WEB上の記事というと、どんなものが思いつくでしょうか。WEB上には、ニュースサイトの記事、芸能人や有名人のブログ、企業の販促目的の記事、一般人によるレビュー記事など、実にさまざまな種類の記事が存在します。こうした無数の記事は、すべて同じようなセオリーに基づいて作成されているわけではなく、記事を書くことの目的に合った戦略のもとで執筆されているのです。前回は読まれる記事を作成するコツをご紹介しましたが、今回は記事の目的によって変わる記事の「書き方」の基本について説明します。
サイトやブログの性質によって違う記事の内容
WEBサイトやブログは、誰が何のために、何を目的として運営しているかによって、そのコンテンツの特徴に違いが出てきます。例えば、下記のようにサイトの運営主体や目的が変わることで、文章の雰囲気や内容も変わってきます。しかも、このバリエーションは細かく分類すれば、一つとして被ることなく無限に出てくるものです。
- 企業サイトのブログ
- 芸能人ブログ
- ハウツー情報がメインのブログ
- 個人の主張がメインのブログ
一般的な企業サイトを例にすれば、その企業が一体どういう企業なのかを伝えることが目的です。したがって、最低限の情報として会社概要、商品・サービス情報、企業理念といった情報が必要です。ただ、それだけでは会社の存続を伝えるには不十分です。そこで必要になってくるのがブログやお知らせなどといった動的なページです。タイムリーに情報を発信していく行為自体が会社の信用を積み重ねる側面が企業サイトにはあるからです。
ただ、企業サイトでは個人が運営するブログと違い、発信する情報も企業の特色に合ったものが求められることが多いです。「言いたいことを言う」「伝えたいことを伝える」ことは、情報発信の基本だと思いますが、企業サイトで投稿された内容はその企業の主張だと読者には受け取られるので、「あくまでも個人の見解です」といった言い訳は通用しないわけです。だから、発信する内容も企業という主体がどう考えているかを理解しているセンスのある人が記事の執筆を担当するのがベストと言えます。単にパソコンが得意だからという理由だけで、ウェブ担当に任命しない方がいいでしょう。
一方で有名人やインフルエンサーのブログは、その有名人に興味を持った人たちを「ファン化」する、そしてファンとなった読者を満足させることが運営の目的です。したがって、その有名人の長所、強みをアピールするというよりは、その人が普段どんなことを考えているのか、昨日は何をしていたのかといった、その人の「キャラクター性」を強調する内容の記事が必要になります。
なかには「世間の注目を集めたい」という目的のブログもあり、この場合は極端な意見を発信したり、あえて炎上を狙った煽り記事や批判的な記事が書かれることもあります。いずれにせよ、この手のサイトやブログでは、書かれている内容はもちろん、運営者の「個性」そのものが重要になってくる、というのが特徴です。
このように、WEB記事といってもその方向性の違いによって、文体、内容、構成にいたるまで、かなり違った書き方が求められます。しかし、一見全く違う趣旨で書かれているように見えるWEB上のさまざまなコンテンツであっても、そのほぼすべてには1つの大きな共通点を見いだせるのです。それは「読者の求めている内容」が書かれているということです。
そういった読者のニーズの違いに合わせて、それぞれのジャンルのWEB記事が作られているのです。この点では、ニュースサイトの記事から個人ブロガーの記事にいたるまで、同じ考え方で記事が書かれているといえるでしょう。そして、もう少し細かく観ていくと、同じサイトやブログにある記事であっても、SEO対策が目的の記事、商品の購買へつなげるためのCV(コンバージョン)目的の記事といったように、記事それぞれにも別の目的があります。こうした目的の違いごとにも、記事の書き方の違いはあらわれてくるのです。
SEO集客目的の記事の特徴
では次に、記事の目的ごとにその書き方がどのように変わってくるのかを考えていきます。
まずは「SEO対策目的」の記事を用意するか否かという選択でしょう。サイトの訪問者の来訪元は主に5つに分類されます。
- 広告による集客
- 検索エンジンによる集客
- SNSによる集客
- ファン化による集客
- 口コミによる集客
1と2は多くは一見さんで占められていますが、4や5はリピーターや口コミによる集客です。一番安定的に集客が見込めるのは3と4で来訪者が占められているサイトです。こういったサイトはコンテンツもしっかり作り込まれていることが多く、ビジネスも成功している場合が多い。
ただ、ビジネスは新規で見込み客を集めていかないといけないものだし、それが低コストで出来るのがインターネットの強みでもあります。その為、検索エンジンの存在はなかなか無視できるものではありません。検索エンジンからの集客を考えるなら、SEO対策目的の記事を用意するか否かもWeb戦略上、必要な判断となります。
SEO対策目的の記事とは一言でいうと「集客」のために書かれる記事です。自社サイトや自分たちのビジネスに必要な属性に関連するキーワードを狙いに行くための記事となります。検索エンジンでキーワードを検索した新規のユーザーをサイトやブログに呼び込むことが目的なので、どのような種類のサイトやブログであっても最重要視されるコンテンツのひとつといえるでしょう。
SEO目的の記事で重要になるのは、なんといっても「キーワード」、とくにタイトルキーワードが大切です。検索ボリュームが多くて需要のある「キーワード」を選定した上で、そのキーワードを盛り込んだ魅力的なタイトルをつけなければいけません。このキーワードの選定やタイトルを失敗してしまうと、記事の中身がいくらよくてもなかなか検索上位に記事が上がってこない、という事態にもなりかねません。
