気に入ったWebページやを見つけたとき、そのコンテンツをどのように保存すればいいでしょう。

一番手軽な方法は、WebブラウザにページのURLをブックマークすることかもしれません。けれども、ブックマークだけだと、あとでそのWebページを開いたとき、コンテンツが改変されていたり、閉鎖されていたりすることが少なくありません。また、ブックマークが増えすぎると、その整理は結構大変です。

そんなとき、Webクリップアプリやブラウザの拡張機能を使えば、Webページを丸ごとローカルのPCやクラウドに保存することができます。これだと、わざわざオンラインでアクセスしなくても済むので便利ですね。

このようなサービスは「Webクリッパー」と呼ばれ、ブックマークと並んで人気のあるWeb情報収集ツールとなっています。代表的なWebクリッパーを提供するアプリとしては、Evernote、Onenote、Pocket、Bear、Notionなどがあります。

以下では、これら5つのWebクリッパーのメリット、デメリットを比較評価したいと思います。

Webクリップアプリ比較表

まず、5つのツールを表形式で比較しましょう(アルファベット順)。

Bear Evernote Notion OneNote Pocket
デバイス Mac
iPad
iPhone
Android
Mac
iPad
iPhone
Android
Windows
Mac
iPad
iPhone
Android
Windows
Mac
iPad
iPhone
Android
Windows
Mac
iPad
iPhone
Android
Windows
ブラウザ
拡張機能
Chrome
Safari
Chrome
Safari
Chrome
Safari
Chrome
Safari
Chrome
Safari
保存先指定 タグ ノートブック
タグ
タグ
ページ
データベース
ノートブック
ノート
なし
保存方法 URLのみ
ページタイトルとURL
ページ全体
記事
簡易版の記事
ページ全体
ブックマーク
スクリーンショット
選択不可 ページ全体
領域
記事
ブックマーク
選択不可
YouTubeページの保存 × × ×

比較内容を解説する前に、結論から先に述べます。「Notion」が一番使いやすいです。次点で「Evernote」です。詳しく解説してみましょう。

まず、対応デバイスやブラウザの拡張機能をサポートに関しては、各ツール間に差はほぼ見られません。

保存先のツールについてみると、タグを指定して保存するするものが多くなっています。この他の指定先としては、EvernoteとOneNoteでは、ノートブックが指定可となっている他、Notionでは、ページとデータベース名を指定することができます。

保存方法を比較してみると、Evernoteが記事、簡易版の記事、ページ全体、ブックマーク、スクリーンショットと最も多様な形式での保存が可能になっています。ただし、「記事」での保存はオリジナルのページに最も近い形で保存されるとはいえ、テキストでの保存ではないため、編集が難しいというデメリットがあります。OneNoteも、ページ全体、領域、記事、ブックマークと多様な形態での保存ができますか、オリジナルサイトに近い「ページ全体」で保存した場合には、画像ファイルになるため、編集がほとんどできないという難点があります。

NotionとPocketは、保存形式を選択することはできませんが、オリジナルサイトから必要にして十分なコンテンツを保存してくれるので、特に不便は感じません。

YouTubeページの保存は、近年の需要の高まりから、保存したツール画面での再生が期待されますが、これができるのは、Notionだけでした。EvernoteはYouTubeの画面を画像で表示させることはできるものの、リンクをクリックしないと動画を再生させることができませんでした。そのほかのツールでは、YouTUubeの画面を表示させることもできず、不満が残ります。

このようにみてくると、特にYouTube動画ページの保存性に優れたNotionと保存形式の多様性に優れたEvernoteが、素晴らしい機能を備えたWebクリップツールだと評価できるように思われます。以下では、この2つのツールに絞って、Webクリップ機能を詳しく比較検討していきたいと思います。

EvernoteのWebクリッパー

Chrome、SafariなどのブラウザがEvernoteの拡張機能をサポートしています。ここでは、ChromeブラウザのWebクリッパーを紹介しましょう。

拡張機能を利用するには、「Evernote Chrome」「Evernote Safari」などとお使いのブラウザ名を入れて検索してインストールしてください。

クリップの使用方法を解説するために、この「世界遺産を学ぶ:ウクライナのキーウ」をクリップしてみます。Webページを開いたら、ブラウザの右上メニュー欄にあるマークをクリックします。

Evernote extension

すると、画面右上にクリップ方法の指定画面が表示されます。そこで、クリップ形式とクリップ先を指定します。

以下のクリップ形式で保存できます。

  • 記事
  • 簡易版の記事
  • ページ全体
  • ブックマーク
  • スクリーンショット

Evernoteでは、保存するページの単位は「ノート」です。複数のノートをグループ化するには、「ノートブック」を作成する必要があります。これはPCでいうフォルダに相当しますが、フォルダとは違ってノートブックの下に別のノートを階層的に作ることはできません。Evernoteでノートを階層的に整理するには、「タグ」を作成するのが便利です。タグは一つのノートあたりいくつでも設定することができます。また、タグの下に別のタグを置いて階層的に整理することができます。

そこで、Webクリッパーでは、クリップ形式として、「ノートブック」名と「タグ」名を指定することができます。そうすることによって、指定したノートブックにクリップが保存されると同時に、クリップしたノートにタグが付与されます。

「記事」をクリックし、「クリップを保存」バナーをクリックすると、Webページの記事と画像をクリップすることができます。テキストだけではなく、ハイパーリンクもそのままコピーされますから、コピーされたページからリンク先へジャンプすることができます。また、選択範囲をブロック単位で増減することもできます。通常は、これで必要十分なクリッピングを行うことができます。

