「お寺のホームページを作りたいが、制作会社に依頼すべきか、自分たちで運用すべきか迷っている」
そのようなお悩みを持つ住職や寺院関係者の方は、決して少なくありません。
私自身、10年以上僧侶としてお寺で修行・勤務してきて、ホームページをきっかけに参拝者や相談が増えたお寺も、逆にうまく活用できず悩んでいるお寺も数多く見てきました。
お寺のホームページは、必ずしも「高額な制作」や「専門的な知識」がなければ運用できないものではありません。一方で、状況によっては制作会社に任せた方が良いケースがあるのも事実です。
本記事では、制作会社に任せるのが良いお寺の特徴、自分たちでホームページを運用すべきお寺の条件などを解説します。
元僧侶としての実体験をもとに、わかりやすく解説するので、これからホームページ制作・運用を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
お寺のホームページ制作を企業に任せるのが良い寺院
ホームページ制作を企業に任せるのが良いお寺は、以下が当てはまるケースです。
制作会社に依頼するほど予算に余裕がある
お寺のホームページ制作を外注するほど、費用面に余裕がある場合はプロである制作会社に依頼するのが無難です。ホームページ制作会社は多くの場合、ページ内に書く文章や画像だけでなく、どのような構造で進めていくのか要望に合わせてくれます。
また、ホームページは「公開したら終わり」とはならず、定期的な更新が必要になるため、更新頻度が少ないと集客面で限界を感じる日が来るでしょう。
そこでお寺のホームページを制作会社に依頼しつつ、日々の更新もお願いするほどの予算に余裕があれば、制作会社に任せきるのが良いのです。お寺のホームページを制作会社に依頼する際は、リニューアルを含めて「公開後の定期的なサポート」について、どこまで実施してもらえるのか相談しましょう。
ホームページ運用にかける時間がない
お寺業界のみならず、ホームページ運用にかける時間が少ない場合は制作会社に相談・依頼するのをおすすめします。ホームページを活用してWeb集客の効果を実感させるには、定期的な更新が必要です。
ここで言う「更新」とは、アプリのアップデートのようなイメージではなく、ブログやコラムなどの「投稿」です。「何を投稿すれば良いかわからないからとりあえず」と思い、お店でよくある「お休みのお知らせ」だけでは足りません。
「ホームページに何を載せれば良いかわからない」という悩みに対し、Web集客のプロでもある制作会社は、投稿する内容を提案してもらえるケースがあります。お寺業界は日々の法務が忙しいのを元僧侶の私は熟知しておりますので、ホームページ運用の時間がない場合は制作会社に相談してみてください。
お寺のホームページ制作を任せなくても良い寺院
お寺のホームページは、たしかに費用と時間の観点からプロに依頼するのが早いものの、以下が該当するお寺では制作会社に依頼せずとも運用可能です。
私が10年以上僧侶としてお寺で働いている頃、ホームページから集客を成功させた体験をもとに解説します。
低コストでホームページを運用したい
お寺のホームページ制作にかける予算に余裕がなく「低コストでホームページを制作したい」と考えている方は、一旦制作会社に依頼せず進めるのがおすすめです。
「名刺代わりでホームページを作っておきたい」くらいの感覚であれば、正直プロに依頼せずともWeb制作未経験でもある程度のホームページは作れます。具体的には「ペライチ」や「Jimdo」「Studio」などのプラットフォームは、無料でホームページを作れるだけでなく、テンプレートが用意されています。
つまり、各プラットフォームで用意されているテンプレートに、自分のお寺に関する情報を書き込んでいけば十分なのです。実際私が観光地域のお寺で働いている頃も、無料で制作できるプラットフォームでホームページを制作しました。
結果として、ホームページ公開前は電話問い合わせしかなかったお寺でも、ホームページからの問い合わせが増えました。
Webに関する知識や経験があるスタッフがいる
Webに関する知識や経験があるスタッフが自分を含めている場合、一旦は制作会社に依頼せず自分のお寺内で完結させると予算削減につながります。ここで言う「知識や経験」とは、実際に自分でホームページを作って運用してきた方が理想です。
しかし、知識や経験が豊富な方は多くの場合、ホームページ制作会社に勤めるでしょう。Webに関する知識や経験は「お寺のホームページをよく見るか」くらいのイメージで問題ありません。
正直私も僧侶として働いている頃も、自分でホームページを作った経験がないまま、手探りでホームページを作り上げました。大切なのは「他のお寺に何が書かれているか」を調べ、真似事にならないよう自分のお寺のホームページ制作に落とし込めるかです。
