「社内で使う研修資料を生成AIで作りたいが、精度が低くて困っている」という担当者に向け、本記事では研修資料作成を代行しているライターの私が1つの解決案を提示しています。
また、生成AIを使って研修資料を作成したことがない担当者向けに、まずは生成AIで研修資料を作成する方法から解説します。本記事では研修資料作成で生成AIを使ううえでの注意点だけでなく、精度を高めるコツやプロンプト例も紹介している記事です。
企業研修の一環として講師で登壇する機会のある方も含め、ぜひ本記事を役立ててください。
目次
生成AIで効率的に研修資料を作成する方法
生成AIで研修資料を効率的に作成するには、一度ですべてを生成しようとするのではなく、以下のように段階的に作るのがおすすめです。
1.アウトラインを作成する
生成AIで「〇〇に関する研修資料を作成して」といきなり指示をするのではなく「〇〇に関する“アウトライン”を作成して」と、段階的に指示を送りましょう。
アウトラインとは、書籍で言う「目次・見出し・章立て」を表しているため、作成しようとしている研修資料の全体像を作り出す段階です。
例えば、いきなり研修資料を作成した場合、誤字脱字や誤情報がないか確認する際の文字量は膨大になってしまいます。また、生成AIで作成する研修資料の方向性に間違っていると、修正の負担や時間がかかるのです。
生成AIでアウトラインを作成するうえで、研修に参加する対象者の理解度や研修後の目標値などを示しておくと精度が高まります。
研修資料を生成AIで作成する際の具体的なプロンプト例は本記事の後半でお伝えするので、ぜひこのまま読み進めてください。
※ちなみに私の場合、アウトライン作成は「Felo(フェロー)」を使っています。
インターネット上には膨大な情報があふれており、必要な情報のみをフォーカスして見つけるのは容易ではありません。特に、多言語の情報やSNSのリアルタイムなトレンドを追いかけるには、時間と労力がかかります。 しかし、検索に特化したAI「Felo(フェロー)」を導入すれば、これらの問題を解決できます。...
2.アウトラインを基盤に各章の本文を作成する
生成AIで研修資料用のアウトラインが整ったら、作成したアウトラインに基づいた本文を生成してもらいましょう。この段階でも「アウトラインに基づいて本文を作成して」と指示をするだけでは正直、不十分な生成結果になってしまいます。
具体的な対策として、生成AIに以下のような指示を追加するのがおすすめです。
- 講座の所要時間
- 研修資料の全体文字数
- 各章の最低文字数
- です・ます調の統一
- アウトラインの書き換え禁止など
上記、生成AIでプロンプトに書き加えておくと、作成してもらいたい研修資料のテイストに合った資料が生成されやすくなります。実際に私も指示を追加しなかった時と追加した時とでは差が歴然でした。
なお、各章の文章生成は生成AIごとで精度が異なるので、ChatGPTやGeminiなどの複数ツールを使うのがおすすめです。
3.生成AIが作成した内容を確認し推敲する
生成AIでアウトラインと本文を作成したら、研修資料は完成というわけではありません。生成AIが出力する文章・情報はすべてが正しいとは断言できないため、必ず原稿の最終チェックは「人の目」で実施しましょう。
また、生成AIはケーススタディのような実践に基づいた文章生成は苦手な傾向にあるため、適宜社内独自の情報を入れ込むのがおすすめです。
機械的な文章が生成されやすい生成AIでは、体験や感情を揺さぶる表現も苦手な文章を最終的に修正しましょう。しかし、言語化が苦手な方は「なるべく生成AIの力を借りたい」と思う方もいるでしょう。