「簡易版の記事」を選ぶと、ページの飾りを省いた、本文テキストと画像だけのシンプルなクリップが得られます(下図)・その代わり、アイキャッチ画像などの画像や図などがクリップされずに、飾りのない簡略化されたクリップになるので、物足りなく感じることもあります。元のページをできるだけ再現するには、「記事」を選択した方が良い場合が多いと思います。

「ページ全体」を選択すると、テキストと画像だけでなく、バナーやボタンなどページ上のすべての情報がそのまま保存されます。ただし、サイドバーなどの不必要な部分までクリップされてしまうこと、テキスト部分も画像形式で保存するされてしまうために、クリップしたページを編集したり、ハイパーリンクを有効化することができないなど、オリジナルサイトに比べて使いにくいものになります。これはクリップの使い勝手から見ると、あまりおすすめの設定とはいえません。

「ブックマーク」を選択すると、元のページへのリンク (URL)とタイトル、ページの冒頭部分のテキストが保存されます。ブラウザのクリップボードのような使い方をする場合に適しています。

「スクリーンショット」を選択すると、ページの中でカーソルで選択した長方形の範囲だけがEvernoteに保存されます。ページのテキストではなく、特定部分の画像を切り抜いて保存しておきたいという場合に使います。「スクリーンショット」したファイルは、画像形式になりますから、テキストとしての編集はできませんが、文字や矢印を入れるなどその場で画像編集することができます。

このように、元のページをクリップする際に、クリップ形式を指定したり、ノートブック、タグの名前を指定できるので、Webクリッパーとしては、非常に便利なツールとなっています。

NotionのWebクリッパー

Notionの基本的な使い方

EvernoteもNotionも、人気の万能メモツールですが、歴史としてはEvernoteの方が長く、Notionが誕生したのは2018年でまだ4年にしかなりません。それだけに、後発企業の利を生かして、新しい機能を多く備えています。その中でも、データベースを中心とするアーキテクチャを構成しているのは、特に注目すべき特徴と言えます。

Notionでは、さまざまなデータを「ブロック」「ページ」「ワークスペース」の3段階で管理します。最も小さな単位が「ブロック」、ブロックの集まりが「ページ」(PCのファイルに相当)、ページの集まりが「ワークスペース」(PCのフォルダに相当)です。ブロックはデータの基本単位で、一つのページ内で自由に移動したり入れ替えたりすることができます。

「Notion」の詳しい使い方はこちらでも解説しています。

データベースとWebクリッパー

NotionでWebクリッパーを使うには、データベースの知識が必要です。その基本的な仕組みと使い方を説明します。

一般に、大量のデータを複数の属性に仕分けて、コンピュータに登録することによって、あとから自由に集計したり分類したり抽出したりするシステムを「データベース」といいます。

Notionでは、複数の属性を設定して、データの名前、日付など別に対象となる情報のデータベースを表形式で作成することができます。これは、Webクリッパーと呼ばれる機能で、Chromeなどのブラウザに拡張機能として組み込むことができます。例として、ニュースサイトの記事を自動的にクリッピングさせてみましょう。

NHKニュースのWebクリップページ(データベース)

例として、読売新聞オンラインの記事をクリップしてみましょう。まず、ChromeブラウザまたはFireFoxブラウザにNotionの拡張機能をインストールします。

次に、読売新聞オンラインのニュースサイトを開き、クリップしたい記事を表示させて、ツールバーのNotionボタンをクリックします。すると、この記事がNotionアプリにクリップされ、データベースが作られます。このとき、保存先のワークスペースとページを指定します。ワークスペース名は、デフォルトの「書類」を指定しました。また、保存先のページ名は、あらかじめNotionで作っておいた「読売新聞」を指定します(検索窓から読売新聞のページを検索します)。

次に、「ページを保存」をクリックするか または Enter キーを押すと、ニュース記事がNotionの「読売新聞」のページにクリップされます。

クリップしたページを見ると、タイトルのテキスト、作成日時、元の記事のURL、そして記事本文がデータベースとして挿入されていることがわかります。サイドバーの情報や飾りを除いた、タイトル、本文、日付、写真など重要部分だけがクリップされています。データベースとしては、必要十分な情報と言えるでしょう。

クリップした読売新聞記事のタイトル欄をクリックしたところ

主要なニュースサイトの記事に関する体系的なデータベースを作るために、Notionにあらかじめ、階層的に整理したニュースサイトのページを作っておくといいでしょう。筆者は、国内外の主なニュースサイトとして、NHK、読売新聞、朝日新聞、Yahoo!ニュース(以上国内)、New York Times、BBC News、Le Monde、Le Parisien(以上海外)の8つを選定し、これらを「ニュースサイト」というページの下にサブページとしておくデータベースを作成しています。

このうち、読売新聞のページを見ると、次のようになっています。

このデータベースの属性は、「タイトル」「タグ」「作成日時」「コメント欄」の4つです。タイトルをクリックすれば、クリップした記事の詳しい内容が表示されます。Evernoteよりも一覧性と検索性に優れています。

タグ名は、クリップ時に指定することはできませんが、クリップした記事を表示させると、「タグ」指定欄が表示されますので、記事本文を見ながら、適切なタグを3つくらいつけると、後で検索するときに便利です。

おわりに

このように、EvernoteとNotionのWebクリッパー機能は、膨大なWebページ上の情報の中から、気に入った情報や気になる情報をノートアプリに手軽に取り込むことができる、とても便利なツールです。この二つのうちどちらがいいとは決めかねるところがあります。Evernoteは、ウェブサイトの内容に合わせて、多様なクリップ方法を選択できるのがありがたいところです。NotionのWebクリッパーは、Notionのデータベースとして保存できるので、検索、フィルター、表形式の一覧性という点が優れており、データベースとしての活用を図りたい方には最適のツールと言えます。場合に応じてうまく使い分けるのが賢いやり方と言えるでしょう。