著作権法は、原創作物(例えば、文学作品、絵画、音楽、写真など)の著作者に対し、その作品の使用について特定の権利を提供します。これらの権利には、作品の複製、公開、展示、演奏、および派生作品の作成(つまり、元の作品に基づいた新しい作品)が含まれます。

AIが生成した画像についての著作権問題は、まだ未解決の領域です。しかし、一部の事例では、AIが著作権保護対象の作品を基に新たな画像を生成した場合、それは元の作品の派生作品と見なされ、元の著作権者の許可なくこれを公開したり販売したりすると著作権侵害となり得る、という立場が取られています。

たとえば、文化庁は2023年5月30日に生成AI画像について下記の通り発表しています。

生成された画像等に既存の画像等(著作物)との類似性(創作的表現が同一又は類似であること)や依拠性(既存の著作物をもとに創作したこと)が認められれば、著作権者は著作権侵害として損害賠償請求・差止請求が可能であるほか、刑事罰の対象ともなる

>> AIと著作権の関係等について – 文化庁
>> 生成AI画像は類似性が認められれば「著作権侵害」。文化庁

AIがその作品を生成するために元の著作物を「複製」または「参照」するかどうか、および生成された作品が元の作品とどれだけ「類似」しているかによる可能性があります。例えば、AIが具体的な画像(著作権で保護されている可能性がある)を直接参照して新しい画像を生成した場合、それは元の著作物の著作権を侵害する可能性があります。

この点は、著作権侵害の判断基準自体はAI生成画像以外の場合と何も変わらない(依拠性、類似性による判断)と考えて良いと思います。

しかし、この問題は非常に複雑であって、各国や地域の著作権法、具体的な事例、そして法廷の解釈により異なる結論を導くことがあります。そのため、具体的な状況において何が著作権侵害に当たるかは専門的な法律助言が必要となるでしょう。

すでに米国では生成AI画像に対する訴訟ははじまっています。生成AI画像を提供する「Stablity AI」や「Midjourney」などに対し集団訴訟が行われています。今後も技術の急激な進歩とクリエイターの権利は一定程度対峙が続くことでしょう。

>> ASCII.jp:AIの著作権問題が複雑化 (1/4)

とは言え、生成AI画像を提供する事業者側も著作権問題について、積極的な対策が行われ始めています。たとえば、Adobe社の提供する「Adobe Firefly」では、「Adobe Stock」の著作権フリーの素材のみで学習させることで、著作権問題を回避した上で、知財トラブルがあった場合は賠償金を保証するとも宣言しています。

>> 生成画像で知財トラブルあればアドビが補償 画像生成AI「Adobe Firefly」にエンタープライズ版(ITmedia NEWS)|dメニューニュース(NTTドコモ)

このように生成AI画像の著作権問題は未だ解決はしていないですが、法的枠組みは今後数年でさらに発展し、明確化すると予想されます。

雑感

5/30の文化庁の資料についてですが、著作権法第30条の4で「『表現上の本質的な特徴』を感じ取れるような映像の作成を目的として行う場合は、元の風景写真を享受することも目的に含まれていると考えられる」という表現で、著作権を侵害する可能性がある画像等を生成することを目的にAIに学習させる場合は、「思想、感情の享受を目的としない利用」には該当しない=著作権侵害である、と解釈しているようにも見えます。

これは、開発・学習段階と生成・利用段階は分けて考えるべきと言いつつ、結局利用の仕方が学習段階の行為をも制限することになりませんか、という点で少し疑問が残るところ。

これらは屁理屈とも捉えられるかもしれませんが、一連のAIに関する著作権規制の動きを見ての雑感です。

いずれにせよ、今後もAIとクリエイターの創作活動の衝突が起こることで一定のルールが固まっていくと思われますので、注視していきたいと思います。