クリニックの集患(集客)について考えるうえで、「広告は出したほうが良いのか」「広告費に見合う効果があるのか」と悩んだ経験のある院長・事務長は少なくないでしょう。実際、広告費の高騰や医療広告ガイドラインもあり、「やったほうが良い」と言われても、素直に踏み切れない方もいるはずです。
本記事では、クリニック集患の構造を踏まえたうえで、広告がどのような役割を持ち、どこに限界があるのかを冷静に整理します。
「広告をやるべきかどうか」ではなく、「集患において広告をどう位置づけて考えるべきか」の判断材料になるよう、医療業界で働く方に聞き込み調査を実施しています。第1回で整理した全体戦略や第2回のクリニックSEOと比較しながら、広告の役割と現実的な限界について見ていきましょう。
クリニック集患における広告の役割
クリニック集患における広告は、「この地域にこういうクリニックがある」と存在を知ってもらったり、関心を持つきっかけをつくったりするのが役割です。
広告は、まだ受診を決めきっていない方や、課題を漠然と感じている方に対して広く情報を届けられます。言い換えれば、クリニックの集患構造において広告は、「入口」や「接点」を担う施策として位置づけるのが自然です。
広告は集患の結果を直接つくる施策ではなく、患者様が次の行動に進むための最初の一歩を用意する役割を持っています。
なお、広告だけでクリニック集患の成果を出そうとした場合、本記事の後半でお伝えする「広告の限界」が感じやすくなるのも実情です。集患施策の1つである広告の役割を果たすためにも、「やる・やらない」だけでなく「できる・できない」ことの把握も大切です。
前提として知っておきたい
医療広告ガイドライン
クリニックで広告を活用する場合、多くの院長・事務長が最初に気にするのが「医療広告ガイドラインに違反しないか」でしょう。内容を十分に理解しないまま広告を出す不安や、万が一のトラブルを避けたいという気持ちは、ごく自然なことです。
一方で、ガイドラインの存在が理由で「広告は難しい」「何もできない」と感じてしまうケースも少なくありません。
ここからは、細かな条文やテクニックに入る前に、医療広告ガイドラインをどう捉えておくと判断しやすくなるのかという前提の考え方を整理していきます。あわせて、問題になりやすい違反事例にも触れながら、広告を検討する際に押さえておきたい視点を確認していきましょう。
何が広告にあたる?
一般的に広告といえば、テレビCMやリスティング広告などが思い浮かばれますが、広告費を払って出稿しているもの以外でも条件を満たせば広告と判断れます。「広告のつもりかどうか」は関係ありません。
基準は、厚生労働省の医療広告ガイドラインで示されています。
広告として判断されるもの:
- 公式ホームページ
- LP(ランディングページ)
- SNS投稿
- Googleビジネスプロフィール
- リスティング広告
- メディア広告
- 看板広告
その中でも医師個人のSNSやメディアのインタビュー記事あたりはグレーゾーンですが、表現の仕方によっては広告と判断される場合もあります。
医療広告の違反の分類
厚生労働省の資料(1.2. 違反の分類)に沿った違反分類をわかりやすく整理します。違反は大きく3区分に整理されています。
医療広告はその他の業種に比べ、非常に厳しい制限があります。医療広告を制作する側でないにしても(広告代理店を利用する場合も)、クリニック側はこれらを念頭に入れておく必要があります。
| 分類 | 違反事項 | 具体例 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 分類1 直接罰が適用される広告 |
虚偽広告 | 「成功率100%」「絶対に治る」等、事実と異なる効果・実績の断定/実在しない医師・設備の掲載 | 厚労省手順書 p.7(医療法第6条の5第1項・第6条の6第4項・第87条第1号/医療広告GL 第3の1(1)) |
| 麻酔科を診療科名として広告する際の麻酔科医氏名の併記不足 | 診療科に「麻酔科」を掲げながら、麻酔科医の氏名を広告内に併記していない | ||
| 分類2 1以外の禁止される 広告等 |
比較優良広告 | 「地域No.1」「他院より成功率が高い」等、他院と比較して優れていると示す表現 | 厚労省手順書 p.7(医療法第6条の5第2項/医療法施行規則第1条の9/医療広告GL 第3の1(2)〜(7)) |
| 誇大広告 | 「必ず改善」「痛くない」「副作用ゼロ」等、効果・安全性を過度に断定する表現 | ||
| 公序良俗に反する内容の広告 | 「放置すると危険」等、過度に不安を煽る恐怖訴求 | ||
| 広告可能事項以外の広告(限定解除要件未充足) | 自由診療で費用・リスク/副作用・治療内容等の必要情報が不足 | ||
| 患者等の主観に基づく体験談 | 「ここで治った」「人生が変わった」等の感想を広告として掲載 | ||