具体的にお寺のホームページで何を書くべきなのかは、本記事内で触れているので、ぜひこのまま読み進めてください。
お寺のホームページを制作会社に依頼した際の費用相場
お寺のホームページを制作会社に依頼した際の費用相場は、安くて10万〜20万円前後です。しかし、ここで示した費用相場はあくまで「Webデザインにかかわる部分のみ」であることが大半です。
ホームページ制作は、検索エンジンからの流入を増やすための文章や、他のお寺と差別化を図るための写真や動画が必要になります。つまり、ホームページに必要な文章や写真、動画を揃えるためにオプションとして提案され、オプションが積み重なった結果、数百万円かかるケースがあるのです。
実際私が勤めていたお寺でも、無料のプラットフォームで作ったホームページをリニューアルするために制作会社に依頼した結果、数百万円を超えたと聞きました。
お寺のホームページを制作会社に依頼する際は、すべてを任せるのではなく「このお寺みたいなホームページを作りたい」と提示すると見積もりを出してもらえます。1社に頼りきるのではなく、比較検討できるように相見積もりするのがおすすめです。
※数百万超えるケースはすべての制作会社に当てはまる話ではありません
お寺のスタッフでホームページを運用する際のポイント
お寺のホームページを制作会社に依頼するのは比較的高額なため、ここからは低コストで運用したいと考える方に向け、自分で運用する際のポイントを整理します。私がお寺のホームページを作り、運用してきた体験をもとに運用のポイントを整理してみました。
ページの構成に沿って制作する
お寺のホームページを制作する際に意識しておきたいのが「ページの構成を先に決めてから制作を進める」ことです。デザインや写真から考え始めてしまうと「結局何を伝えたいホームページなのか」がわからなくなり、更新もしづらくなってしまいます。
お寺のホームページは、一般的な企業サイトと異なり、ホームページにアクセスする方(サイト訪問者)の多くが「初めてそのお寺を知る方」です。初めて自分のお寺を知った方でもわかるよう、以下のような基本ページを用意しておくのがおすすめです。
- お寺について(由緒・宗派・ご本尊・住職紹介)
- 法事・葬儀・供養の案内
- 行事・イベントの案内
- 参拝・拝観の案内(時間・料金・アクセス)
- お知らせ・ブログ
- お問い合わせ
これらのページを「どの順番で見てもらうか」「どのページを入口にしたいか」を考えながら構成すると、自然と導線が整います。
スマホサイズのデザインも構築する
お寺のホームページを制作・運用するうえで、スマホサイズのデザインも前提に構築することは必須です。実際、参拝を検討している方の多くは、パソコンではなくスマートフォンで情報を調べています。
「参拝時間は何時まで?」「駐車場はある?」「電車で行く場合の最寄駅は?」などの情報は、移動中や外出先でスマホからの確認が大半です。つまり、スマホで見た時に文字が小さすぎたり、横スクロールが必要だったりすると、その時点でページを離脱されてしまう可能性があるのです。
自分でホームページを制作する場合でも、無料プラットフォームの多くはスマホ対応済みのテンプレートが用意されています。実際の作業画面では、スマホで表示された時の画面も見ながら調整していきましょう。
具体的には、電話番号がタップしやすいか、アクセス情報が見やすいか、Googleマップと連携されているかなどが重視されます。
お寺のイメージがわかる写真や動画を用意する
お寺のホームページでは、文章以上に写真や動画が与える印象が大きいのが実情です。特に初めて訪れる方にとっては「このお寺はどんな雰囲気なのか」がわからないこと自体が、不安や行きにくさにつながります。
お寺のイメージが伝わるよう、以下のような写真を最低限用意しておきましょう。
- 本堂や境内の全体がわかる写真
- 参拝した際の目線に近い写真
- 行事やイベントの様子
- 季節感(桜・紅葉・雪景色など)が伝わる写真
また、プロのカメラマンに依頼するのが理想ですが、必ずしも高価な機材や撮影は必要ありません。実際、私が観光寺院で働いていた頃も、スマートフォンで撮影した写真をホームページやSNSに掲載していました。
大切なのは「参拝した時のイメージが湧くかどうか」です。写真や動画があるだけで「ここなら行ってみたい」「思っていたより入りやすそう」と感じてもらいやすくなります。
定期的に更新をする
お寺のホームページは、作って終わりではなく、定期的な更新が重要です。更新が止まっているホームページは「今も活動しているお寺なのか?」と、不安を与えてしまいます。
ここで言う更新とは、ホームページ全体を頻繁に作り替えることではありません。
