東京五輪を控えている日本。昨今のインバウンド需要の高まりを受けて、訪日外国人観光客に向けたメディアがどんどん誕生しています。WEBメディアやアプリ、本、フリーペーパーなど、そのタイプも多種多様です。どの国に向けて発信しているかによって、その媒体がフォローしている言語の数も変わってきます。
当記事では訪日外国人観光客に向けて「生きた情報」を届けているインバウンドウェブメディアをピックアップして紹介していきます。
インバウンド向けメディア作りの参考になるウェブサイト
運営者視点として、それぞれのメディアが伝えようとしている内容、ターゲット層に注目してみてみると、より参考になると思います。
日本政府観光局(JNTO)の訪日観光情報「Travel Japan」
日本政府観光局(JNTO)は、海外から日本へ観光客を呼び込むための活動をしている国の機関です。日本全国を網羅した史跡・名勝・文化の情報は質・量ともに秀逸でインバウンドメディアのお手本としても見ごたえがあるウェブサイトです。YouTubeチャンネルも必見。規模間のあるコンテンツ作りからはクリエイター視点でも学びが多いのではないでしょうか。
日本語を学ぶこともできる「MATCHA」
日本の価値ある文化を、時代とともに創っていく。ABOUT US – MATCHA
対応言語は以下の7+1言語、日本語とやさしい日本語という取り扱いで2種類に分かれているのが「MATCHA」の特徴です。やさしい日本語のコンテンツは初級の日本語でのみ構成されているので、日本語を勉強し始めたばっかりの方であっても読み進めることができます。日本語はよく表現が難しいと言われることがあるようですが、ここまで平易な単語を使っていると読み進め易いように思います。学習用のコンテンツとしても秀逸なのではないでしょうか。
日本のタイムリーな情報を発信している「LIVE JAPAN Perfect Guide」
beyond2020プログラムの認証事業でもある「LIVE JAPAN Perfect Guide」今は日本、東京、北海道というコンテンツ構成ですが、これからどんどん拡充されるのが楽しみなインバウンドメディアです。写真を豊富に使った店舗情報や地域情報はその土地に訪れた訪日ユーザーをしっかりとおもてなしできるボリュームを揃えています。調理方法や素材まで明記された飲食店情報は日本の食文化に不慣れなユーザーにとって有益なコンテンツではないでしょうか。
おまかせの意味を踏襲したメディア「OMAKASE」
Our travel site “OMAKASE” was made by following this culture. This site offers the Japanese charm like history, traditional culture, food, manga, animation, etc. that the professional of travel in Japan chose for the travelers visiting Japan by the shape as a tour and an experience. Enjoy “Japan” that professional of Japanese travel chose to your heart’s content !ABOUT US – OMAKASE
「おまかせ」の文化から生まれたインバウンドメディア。歴史、伝統文化、食べ物、マンガ、アニメなどの日本の魅力を日本をガイドするプロの視点でコンテンツ化しています。日本の旅行はその道のプロにお任せして、とことん日本を楽しんでほしいというメッセージがこめられているようです。
ロンドン発のシティガイドTime Outの東京版「Time Out Tokyo」
タイムアウト独自の目線で、日本の優れた ヒト・モノ・コト・コンテンツ・サービスを取り上げ、グローバルネットワークを通じて、国内外に情報発信しています。TimeOutTokyoについて
対応言語は日本語と英語の2つで構成されています。いわゆる旅の計画時から当日まで参考にするシーンが多いコンテンツ構成です。今日しかできないこと、週末しかできないこと、今週しかできないこと、今月しかできないこと、といった期間限定のイベントアクティビティを軸に情報を充実させています。時間軸でコンテンツがまとまっていることで旅の途中で時間を持て余してもすぐに予定を作ることができそうです。
旅をするように記事を読む「Japan Travel Planner」
ANA(全日本空輸)が運営する日本の紹介サイト。日本国内のスポットの他、現代日本のカルチャーを動画や最新テクノロジーを駆使され、日本の魅力を余すところなく伝えています。シームレスに飛行機の予約にも繋げるところに運営者の特色がでていますね。こちらは他のインバウンドメディアと比較すると日本人の視点が強い(元記事を日本人が監修している?)傾向があるように感じました。旅をするようにコンテンツを回遊することができるので次から次に記事を読み進めてしまいます。
訪日ユーザー目線の日本ガイド「Japan-guide.com」
This web site exists since July 2, 1996. Our goal is to deliver comprehensive, up-to-date information on traveling in Japan, first-hand from Japan.