| 誤認を与える治療前後写真等 | ビフォーアフターのみ掲載/加工や条件差で効果を強調し必要情報が不足 | ||
| 分類3 その他 |
品位を損ねる内容の広告 | 「今だけ半額」「人数限定」等、射幸心を煽る過度なキャンペーン訴求 | 厚労省手順書 p.7(医療広告GL 第3の1(8)) |
| 他法令又は他法令ガイドラインで禁止される内容 | 未承認医薬品等の優良誤認表示など、他法規に抵触する広告 |
医療広告制作時のポイント:
- 断定しない、比較しない、情報を隠さない。
- 広告制作後(出稿前)に法務チェック。
- 広告代理店に丸投げはハイリスク → 院内で指針やチェック機能を持つ
- SNSやLP投稿も広告扱い
違反した場合の罰則と行政対応
違反すると、通常は以下の流れになります。
| 違反区分 | 行政対応 | 法的根拠 | 実務上の対応ポイント |
|---|---|---|---|
| 虚偽広告 直接罰対象 |
報告徴収・立入検査 | 医療法第6条の8 | 広告内容の根拠資料(統計・論文・実績算出方法)を即時提示できる体制を整備 |
| 中止・是正命令 | 医療法第6条の5/第6条の6 | 指定期限内に削除・修正し、修正履歴を保存 | |
| 命令違反時の罰則 | 医療法第87条第1号(6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金) | 断定表現・数値表示の全面点検が必須 | |
| 誇大・比較・体験談等 禁止広告 |
行政指導 → 改善要請 | 医療法第6条の5第2項/医療広告ガイドライン | No.1・最先端・安心安全などの表現を重点確認 |
| 命令 → 罰則へ移行 | 医療法第6条の5/第87条 | 是正を怠ると罰則対象に発展する可能性あり | |
| 品位を損ねる広告 他法令違反 |
行政指導 | 医療広告GL 第3の1(8) | 過度なキャンペーン訴求は削除・緩和 |
| 他法令による処分 | 医薬品医療機器等法(薬機法) | 未承認品や効能断定は課徴金・業務停止リスクあり |
実務上の重要点:
- いきなり罰金は通常ない(段階的対応)
- 虚偽広告は即リスクが高い
- 修正履歴を保存しておくと対応時に有利
医療広告ガイドラインで注意すべき視点
医療広告ガイドラインで特に注意したいのは、「何を伝えているか」以上に「どう伝えているか」という視点です。同じ内容であっても、表現の仕方によっては、誇大広告や誤認表示と受け取られてしまう可能性があります。
「必ず治る」「絶対に安全」「他院より優れている」といった断定的・比較的な表現は、患者様の判断を不当に誘導するおそれがあるため、問題になりやすい代表例です。事実に基づいていたとしても、受け手の解釈次第で誤解を招く表現は避ける必要があります。
また、費用・リスク・副作用などの情報を適切に示さず、メリットだけを強調する表現は、ガイドライン違反と判断されやすくなります。
つまり、医療広告ガイドラインは、広告活動そのものを否定するためのルールではないのです。患者様が正しい判断をできるよう、情報の伝え方に一定の制限を設けているものだと捉えると理解しやすくなるでしょう。
出典:厚生労働省『医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)』
医療広告の違反事例
患者様が正しい情報をもとに、安全な医療機関を選べるよう施行された医療広告ガイドラインでは、以下の表現を禁止しています。
【虚偽広告になりやすい違反事例】
- 「必ず治る」「絶対に安全」など断定的な表現
- 根拠を示さない「成功率99%」「満足度100%」
- 通院が必要なのに「1日で治療完了」と記載
- 術前・術後写真の加工や誤解を招く掲載
【比較優良広告になりやすい違反事例】
- 「県内一」「他院より優れている」といった比較表現
- 他院名を出して価格や実績を比較する表現
- 芸能人・著名人との関係性を強調する記載
【誇大広告になりやすい違反事例】
- 条件付き治療を「無制限」「誰でも可能」と表現
- 実態のない学会や認定資格の強調
- 医師数・設備数を過度にアピールする記載
上記のような表現規制は、記載されている内容そのものよりも、「患者様がどう受け取ったか」が重要です。「何を書いてはいけないか」ではなく、「初めて見る患者様が誤解せず判断できる情報になっているか」という視点で見直すことが、違反を避ける現実的な考え方と言えます。
出典:厚生労働省『医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)』
クリニック広告の種類
医療広告ガイドラインの考え方を踏まえると、「広告は難しい」「何もできない」と感じてしまう方も少なくありません。しかし実際には、規制を前提にしながらも、多くのクリニックが広告を活用しています。