文章に表現するのが苦手な方は、生成AIで「〇〇の部分を〜〜っぽい例え話を交えたい」と要望を伝えると、違和感なく書き加えてもらえる可能性があります。
一度の生成で満足せず、生成AIを「優秀なサポーター」として活用していきましょう。
生成AIを使って質の高い研修資料を作成する方法
生成AIを使った研修資料作成の質を高めたい場合、以下の基本構成を意識してみましょう。
学べる内容や目的の提示
生成AIで研修資料を作成するうえで、ただの用語解説をまとめた資料にならないよう「何が学べるのか」「何を目的にした資料なのか」を明記しましょう。
特に生成AIで研修資料を作成してもらおうとして、具体的な指示なく進めると、出力次第では用語解説で終わってしまいます。また、受講生も何のための研修なのかが不透明なまま研修に参加すると、無駄な時間と捉えられる可能性もあります。
つまり、生成AIで研修資料を作成するうえで、研修を通じたゴールを設定し、追加で指示出しすることが大切になるのです。学習効果を高めるためにも、どう活かしてもらいたいのかを実務レベルで学べる内容を資料内で提示しましょう。
知識レベルに応じた専門用語の解説
研修資料の質を高めるためには、生成AIを使って専門用語を1つのトピックとして解説するフェーズを増やすべきか、客観的な評価が得るのがおすすめです。
生成AIを活用せずに研修資料を作成しようとすると、理解度を研修参加者に合わせる際、どこまで用語解説をすべきかの判断が難しいでしょう。
生成AIでは、業界に対する知識レベルをプロンプトに追加で指示出しすることで、研修参加者の知識レベルに合わせた資料作成が可能です。
例えば、叩き台として自分で作成した研修資料でも、業界に関する知識が疎い新入社員向けであることを生成AIで示してみてください。
自分では当たり前に使っていた用語も、生成AIでは知識レベルに応じた文章に置き換えて生成してくれます。
社内で実践する際の実用・活用例
研修参加者が資料を見て実践できるよう、社内で起きた事例を学習させたうえでの実用・活用例を出力させると、資料全体の精度が高まります。
生成AIで出力した文章は、当たり外れのない機械的な文章は得意な反面、独自性に欠ける内容が生成されるため、実務レベルの落とし込みは難しいものです。
しかし、実際に社内で起きたことを列挙し、成功事例をもとに出力すると、社内独自の研修資料が作成できるのです。社内独自の研修資料は、実務レベルに落とし込みやすく、研修参加者の学習効果を高められるでしょう。
生成AIにインプットさせる過去の事例がない場合は、他社で起きた事例をもとにケーススタディやディスカッションの項目を追加するのもおすすめです。
リスクを防止・削減するためのポイント
研修自体の質を高めるために、成功事例だけでなく失敗事例や注意事項を記載するのがおすすめです。新入社員は、やって良いことと悪いことの判断がついていないものです。
特に考え込んでしまいやすい社員は「これはやったら注意されないかな……」と、深く悩んでしまいます。つまり、リスクを防止・削減するためにも研修資料のテーマに基づいた注意点を記載するフェーズが必要になるのです。
例えばデザイナー業界では、使用するイラストや写真などが著作権を侵害していないのかを、ケースバイケースで考えてもらう項目を増やしても良いでしょう。
著作権法は、原創作物(例えば、文学作品、絵画、音楽、写真など)の著作者に対し、その作品の使用について特定の権利を提供します。これらの権利には、作品の複製、公開、展示、演奏、および派生作品の作成(つまり、元の作品に基づいた新しい作品)が含まれます。 AIが生成した画像についての著作権問題は、まだ...