About us – Japan-guide.com
Japan-guide.comはインバウンド向けのポータルサイトの老舗で、最大手と言っても良いメディアの一つです。数ヶ月以内に訪日旅行を予定しているユーザーが情報収集を行ったり、「日本に行ってみたい」と考えている潜在的なユーザーに向けて情報を発信しています。外国の方が立ち上げたメディアですので、視点が訪日ユーザーにピタリと合っていると思います。日本人が観光しても見過ごしてしまうような場所も独特の視点だから拾えている。現地に足を運んだ海外の方からの情報は、これから訪日しようと考えているユーザーにとって実用的なものが多く、日本人とは違った視点での情報提供を強みとしています。
日本を訪れる人に役立つ情報を取りそろえた「JapanVisitor」
日本、イギリス、アメリカを拠点とした会社が運営をしている訪日メディア。ビザ取得から実際の観光までの情報を取りそろえているので、イチから訪日を計画するにも参考になります。取り扱っている情報は文化(アートや歴史rtc…)、生活(銀行、病院、冠婚葬祭etc…)に関するものまで幅広く日本の情報を広くまとめているサイトです。
台湾、中国の訪日ユーザーに特化した「japanholic」
エキサイトが運営する「japanholic」。台湾のエキサイトと合同で運営されているようです。日本の情報ニーズがある台湾でタイムリーな女子向けの情報を中心に展開されています。Facebook、Instagramの各種SNSコンテンツも賑わっている様子がうかがえます。台湾と日本の文化の懸け橋とも言えるウェブマガジンではないでしょうか。
ガイドブック「Lonely Planet」の訪日向けウェブサイト
Ever since company founders Tony and Maureen Wheeler stapled together their first guidebook after an epic trip across Asia, Lonely Planet has put travellers at the heart of everything we do, informing and inspiring them with trusted content for print and digital from experts who visit every destination.
About – Lonely Planet
11言語(英語、インド英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語、韓国語、ロシア語、ボルトガル語、スロバキア語、オランダ語)に対応する大型メディア。Lonely Planetの書籍情報と連動したウェブメディアです。大手の旅情報誌ともなるとすでに大量のコンテンツを保有しています。情報がたくさんつまっていることはモチロン素晴らしいのですが、コミュニティというコンテンツが他にはないコンテンツになっています。旅行中に使えるYahoo!知恵袋のような感じとでもいえば分かりやすいでしょうか。不安な海外旅行時にこのようなコンテンツがあると心強いと感じます。
ジャパンカルチャーをテーマにしたウェブマガジン「wasabi」
We send spicily stimulating information like WASABI.
