AIで事務作業を効率化できる業務とは？事例とメリット・デメリット

日々の業務に追われ、注力すべき業務に手が回らないと感じている方は少なくないでしょう。

多くの企業では人手不足が深刻化しており、いかに少ないリソースで生産性を高めるかが課題です。

このような状況を打開するには、AI（人工知能）による事務作業の効率化を検討すべきです。現に、定型業務の自動化やデータ分析など、多岐にわたる分野で活用が進んでいます。

この記事では、AIが事務作業をどのように効率化できるのか、具体的な事例やメリット、デメリットを詳しく解説します。AIを活用した業務改善に関心のある方、企業の生産性向上や従業員の働き方改革につながるヒントが得たい方は、ぜひ最後までお読みください。

AIで事務作業の効率化はできる？

AI（人工知能）は、人間がおこなっていた定型的な事務作業を効率化できる可能性を秘めています。データ入力や書類作成、顧客からの問い合わせ対応など、ルールに基づいて反復される業務はAIの得意分野です。

導入すると、これらの作業を自動化できるだけでなく、人的ミスを減らしながら処理速度を大幅に向上できます。

また、大量のデータを高速で分析し、パターンを認識する能力に優れているため、人間だけでは見落としがちな傾向や洞察を発見するシーンで重宝するでしょう。

これにより、経営判断の質を高め、業務プロセスの最適化を実現できます。企業の生産性の向上だけでなく、従業員が創造的で戦略的な業務に集中できる環境をもたらしてくれる点が魅力です。

AIで効率化できる事務作業

AIで効率化できる事務作業は、以下のとおりです。

1. 人事に関連する業務
2. データ分析
3. レポートの作成
4. 学習や研修
5. コミュニケーション

それぞれ詳しく見ていきましょう。

人事に関連する業務

人事部門では、採用活動や従業員のデータ管理、給与計算など、膨大な事務作業が発生します。しかし、AIを導入すれば、履歴書のスクリーニングや面接日程の調整、入社手続きなどの自動化を実現できます。

候補者のスキルや経験を分析し、最適な人材を効率的に見つけ出す助けになってくれるでしょう。

また、従業員の勤怠データやパフォーマンスデータを分析し、人事評価における客観性の向上や配置の最適化にも役立てられます。

AIの導入は、人事担当者が戦略的な業務に集中できる環境を整備します。

データ分析

企業活動で生成される大量のデータは、手動で分析すると多くの時間と労力が必要です。AIを導入すれば、これらのビッグデータを高速で処理し、売上予測や顧客行動の分析、市場トレンドの把握をサポートしてくれます。

複雑なデータパターンを自動認識してくれるため、人間が見落としがちな関連性や洞察を発見しやすくなるでしょう。

データ分析におけるAIの活用は、企業の意思決定を迅速化し、競争優位性を確立するために欠かせない情報を提供してくれます。

レポートの作成

月次報告書やプロジェクトの進捗レポートの作成業務は、多くの企業で発生します。しかし、AIを導入すれば、必要なデータを自動収集し、テンプレートに基づいたレポートの作成が可能です。

これにより、従業員はデータの手動入力やフォーマット調整にかかる時間を削減できるほか、内容の分析や戦略立案に時間を費やせます。

また、過去のレポートデータから傾向を学習し、精度の高いレポート作成を実現できる可能性があります。

学習や研修

従業員のスキルアップや知識習得のための学習・研修プログラムは、効果が得られるよう実施しなければいけません。AIを導入すれば、個々の従業員の学習履歴や進捗度を分析できるため、パーソナライズされた研修コンテンツを提案してくれます。

したがって、従業員は自身のペースで効率的に学習を進められるほか、企業は研修効果の最大化を図れます。

最近では、AIを活用したチャットボットが質問応答に対応し、学習をサポートするシーンが増えています。

コミュニケーション

企業内外におけるコミュニケーションは、ビジネスを円滑に進める上で欠かせません。

AIチャットボットは、顧客からのよくある質問に24時間365日自動で応答し、顧客満足度の向上に貢献します。社内では、従業員からの問い合わせ対応や情報共有の効率化に活用できるでしょう。

AIは自然言語処理の技術を応用し、人間の言葉を理解して適切な情報を提供する能力を持つため、コミュニケーションの向上につなげられます。

AIで事務作業を効率化できる事例

AIで事務作業を効率化できる事例は、大きく分けると3つあります。

1. 問い合わせにAIチャットボットを導入
2. 不良品の検知にAIを導入
3. 書類作成をAI OCRにシフト

それぞれ詳しく解説します。

問い合わせにAIチャットボットを導入

多くの企業は、顧客からの問い合わせ対応に多くのリソースを割いています。AIチャットボットを導入すると、顧客からのよくある質問に対して、24時間体制での自動応答が可能です。