ここからは、ガイドラインに抵触しないよう配慮しつつ、現場で比較的採用されやすいクリニック広告の種類を一覧でまとめながらお伝えします。
「使えるか・使えないか」だけで判断するのではなく、集患構造においてどの役割を担わせる広告なのかという視点で確認していきましょう。
交通機関や屋外などのリアル広告
駅看板や電車内広告、バス・タクシー広告、電柱看板、チラシなどのリアル広告は、クリニック集患において「地域に存在を知ってもらう」ことを主な目的とした施策です。特に、インターネットでの情報収集に慣れていない高齢の患者様が多い地域では、検討対象になりやすい広告と言えます。
| 種類 | 役割 | 向いている状況 |
| 駅看板・駅内ポスター | 通勤・通学層への認知づくり | 駅利用者が多い立地 |
| 電車内広告 | 路線利用者への刷り込み | 特定路線に商圏が集中している |
| バス広告 | 地域住民への周知 | バス利用が多い地域 |
| タクシー広告 | 富裕層・ビジネス層への認知 | 法人対応や高付加価値診療を行う場合 |
| 電柱看板・街中看板 | 来院動線の補助 | 道に迷いやすい立地 |
| チラシ・ポスティング | 近隣住民への直接訴求 | 新規開院時や認知不足の段階 |
リスティングやSNSなどのWeb広告
リスティング広告やSNS広告などのWeb広告は、リアル広告と比べて配信条件や予算を柔軟に調整しやすい点が特徴です。「今まさに情報を探している方」や「関心を持ち始めた方」にタイミングを合わせて情報を届けられるため、クリニック集患においても検討されやすい広告手法と言えます。
| 種類 | 役割 | 向いている状況 |
| リスティング広告 | 今すぐ受診を検討している層への接点 | 検索ニーズが明確な診療科 |
| SNS広告 | 潜在層への認知・関心づくり | 予防・定期通院が関係する診療 |
| ディスプレイ広告 | クリニック名や存在の刷り込み | 認知拡大を補いたい段階 |
| 動画広告 | 雰囲気・安心感の可視化 | 初診の心理的ハードルが高い診療 |
| リターゲティング広告 | 検討中患者への再接触 | ホームページ閲覧後の離脱対策 |
| メール広告 | 既存患者への再来院促進 | 定期フォローや検診案内 |
聞き込み調査で見えてきたクリニック広告の限界
クリニックの集患施策においては、リアル広告やWeb広告など、多くの選択肢があります。一方で、医療業界で働く方に聞き込み調査をした結果、広告そのものに対して限界を感じているケースも少なくありませんでした。
ここからは、聞き込み調査の内容をもとに、広告施策を検討する現場でよくある悩みを整理していきます。
広告によっては「見たことある」程度の認知止まりになってしまう
広告施策には、「クリニックの名前や存在は見たことがある」と認知される一方で、来院行動まではつながらないケースが少なくありません。聞き込み調査でも、テレビCMや駅看板、電車内広告は「見覚えはある」「どこかで見た気はする」程度で、受診の直接的なきっかけになった声はほとんどありませんでした。
広告は、不特定多数に向けて広く情報を届けられる反面、患者様一人ひとりの症状や不安と結びつかないまま消費されてしまう側面もあります。日常の移動中や待ち時間に目に入る広告は、「記憶に残る」ことはあっても、来院判断に必要な情報が補われないまま終わってしまうのが実情です。
結果として、広告費をかけて露出は増えているものの、予約や問い合わせといった行動の変化が見えにくくなっているのです。「広告を出していないよりは良さそうだが、手応えも感じにくい」という感覚こそが、広告施策に限界を感じる理由の1つと言えるでしょう。
広告そのものは「来院判断」に直結しにくい
広告は、クリニックの存在を知ってもらう「きっかけ」にはなるものの、広告が来院を決めるケースは多くありません。実際、多くの方は広告を見た後、一度はホームページを確認しているものです。
また、ホームページを確認したうえでWeb予約に進むケースが多いため、広告だけで受診を決めるケースは極めて少ないでしょう。つまり広告は、あくまで入口であり、その後に判断材料を探す行動が自然に発生しているのです。
この確認行動が前提にあるにもかかわらず、広告だけを成果指標としてしまうと、「広告を出しているのに患者が増えない」という違和感が生まれやすくなります。広告が機能していないのではなく、その先の判断導線が十分に整っていないケースも少なくありません。
広告は来院判断を完結させる施策ではなく、判断プロセスの最初に位置する施策です。この構造を理解せずに広告の効果だけを測ろうとすると、限界を感じやすくなってしまうでしょう。
広告施策の限界を超えるために必要な視点
広告施策は、医療広告ガイドラインへの配慮が求められ、限界を感じやすい施策でもあるため、「広告が悪い」「効果がない」という結論に行き着きやすいものです。