そして、タイトルとキーワ―ドがうまく選べたら、次に重要なのは記事の中身です。ここもただ濃い内容を書けばいいというのではなく、その記事を読みに来た「読者」のニーズに合った内容なのかが重要です。たとえば「バナナダイエット」が記事タイトルなのに、記事の中身はスクワットについて書かれている、あるいは、なぜかバナナの種類を紹介するだけの内容になっているといったように、タイトルと中身が合っていない記事はまず読まれなくなってしまいます。
記事が最後まで読まれるクオリティになっているかも重要です。といっても必ずしも素晴らしい文章を書く必要はありません。それよりも、読者の知りたいことがすぐにわかるようになっているか、最後まで読み進めたくなるような読者目線で書かれているか、といった点が大切になります。そのためには、記事の構成をしっかり考えること、読者を主人公に見立てたストーリー展開を作って、記事を読み終えたときに読者が満足感を感じられるようにすること、といった工夫が必要です。
ファン化目的の記事の特徴
次に「ファン化」目的の記事です。ここで必要となる記事も、広い意味ではSEO目的の記事と同様に、多くのユーザーを引きつけることが重要です。ただ、「ファン化」目的の記事では、記事にやってきた新たなユーザーをファンにしてしまう「教育」としての要素を考えておかなければなりません、その方法のひとつは、発信者の魅力を読者に知ってもらうことです。そのためには、発信者自身の考え方、ライフスタイルなどを積極的に伝えていく必要があります。信頼性、という点では顔出しやある程度の個人情報の開示も効果的です。すでにある程度の知名度や人気のある芸能人や文化人、インフルエンサーであれば、コンテンツの中身が単なる日記風の文章であっても、十分読者をひきつけることができるでしょう。
ただ、「ファン化」記事では必ずしも顔出しや個人情報の開示が必要、というわけではありません。コンテンツに合った情報を独自に提供できるのであれば、匿名、顔出しなしの個人ブロガーであっても万単位のファンがつくこともあります。このあたりは発信者の運営スタンスや、コンテンツの内容によるところが大きいです。
こうした「ファン化」目的の記事は、発信者の個性を読者に強く伝えなければならないのですが、それと同時にある程度「集客」効果も考える必要があります。この「発信者の個性」「集客」の両方を狙える記事が、いわゆる「バズ化記事」というものです。バズ化とはネット用語の「バズる」からくる言葉で、内容のおもしろさや衝撃度によってSNSやネット掲示板などで話題にしてもらうことで、大量の読者を獲得することを狙うことを意味します。ただ、この「バズ化」は狙い通りになることが非常に難しく、WEB記事執筆のテクニックとしてはかなり上級レベルといえるでしょう。自分の思っていた以上の反応があることも多く、炎上した場合にはかなりのストレスをこうむることもあります。
しかし、まったく「バズ化」記事にチャレンジしないというのはもったいないです。どうしても伝えたいといった思いの強い記事、あるいは単純におもしろさが伝わるような画像や文章があれば、その記事がバズ化する可能性は大いにあります。一度バズ化した場合にはサイト、ブログへの新たな検索流入は桁違いになることもあるので、いくつかの記事でバズ化を意図的に狙った記事を何本か作ってみるというのも、「ファン化記事」の執筆ではおもしろい方法です。
CV誘導目的の記事の特徴
WEB記事の多くは、PV数を集めてきて記事を読んでいる人に何らかの商品やサービスを買ってもらう、という目的でも書かれています。いわゆる商品販売サイトやアフィリエイターの運営するサイト、ブログでは必須となる記事です。こうした記事の制作では、「CV誘導」「CV率を上げる」といった言葉をよく使います。このCV(コンバージョン)とは何かというと、サイトを訪れた人のうち、どれくらいの人がそのサイトの目的である商品やサービスの購入にいたったかを示す指標です。CV率を上げるのは、単に良質な情報を提供するだけでなく、その記事を読んだ読者に対して「問題を解決するにはこの商品が必要ですよ」といった流れを作り、目的の商品の成約につなげる記事の構成や文章を用意する必要があります。
こうした記事を書くための基本的なテクニックを紹介しましょう。まず1つめは、必ずCVにつなげる商品、サービスのキーワードをタイトルに入れること。そして、2つめは商品の価格など、数字の情報を明確にするという点です。例えば、「人気ブランドのジャケットが割引中」というテキストより「人気ブランドのジャケットが4280円」といったように、価格を明示した方が読者のクリック率が上がる傾向があります。特典情報や時間制限などの情報も明確に盛り込んだ方がいいです。ただ、余計な誇張やむやみに期待感をあおる文章は逆効果でしょう。あくまでも、読者に対しては正確な情報を具体的に伝える、というスタンスが、CV率を上げるための記事の書き方では重要になります。
全てに共通するのは「読者の二―ズ」に合わせるということ
サイトやブログの目的や性質によって、記事の作り方には違いがあります。ただ、その全ての種類に共通するのは、その記事の読者のニーズに合った情報を提供することです。どのような記事であっても読者目線を第一に書かれなければ、狙い通りの効果を生むことは難しいです。
記事の目的は「SEO集客」「ファン化」「バズ化」「CV誘導」といったように、細かく分かれます。そして、こうしたそれぞれの目的に特化した記事は、1つのサイトやブログで使い分けていくことが大事です。店舗サイトであれ、ブロガーやアフィリエイターであれ、CV誘導記事やファン化記事などを複合的に盛り込むことで、コンテンツそのものが充実していきます。ただ漫然と記事を作るのではなく、記事の目的を常に意識し、その記事を読んでいる読者が何を求めているのかを考えて記事を作ることが、WEBメディアを成功させるための王道といえるでしょう。