たとえば、SBI新生銀行は顧客の質問に即時回答するAIチャットボットを導入し、事務作業の効率化を実現しています。

参照元：AI搭載のチャットボット導入のお知らせ｜SBI新生銀行

AIチャットボットを問い合わせ対応に導入すると、顧客は迅速に回答を得られるほか、企業はオペレーターの負担を軽減できます。チャットボットが対応しきれない複雑な問い合わせに関しては、人間が対応することで業務の効率化と顧客満足度の向上の両立が可能です。

AIチャットボットは過去の問い合わせ履歴を学習し、精度の高い回答を生成するよう進化できる点が特長です。

不良品の検知にAIを導入

製造業では、製品の品質管理が欠かせません。従来、不良品の検知は人間の目視でおこなわれるケースが多く、時間と労力がかかる上に、見落としが発生する可能性がありました。

しかし、AIを導入すると、画像認識技術を活用して製品の外観を高速でスキャンできるため、不良品の自動検知が可能です。

タイヤメーカーの大手「ブリヂストン」は、タイヤ成形にAIを導入し、生産性と品質を大幅に向上させています。

参照元：ブリヂストン独自のモノづくりICTを搭載 最新鋭タイヤ成型システム「EXAMATION」を彦根工場に初導入｜ブリヂストン

AIは大量のデータから正常品と不良品の特徴を学習するため、人間では識別が難しい微細な欠陥も高精度で発見します。これにより、品質管理の効率化と品質の安定化を同時に達成できます。

書類作成をAI OCRにシフト

契約書や請求書、申込書など、企業では日々多くの書類が作成されます。この事務作業を効率化してくれるのが、AI OCR（光学的文字認識）です。

AI OCRとは、紙の書類に記載された文字や画像を読み取り、デジタルデータに変換する技術です。導入すると、手書きの書類や印刷された書類から必要な情報を自動で抽出し、データ入力の時間を大幅に短縮できます。

実例では、株式会社神戸製鋼所が全国の拠点に導入し、業務時間の大幅な削減に成功しています。

参照元：グループ展開で全国拠点に導入！約60%の業務時間削減に成功

AI OCRの導入は、従業員の手作業による入力ミスを減らせるため、重要性の高い業務に集中させられます。特に、大量の書類を扱う部門では、業務の効率化に大きく貢献してくれるでしょう。

AIで事務社業を効率化するメリット

AIを事務作業に導入するメリットは、作業時間の削減と人件費の抑制です。AIは人間よりも高速に作業を実行し、定型業務を自動化できるため、従業員が業務に費やす時間を大幅に短縮できます。

また、ヒューマンエラーの削減もメリットのひとつです。AIは決められたルールに従って正確に作業を実行するため、入力ミスや計算ミスといった人為的ミスを極限まで減らせます。

加えて、AIは人間のように疲労を感じません。24時間365日の稼働が可能なほか、急な業務にも対応できるため、ビジネスチャンスを逃すリスクを減らせます。

AIで事務作業を効率化するデメリット

AIを事務作業に導入するデメリットは、導入コストと運用コストが高くなりやすい点です。システムの導入には、ソフトウェアやハードウェアの購入費用、システム開発費用、それらを運用するための維持管理費用が発生します。

また、システムを適切に導入し最大限に活用するには、AIやデータ分析に関する専門知識を持たなければいけません。社内に適した人材がいない場合は、外部からの採用や育成が必要となるため、コストや時間を要します。

さらに導入する際は、現在の業務プロセスをAIに合わせて変更しなければいけません。したがって、既存業務フローとの調整がスムーズに進まないと、かえって業務が停滞する可能性があります。

AIでの事務作業はどこまで自動化できるか

AIはデータ入力や書類の仕分け、簡単なメール返信、問い合わせの一次対応など、定型的な事務作業の自動化が可能です。これにより、従業員は複雑な判断や創造性を要する業務に集中できます。

ただし、すべての事務作業を完全に自動化することは困難です。特に、人間ならではの柔軟な思考や共感能力が求められる業務は、代替できません。

顧客との複雑な交渉や新たなビジネス戦略の立案、感情を伴うコミュニケーションなどは、依然として人間による作業が必要です。

したがって、AIはあくまで事務作業の一部を支援し、効率化するためのツールと捉えましょう。そうすれば、AIと人間がそれぞれ強みを活かした働き方を実現できます。

まとめ

AIはデータ入力や書類作成、問い合わせ対応といった定型業務を自動化し、作業時間の短縮や人件費の抑制などのメリットをもたらします。これにより、従業員は付加価値の高い業務に集中できるため、企業の生産性は大きく向上するでしょう。

しかし、導入には高額なコストと専門知識、既存業務フローとの調整が必要です。

また、AIはけっして万能ではなく、人間のような柔軟な思考を持ち合わせていません。そのため、すべてての事務作業を完全に自動化することは困難です。

AIの導入を検討する際は、自社の業務内容や課題を明確にし、効率化できる範囲を慎重に見極めてください。