特な日本語の表現は避ける。
  3. 文章をシンプルにする。
日本語の入力内容を工夫する:
「昨日はハンバーグ。今日はお寿司。」
→「私は昨日ハンバーグを食べました。今日は寿司を食べます。」
「福島と広島に行った。」→ 「私は福島さんと広島に行きました。」

まとめ

多言語サイトは、今や当たり前の存在になりつつあると思われます。Webサイトを多言語化するのは、手間のかかる作業ですので、不要な作業は極力避けて効率よく構築・管理することが大切です。通常のサイト作りにおいても、ターゲットを意識し、効果的なサイト作成の方法を見直してみてはいかがでしょうか。