また、生成AIで文章や画像などを出力し、業務効率化を図る業界でも著作権に関する事柄は注意喚起しておくのがおすすめです。なお、本セッションで解説している注意点に関しては後述で深掘りしているので、ぜひこのまま読み進めてください。
生成AIで研修資料を作成する際の注意点
生成AIで研修資料を作成する際、すべてを生成AIに任せるわけでなく、以下のポイントを注意しながら作成する必要があります。
情報の正確性を確認しなければ誤情報の発信になる
生成AIが出力する文章は、自然な文章を瞬時に生成してもらえるメリットはある一方で、誤情報であっても正しい情報かのように生成するリスクがあります。
例えば研修資料内で、他社の事例や数値を示すフェーズがある場合、その事例や数値が正しい情報なのか、必ず人の目でチェックしましょう。実際私も生成AIで他社の料金を比較したく、生成AIに出力してもらった結果、事実と異なる結果が生成されました。
また、生成AIが出力した情報は最新の情報が文章化されるとは断言できないため、古い情報が生成されていないかのチェックも必要です。
誤情報の発信は研修資料だけでなく、オウンドメディアやSNSでの発信にも影響します。生成AIで何らかの文章を生成してもらう際は、専門知識のある方を含めてダブルチェックするのがおすすめです。
機密情報や個人情報のインプットは避ける
生成AIに何らかの情報を学習させ、精度を高めようとする際、機密情報や個人情報のインプットは避けましょう。そもそも生成AIの大半が、入力したプロンプトを含めた情報を、生成AI側のサーバー内に保管されます。
サーバーエラーやハッキングなどのトラブルが発生した際、生成AI側のサーバーに保管された情報が流出してしまうのです。実際にOpenAI社も2023年3月20日に、バグが発生してChatGPT Plusに加入している方の情報が一部、他者でも閲覧できる状況になった可能性があることを報告しています。
自社の情報や顧客の情報を守るためにも、すべての情報を生成AIにインプットするのではなく、社内でセキュリティ対策を方針化する必要があるのです。
参考:OpenAI「3月20日のChatGPT障害:何が起こったのか」
生成AIで研修資料を作成する際のプロンプト例
ここからは、生成AIを使って研修資料を作成する際のプロンプト例を紹介します。ぜひ、社内で作成する研修資料の精度を高める際に、1つの参考としてご活用ください。
※あくまで「このプロンプトを使えば100%のものが出力される」と思わず、最終的には自分の目で文章のご確認をお願いします。
アウトライン作成編
以下、囲い線内にあるのは研修資料作成におけるアウトライン作成のプロンプト例です。自由に書き換えて自社オリジナルのプロンプトとしてブラッシュアップしてみましょう。
以下の条件をもとに、「研修資料のアウトライン(目次・章立て)」を作成してください。
【研修テーマ】
(例:新入社員向け ビジネスマナー研修)
【対象者】
(例:新卒・入社1年未満の社員)
【対象者の知識レベル】
(例:業界・社会人経験ともに初心者レベル)
【研修の目的】
(例:社会人として最低限必要なマナーと心構えを身につけ、自信を持って業務に臨めるようにする)
【研修後のゴール】
(例:上司・顧客に対して、適切な言葉遣い・立ち居振る舞いができるようになる)
【研修の所要時間】
(例:90分〜120分想定)
【アウトライン作成ルール】(※ 自由に書き換えてください)
・章(大見出し)と項目(小見出し)のみを作成すること
・構造は「はじめに → 基礎 → 実践 → ケース → まとめ」など、段階的な学習になるよう設計すること
・対象者のレベルに合わせて専門用語はなるべく避けること
・最低でも5〜7章構成にすること
・それぞれの章の「狙い」も一言で補足すること
それでは、上記条件に基づいた研修資料のアウトラインを作成してください。
各章の本文作成編
以下、囲い線内にあるのは研修資料作成における本文作成のプロンプト例です。自由に書き換えて自社オリジナルのプロンプトとしてブラッシュアップしてみましょう。
以下のアウトラインに基づいて、研修資料の「本文」を作成してください。
【アウトライン】
(ここに、先ほど生成したアウトラインを貼り付けてください)
【研修の所要時間】
(例:90分〜120分)
【研修資料の全体文字数】
(例:8,000字前後)
【各章の最低文字数】
(例:1章あたり800〜1,200字)
【文章ルール】
・「です・ます調」で統一する
・アウトラインの書き換えは禁止
・1文は長くなりすぎないよう簡潔にする
・必要に応じて、箇条書きや番号付きリストを活用する
・実務で使える具体例・イメージしやすい表現を取り入れる
【追加要望】
・読者が「明日から実践できる内容」にすること
・専門用語が出る場合は、必ず簡単な説明を加えること
・可能な箇所には、例え話やケーススタディを入れること
それでは、上記条件に従って、アウトラインに基づく研修資料の本文を作成してください。
まとめ
本記事では、生成AIを使った研修資料の作成方法や精度を高めるコツ、作成時の注意点、プロンプトの一例を紹介しました。本記事の内容をまとめると、以下のとおりです。
生成AIを使うと、リサーチや文章入力などの時間を大幅に短縮できる魅力があります。しかし、生成AIに任せすぎると、誤情報の発信や機密情報・個人情報などの漏洩リスクも伴います。
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