先日著作権周りのことについて、お客様から次のようなご質問を頂きました。

テーマに関わる知的財産権はデザインプラスが持っているとありますが、今後このテーマを利用して作成したWebサイトの知的財産権もデザインプラスのものになってしまうのですか?

TCD側?お客様側?

結論から言うと、お客様のWebサイトになります(テーマ制作者のものにはならない)。これは考えるまでもない当たり前のことのように思いますが、よくよく規約を読むと複雑に考えることも可能なために起こる勘違いと思われます。

というわけで、当記事ではテーマとテーマを使って作ったサイトの著作権について考えてみたいと思います。

WordPressテーマの著作権は?

TCDテーマの利用規約には次のような記述があります。

2.当テーマに含まれる画像、HTML、CSS、Javascript等にかかる著作権を含む知的財産権は、加工の有無を問わず、すべて当社または当社に使用許諾を与える第三者に帰属します。
3.利用者の本規約への同意によって利用者に対し何らの権利も譲渡されるものではありません。
ご利用規約【通常ライセンス】第5条(権利の帰属)

これはつまり、「TCDテーマの著作権を含む知的財産権は株式会社デザインプラスにあり、テーマを購入されたお客様に譲渡されるわけではない」ということが書かれています。

※知的財産権とは、知的な創造活動により生み出されたものを、それを作った人の財産として保護するための制度です。知的財産には、発明、考案、意匠、著作物、商標などが含まれますが、ここで主に問題になるのは著作物であり、著作権についてですので、以降は著作権に絞って話を進めます。

有償・無償を問わず非常に多くのWordPressテーマが存在しますが、このような利用規約があるのはTCDだけではなく割と一般的な規定です。せっかく購入したテーマなのになんの権利も自分のものにならないなんておかしいのでは? これではサイトを作っても自由に利用できないのでは? と思われるかもしれませんが、これには理由があります。

利用規約の意味

WordPress本体やテーマは「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(著作権法2条1項10号の2)であり、「プログラムの著作物」と言えます。著作権を持つのは、その著作物を作った人。TCDテーマであれば、デザインプラスが著作権を有しています。

著作権は著作物をどう使われるかを決めることができる権利であり、逆に言えば著作物を自由に使うためには著作権が必要です。ところが、著作権を譲渡してしまうと、受け取った人(=新しい著作権者)だけが著作物を使えることになり、それ以外の人は利用できなくなってしまいます。これでは多くの人に利用してもらえません。

そこで、権利は著作権者が保持したまま、ユーザに対し「(一定のルールの下で)自由に利用する許可を与える」という形をとることで多くの人に使ってもらえるようにするのです。
これが「ライセンス」です。ライセンスは「利用許諾契約」とも呼ばれますが、一般には利用規約としてその詳細がまとめられていることも多いです。TCDでも「ご利用規約(通常ライセンス)」としています。

Webサイトの著作権

さて、Webサイトを構成するのはテーマだけではありません。より重要なのはテキストや画像、動画や音声などのコンテンツです。これらの著作権は、当然コンテンツを作成した人のものになります。

サイト制作者は、テーマのライセンスを取得すればテーマを使用したサイトを自由に利用することができるのですから、すべてのコンテンツの著作権も持っていればサイト全体について著作権が認められたのとほぼ同じ結果になるはずです。

第三者のサイトを作成したとき

テーマを購入した方がWeb制作業者であり、第三者(クライアント)のサイトを制作する場合もあるでしょう。TCDの場合は、制作業者に「特別ライセンス」を別途取得していただくことでこうした場合の利用許諾を出しています。これでクライアントにもサイトを自由に利用して頂けます。

また、コンテンツの著作権にも注意が必要です。クライアントから提供された文章、画像等はクライアントに、制作業者が作成した文章、画像等は制作業者に著作権が生まれます。

制作業者が著作権を持ったままのコンテンツがあると、クライアントは自分のサイトなのに自分で自由に更新できないかもしれず、これでは非常に困ります。そうならないために、著作権譲渡契約ですべてのコンテンツについて著作権を得ておくことが重要でしょう。また、譲渡契約には著作者人格権の不行使特約を含めておくと安心です。

まとめ

正しくライセンスを取得し、利用条件を守っている限り、テーマを使用したサイトを自由に利用することができます。また、コンテンツの著作権は誰が保有しているのか、特にクライアントワークの場合は最終的に著作権をクライアントに譲渡するのかまできちんと確認しましょう。