しかし、広告の成果は「広告そのもの」ではなく、その後に続く導線や受け皿の整え方によって左右されます。
ここからは、広告施策を過度に期待しすぎず、切り捨てることもなく、集患構造においてどのように捉えると無理が生じにくいのか、その考え方を整理していきます。
広告は「単体の施策ではない」と捉える
クリニック集患において広告は、単独で結果を完結させる施策ではなく、あくまで患者様がクリニックを知る「入口」や「きっかけ」を担う施策と捉えるのが大切です。
多くの方は広告を見た後、ホームページで詳しい情報を確認し、診療内容や雰囲気などを見て、予約するかどうかを判断する流れが自然に発生します。この一連の流れの中で、広告は最初の接点をつくる役割を果たしているにすぎません。
MONADの院長や医師のプロフィールページ
実際には広告が機能していても、その先の情報整理や予約導線が弱ければ、結果につながりにくくなるのです。
広告を評価する際は、「広告単体で何人来院したか」ではなく、「集患の流れの中でどこを補っているのか」という視点で捉えることが重要です。広告を1つの施策として切り離すのではなく、集患構造の一部として位置づけることで、過度な期待や失望を避けやすくなるでしょう。
その後の判断導線をこぼさないための「受け皿」を整える
広告をきっかけにクリニックの存在を知った患者様のためにも、詳しい情報をまとめられるホームページを整えると、広告で高まった関心をこぼさずに済みます。
患者様は診療内容や対応している症状、医師の考え方、院内の雰囲気、予約方法など、「本当にここで大丈夫か」を判断する材料を広告の後に見ています。しかし、必要な情報が見つからなかったり、古い内容のままだったりすると、広告で生まれた関心はそのまま離脱につながるでしょう。
つまり、広告がどれだけ露出していても、その後の判断を支える受け皿が整っていなければ、集患の流れは途中で途切れてしまうのです。広告が入口だとすれば、ホームページは「最終確認の場」であり、来院判断が下される場所だと言えます。
NOELのホームページトップ
広告施策の限界を感じやすいクリニックほど、「広告の次に患者様が何を見て、どう判断しているのか」という視点で、受け皿となる情報や導線を整えることが重要になります。
公式ホームページから来院する流れをつくる
医療広告は、ただでさえ制限が多い上、広告費がずっとかかり続ける問題があります。もちろん、それでも広告を出すメリットは一定ありますが、短期的な施策に陥りがちな広告だけに集客を頼るのは、クリニック経営を長期で続けるには心もとないです。
経営は土台を固めることが重要。
そのために、公式ホームページをしっかりと作り込むこと。これが安定した長期的な集客に繋がります。
医療機関の公式ホームページは元々SEOに強い側面があります。
クリニックの公式ホームページは検索エンジンからの評価も高い傾向にあるため、医療ポータルサイトよりも上位表示させることは決して難しくありません。その強みを活かしたサイト作りをすれば、公式ホームページから安定した来院が続く仕組みが作れます。
では、どうすればホームページを作り込めるのか。必要なコンテンツを用意し、1ページずつ丁寧に作り込むこと。これだけです。
【最低限必要なコンテンツの一覧】
- 診療科目・診療内容
- 当院の特徴
- 院長(医師)の紹介
- 初めての方へのお知らせ
- アクセス・交通機関
- 診療時間・休診日
- 予約方法
- 院内・設備紹介
クリニック(病院)の集患について調べていくと、「SEOが重要」「検索で上位に出ないと患者様は来ない」といった話を耳にする機会が増えます。一方で、実際に何をすれば良いのかが腑に落ちず、「本当にSEOは必要なのか」「広告やSNSと何が違うのか」と戸惑っている院長・事務長もいるでしょう。 本記事では...
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まとめ
本記事では、クリニック集患の構造を踏まえたうえで、広告施策をどのように位置づけて考えるべきかを整理してきました。本記事で整理してきた内容を、集患構造の視点で振り返ると、以下の点が重要になります。
クリニックでの広告は、自院の集患構造において「どの役割を担わせるのか」という視点で捉えることで、過度な期待や失望は生じにくくなります。
広告は万能な施策ではありませんが、集患構造の中で役割を限定して捉えることで、無理なく機能します。そのためには、広告の後に患者様が何を見て、どう判断しているのかを冷静に見直すことが欠かせません。
なお、次回は広告やSEOの「受け皿」となりやすいクリニックのホームページについて掘り下げます。「ホームページはあるが、正直どう役立っているのかわからない」と考えている院長・事務長の方にとって、判断の軸を持ち帰れる回になるはずです。









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