Our Mission – wasabi
ちょっと滑稽な文化やディープな文化まで取りそろえたウェブマガジン。ミッションにわさびのような刺激的な情報を発信します
とあるように。ピリッとした驚きと発見が散りばめられています。伝統文化が現代風に進化している様は伝統が崩れていると捉えられることがありますが、現代に適合して進化しようとしていると考えるとまたひとつ違った見え方がしてきます。
アジアの訪日ユーザーをターゲットにした「All About Japan」
対応言語は5つ(英語、简体中文、繁體中文、タイ語、韓国語)でややアジアのユーザー向けの言語設定でしょうか。運営者は生活総合情報サイトAllAboutで海外向けに日本の情報を発信しています。日本をより好きになってほしいというポリシーの元、国内外在住の外国人ライターが外国人目線で日本情報を発信されていて、日本語のコンテンツが無いということでよりその特色を強めています。地域情報を軸に季節のトレンドや見どころについての特集を豊富に準備していて、単純に読み物としても面白いコンテンツが多いように感じました。日本の観光に行く前の予習をするコンテンツとして重宝しそうなメディアです。
アジアの訪日ユーザーをターゲットにした「TSUNAGU JAPAN」
社内で多数のネイティブスタッフを抱え、観光、グルメ、ショッピング、日本文化など訪日旅行客が欲しい情報を「外国人視点」で発信する訪日観光メディアです。Facebookページ、Youtubeなども駆使しながら、訪日旅行に関する情報をテキスト&画像形式および動画形式で世界に発信しています。tsunagu Japan – d2cx
訪日ユーザーに視点を合わせたコンテンツ作りをされている「TSUNAGU JAPAN」さん。エリアとジャンルから検索をすることができるレストラン情報も充実しています。適宜、動画を織り交ぜて紹介される日本の文化は、言葉が分からなくても直感的に触れることができます。
絶景スポットを美麗写真で紹介する「ZEKKEI Japan」
ZEKKEI Japanは日本の絶景スポットを写真を中心に紹介する訪日観光客向けのメディアです。言語設定は7つ(英語、日本語、简体中文、繁體中文、ミャンマー、タイ、インドネシア)です。訪日外国人観光客の数は年々増加していますが、まだまだ交通の便が良い都市部への集中となっています。ZEKKEI Japanではプロカメラマンの良質な写真を中心に地方の美しい絶景を配信しており、訪日を検討しておられる方が「ここに行ってみたい!」と写真から興味を沸かせて旅の計画をする姿が想像されます。最近はInstagramを中心に旅行先を検討するといった話もよく耳にします。視覚的に情報を伝達する画像はテキストよりも伝えることが情報量が多くなります。自分がそこに行ったらどう思うだろう?といった想像力を掻き立てる効果もあるので、興味関心を引くのに美しい写真を採用するというのは良いですね。
ライブ感が伝わるインバウンドウェブマガジン「Japankuru」
全画面の動画から始まるウェブマガジン「Japankuru」運営は訪日外国人向けマーケティングソリューションを事業とするGLOBALDAILY。在籍する各国のライターが土地や店に赴き、コンテンツを書き起こしてメディアにまとめています。インバウンド向けの情報発信を検討している国内事業者から依頼を受けてのコンテンツ制作も対応しているようで、インバウンド需要に乗ったビジネスモデルとしても注目です。
侍に特化した体験型メディア「Samurai Museum」
侍はたんなる兵士ではなく、「名こそ惜しけれ」という名誉を重んじるスピリットに支えられた存在であり、サムライ・スピリットの美学はサムライが身につけた日本刀や甲冑などにも現れています。現代の日本人にも脈打つサムライ・スピリットとは何か、当ミュージアムで感じていただければ幸いです。サムライの時代(鎌倉~江戸時代)の約700年間には、日本は諸外国によっていくどかの危機を迎えました。当ミュージアムは、こうした国難を乗り切ったサムライとサムライ・スピリットの一端を日本人と海外からの旅行者に日本刀・甲冑・パネル展示などで紹介します。現代の日本人にも脈打つサムライ・スピリットとは何かを感じてもらうことを目指しています。Samurai Museumについて
侍を中心とした文化や日本の昔ながらの音楽を体験することができる施設「Samurai Museum」のウェブサイト。ユーザーレビューにも「一見の価値あり」という言葉が並ぶように。一歩踏み込んだ日本の文化に触れる体験ができるようです。観光情報のインバウンドメディアが乱立している中、侍の文化に特化したようなメディアの作り方は差別化に繋がります。
美味しいお店とグルメ情報「favy」
