AIというと「何かを生成する」というイメージが先行しがちです。

ですが実際に日々AIを使っていて感じるのは、AIが最も力を発揮するのは「ゼロから作る」ことより「変換」することではないか、ということです。翻訳はその代表例ですが、実は変換という切り口で見ると、AIの得意分野がもっとくっきり見えてきます。

当記事では、どんな場面でその「変換」が活きているのか、身近な例から考えていきます。

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身の回りにあふれる変換例

一口に変換と言っても、その対象はさまざまです。言葉、データ、コード、そして操作まで、AIが日々こなしている「変換」を見ていきます。

言葉の変換

AIが得意なのは、英語⇔日本語のような言語翻訳だけではありません。

専門用語を平易な言葉に言い換えたり、友人とのカジュアルな会話をビジネスメール調に変換したりすることも、広い意味では同じ「言葉の変換」です。相手や場面に合わせて言葉の形を変える作業は、AIにとって非常に相性がいい領域です。

かしこまった文面をつくるとき、正しい言葉遣いに迷う必要はもうないですね。

データの変換

雑然と並んだ大量のデータを、整理された見やすい表やテーブルに変換するのもAIの得意技です。人がやると時間のかかる整形作業を、瞬時にこなしてくれます。

筆者もよく実務で行う操作です。WordPressで記事を書くときに、HTML形式のテーブルに変換してもらったり、複数の情報を比較表形式で表示してもらったりです。

人間が地道にまとめるより、圧倒的に早く変換できます。

要望からコードへの変換

「こういうものが作りたい」という要望や単なる文字列の羅列を、HTMLやCSS、PHPといった実際に動くコードに変換することもできます。いわゆる「バイブコーディング(プロンプトだけでコードを組み立ててもらう開発スタイル)」とよばれるものです。

プログラムの文法を一つひとつ覚えていなくても、やりたいことさえ言語化できれば形にできる時代になりました。

プログラムの一部だけを変換

複数の機能が絡み合ったプログラムでも、該当箇所だけを抽出して変換することが可能です。

たとえば、一部の機能だけを削除・改修したい場面。全体を書き直すのは工数がかさむ一方、AIに該当箇所を洗い出してもらえば、影響範囲を絞って手を加えやすくなります(AIが間違うこともあるので、最終確認は必要です)。

こうした変換能力を活かせば、非エンジニアでもソースコードを参考にしながら改変できる場面が増えてくるはずです。

操作の変換

ブラウザやアプリを横断して操作するAIエージェントは、他の例と少し性質が異なります。
原文と訳文のように、入力と出力が一対一で決まるわけではないからです。

  • 画面の状態を見る
  • 次の操作を判断する
  • 操作を実行する

という繰り返しの中で進んでいきます。

それでも根っこにあるのは、「人間の意図」を都度「操作手順」に変換し続けている、という仕組みです。

一度きりの変換ではなく、変換を繰り返しながら目的に近づいていく、少し発展した形の変換と捉えることもできそうです。

なぜAIは変換が得意なのか

理由は大きく3つあると考えています。

1つ目は、変換には常に「入力」という手がかりがあること。

ゼロから何かを発想する作業と違い、変換は「何を伝えるか」がすでに入力側に存在していて、AIは「どう形を変えるか」だけに集中すればいい。だから迷いが少なく、誤りにくいわけです。

機械的な作業なので、人間が行うよりはるかにミスは減ります。

2つ目は、AIが大量の「対応関係」を学習していること。

原文と訳文、要望とコード、雑データと整った表など、世の中には「AとBが対応するペア」のデータが無数にあります。AIはそのパターンを学習しているため、変換という作業そのものに真正面から強いのです。

3つ目は、そもそもの技術の生い立ちが「変換」だったこと。

ChatGPTをはじめとする現在のAIの中核技術は「Transformer」と呼ばれていますが、これは英語の「transform(変換する)」に由来する言葉です。

しかもこの技術、もともとは機械翻訳のように、ある系列データを別の系列データへと置き換える「変換タスク」のために設計されたものでした。

AIが変換を得意とするのは偶然ではなく、その名前と生い立ちの時点ですでに変換のために生まれた技術だった、ということになります。


ちなみに、詩やイラストのように一見ゼロから生み出しているように見える「生成」も、実は学習した膨大なパターンの組み合わせや再構成であり、突き詰めれば変換の延長と言えなくもありません(これは創作を行う人間にも同じことがいえますね)。

そう考えると、「生成AI」という呼び方は、実態の半分しか捉えていないのかもしれません。AIがしているのは、無から有を生み出すことではなく、入力を手がかりにした変換だからです。

これから人間は何をすべきか

変換がAIの得意分野だとすると、人間が力を注ぐべきはむしろその前後にあります。

まず、「何を」「何のために」変換するのかという目的や意図の設定。ここは人間にしかできない判断です。

次に、AIが出してきた変換結果が本当に意図とズレていないかを見極める役割。速さは手に入っても、正しさの最終判断はまだ人間の仕事です。

そして何より、これまで変換作業そのものに費やしていた時間を、企画や構成、戦略といった上流の思考に充てられる点です。

実生活で何に不満を感じるか。不便なことはないか。その辺りを皮切りに、意図や目的、思想をより突き詰めていく。そこが明確になれば、実務作業自体はAIをフル活用してブーストできる時代です。

おわりに

翻訳、表への整形、コードへの変換、そして操作の変換。AIは驚くほど幅広い「変換」を、人間よりも速く正確にこなせるようになりました。

だとすれば、この先ますます問われるのは、変換される前の部分。つまり、自分が何を望んでいるのかを言葉にする力、言語化能力そのものではないでしょうか。

どれだけ優れた変換技術があっても、渡す入力が曖昧なままでは、AIは「統計的にもっとも確率の高いもの=誰にでも当てはまる一般論のような答え」を返してきます。

逆に、意図や違和感、実現したい状態を解像度高く言語化できれば、その分だけ変換先は自分だけの答えに近づいていきます。

「生成AI」ではなく「変換AI」。そう捉え直すだけで、AIとの付き合い方が変わるように思います。

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