- 行事やイベントのお知らせ
- 季節の話題
- 日々の出来事や簡単なお知らせ
上記のような短い投稿でも、まずは積み重ねていくことが大切です。実際、私がお寺でホームページを運用していた頃も、定期的に更新するようになってから「ホームページを見て来ました」と言われる機会が増えました。
無理に毎日更新する必要はないため、月に1〜2回でも継続することを目標にすると、現実的に運用しやすくなります。
お寺のホームページにはWordPressテーマの「ZEN」がおすすめ
お寺のホームページは、一度作って終わりではなく、行事の案内やお知らせなどを少しずつでも更新し続けることで、参拝者や地域の方に役立つものになります。
そうした前提を踏まえたうえで、お寺の雰囲気や世界観を大切にしながら、無理なく運用していきたい方におすすめしたいのが、WordPress(ワードプレス)テーマの 「ZEN」 です。
「ZEN」は、お寺や和の空間をイメージして設計されたホームページ用のテーマで、派手さはないものの、落ち着きや品のあるデザインが特徴です。本堂や境内の写真、行事の様子などを掲載した際も、お寺らしい空気感を損なわずに表現できます。
「ZEN」は操作が比較的シンプルで、日々のお知らせや行事情報の更新も行いやすいため、専門的な知識がなくてもホームページ運用を続けやすいテーマと言えるでしょう。
※お寺向けに設計された「ZEN」のデザインや機能は、公式ページで確認できます。
※導入を決める必要はありません。参考として見るだけでも問題ありません。
「WordPressって何?」と感じられた方は、以下の記事で初心者向けに詳しく解説しています。ぜひご一読ください。
WordPressは、世界中で利用されている人気のコンテンツ管理システム(CMS)です。ブログやWebサイトの作成、管理を簡単に行うことができます。 「WordPressとはよく耳にするけど、いったい何のことかわからない。」「何のためのツールなの?」 そういう方のために「WordPressと...
「ZEN」でホームページ運用をされているお寺一覧
「実際にどんなお寺で使われているのか」
「本当にお寺の雰囲気に合っているのか」は、実例を見てみないと判断しにくい部分でもあります。
そこでここからは、実際にWordPressテーマ「ZEN」を使ってホームページ運用をされているお寺をいくつかご紹介します。デザインや構成、写真の使い方などを見ながら、お寺のホームページをイメージする参考にしてみてください。
浄相院
https://josoin.jp/
落ち着いた配色と余白を活かした構成で、境内や本堂の雰囲気が丁寧に伝わるホームページです。
龍ケ崎観音
https://ryugasaki-kannon.jp/
行事や参拝案内が整理されており、初めて訪れる方にも情報が伝わりやすい構成になっています。
芳全寺
https://houzenji.or.jp/
写真を大きく使いながらも派手すぎず、お寺らしい品のある印象を保ったサイトです。
大蓮寺
https://dairenji.net/
お寺の歴史や案内が見やすく配置されており、どこを見れば良いのか判断しやすいサイト設計です。
新座観音
https://kan-non.com/
写真と文章のバランスが良く、日々の更新を前提とした運用がしやすい構成です。
妙蔵寺
https://izumo-myouzouji.com/
境内の写真や行事の様子を通して、お寺の空気感や季節感が伝わるホームページです。
これらの事例を見るとわかるように「ZEN」を使ったホームページは、デザインを作り込みすぎなくても、お寺らしい雰囲気を表現できている点が共通しています。
「どんな構成にすればいいかわからない」
「デザインに自信がない」という場合でも、実際の事例を参考にしながら、自分のお寺に合った形に落とし込めるのが「ZEN」の強みと言えるでしょう。
まとめ
本記事では、お寺のホームページを制作会社に依頼すべきか、逆に依頼せず制作・運用すべきか、自分でやる場合のポイントなどを解説しました。本記事の内容をまとめると、以下のとおりです。
お寺のホームページは、作り方に「これが正解」という答えがあるわけではありません。大切なのは、お寺の状況や体制に合った方法を選ぶことです。
実際、私がかかわってきたお寺のなかにも「最初は手探りでも、ホームページをきっかけに参拝者との接点が増えた」というケースは少なくありませんでした。
今回ご紹介したポイントや事例を参考にしながら、無理のない範囲で長く続けられるホームページ運用を目指してみてください。
お寺の魅力や想いを、必要としている方に届ける手段として、ホームページがその一助になれば幸いです。







コメント