食のコンテンツを切り口に訪日中に一度は食べてみたいグルメ情報をまとめている「favy」ベースのコンテンツは日本語版の「favy」であるようですが、まったく同じコンテンツではなく訪日ユーザーの趣味趣向を考慮にいれた調整を掛けているようです。
移住をして日本で暮らす情報がそろう「GaijinPot」
言語設定は日本語と英語の2つ。日本で仕事、学校、住居探しをする為の情報が充実したウェブメディアです。日本を気に入った訪日ユーザーが実際に移住を検討するときに参考にするサイトでしょうか。日本企業が海外のリソースを求めて求人をする用途としても使えそうです。暮らしを軸においたコンテンツになると、観光用の情報とはガラッと変わって煌びやかな日本という感じではなく、日常にある日本文化や悩みの解消がテーマになってきます。不要になったものを提供しあうようなコンテンツがあったり、コミュニティとしても機能をしているインバウンドメディアです。
スペイン語で日本のツアーを補足するサイト「CANCÚN A JAPÓN」
スペイン人向けの訪日ツアーを企画されているCANCÚNA CRS JAPANさん。こちらは弊社TCDテーマのGENSENを使用して構築されたインバウンドウェブメディアです。コンテンツの中身は事業として訪日ツアーをされているので、自社のツアーメニューを補足するような内容が中心になっています。旅のしおりのように閲覧できるコンテンツはこれを見ながらツアーのメニューを組み替えたりするのでしょうか。コンテンツが気に入った場合はそのままツアーとして依頼できる状態ですので、メディアを充実させることで売り上げにも直結するのではないでしょうか。
「Japan」を直感的に伝えるインバウンドメディアたち
今回、インバウンドをテーマに構築されたウェブメディアを紹介しましたが、国内でインバウンドが流行する前から存在するメディアがあったり、文化だけでなく言葉も同時に広めようとするメディアがあったりしておもしろかったです。
また、これらの有力なインバウンドメディアの共通点は文章で伝えるだけでなく、写真や動画やイラストをフルに活用しているのも特徴です。文章だけの多言語サイトはネイティブレベルでの翻訳を必要とするため、テキストだけの伝達はハードルを上げることに繋がるからです。見た目で瞬時に伝える。つまり、感覚的に伝えていくこと。これは多言語サイトを効果的に構築する上で必要な要素と言えます。
日本人視点だけでなく、外国人の視点で記事を書く
訪日向けのコンテンツとしては、日本人が思う日本のアウトプットというより、訪日されている外国人の視点での発見、驚きを情報に落とし込んだ方がウケが良いの場合があります。そのため、インバウンドメディアの記事の多くは外国人ライターが書き下ろしたもので構成されていたりする。
モチロン日本人だから伝えられる日本の良さもありますが、ちょっと観光に来たという訪日客には難しすぎる知識になってしまうかもしれません。要素をしっかりと掘り下げたボリュームのあるコンテンツを目指すことと、併せてメディアの特徴の出し方、何を伝えるのか?についてもしっかり検討するとよさそうです。
サイトの多言語化がもたらす、ビジネスの無限の可能性
国内向けのメディアを運営されている方の中には、すでに訪日ユーザーのニーズにも叶ったコンテンツを構築できている方もおられると思います。そういうサイトオーナーにこそ、海外に向けた情報発信は効果的です。なぜなら、外国語言語で情報発信を始めたサイトオーナーの多くが「情報や人の流入元や交流範囲が世界へと広がった」という体験をしているからです。
例えば、日本人が何気なく普段から使っている「弁当箱」「キャラ弁」。これは世界では「Bento」として人気を集めているのをご存知でしょうか。日本の繊細な弁当箱やキャラ弁が注目を集めているわけです。こういった隠れたコンテンツが日本にはたくさんあり、多言語サイトにすることで初めて海外の人たちに情報を発信できるわけです。
また、集客のターゲットを国外にも拡げることは、そのウェブサイトのアクセス数、ユーザー数は別次元に飛躍する可能性を秘めています。是非、紹介のメディアを参考に訪日ユーザーに向けた情報発信を検討してみてはいかがでしょうか。個人ブログだからといって遠慮する必要はないでしょう。大手にできない情報発信を求めているユーザーも確実に存在します。
なお、最後に余談ですが、TCDではインバウンドメディア向けのWordPressテーマも用意しております。日本文化を美しく表現し、日本語だけでなく、英語でも綺麗に表示するWordPressテーマです。
・WordPressテーマ「TOKI」
・WordPressテーマ「meets」
追記:
地域版のインバウンドメディアまとめも公開しました。