仮説思考とは、「これはこういう風になるかな」とおおよその自分の考えを持つこと、または持とうとすることをいいます。テーマが改善策であっても、問題点であっても、最初から仮説をもって「こうすれば上手くいくかもしれない」「これが問題点ではないのか」というようなことを考え続けることです。

仮説思考は最初の一歩に効いてくる

仮説は検証をして正解(目標)に近づける考え方です。なので最初の一歩を「失敗するかも」という心配に止められることがありません。なので1歩目がスッとでる。

仮説思考が日常生活に浸透すると、普段から感度高くさまざまな情報をキャッチする癖がつきます。体験を経験に、そして仮説として流用する思考回路になるわけです。未知の選択肢に対しても仮説をもって臨み、検証を繰り返しながら突き進んでいきます。仮説思考を身に着けている人の頭は、出動待機をしている緊急車両のように、いつでも動き出せる準備が整っているようなイメージです。

仮説思考の上級者ともなると、過去の経験から流用した仮説を使いこなすことで、未然に大半のリスクを摘み取ることも可能になります。決して大袈裟なことではなく、未経験のフィールドでもノーミスで駆け巡るといった例だって出てくるでしょう。運動神経がよいとされる人が未経験のスポーツであっても経験者ばりに動けたりするのが似たイメージです。数多くの経験が血肉となって、新しいチャレンジに対しても有効に働くのが仮説思考の大きなメリットです。

仮説思考が身につくと万事に「自分の考え」を持つことができる

仮説思考が身についている人は何事に対しても「これは(これまでの経験から)こうだと思う」といった自分の知見からくる考えをかなり明確に持つことができます。仮説を立てることが自然に、かつ瞬時に可能で、すべての行動に対して仮説込みの行動をすることができるようになります。

仮説思考自体は珍しいものではなく、日常生活において誰しもがやっていることでもあります。

・雨が降りそうだから傘を持っていこう
・マラソンイベントがあるそうだから道が混みそうだ
・プレミア価格が付きそうだから1つ多く買っておこう

といった予測行動がそれですね。しかし、不思議と仕事においては仮説思考を危険視する声を聞くことも多く、実践している人も限られているようです。その危険視した意見は多くが上層部から部下に向けてということが主な原因ではないかと思いますが、仕事における仮説思考のリスクを唱える人は、

・もっとよくリサーチをして慎重に問題点を整理するべき
・調査もせず主観の強い仮説はキケン

ということが多いようです。アドバイスとして確かにと思わなくもないですが、仮説思考を身に着けた人を少し誤解した意見だと思います。

仮説思考の元行動するようになると、行動こそ早くなりますが、強くアクセルを踏み込むこともなく、新しい情報が入ってきた瞬間に必要に応じて選択肢を修正する能力も身についているわけです。

慎重なリサーチを重ねた結果、即座に行動を開始した場合の仮説検証のサイクルを、いくつか省略できるかもしれませんが、検討違いのリサーチになる可能性も大きくあるわけです。慎重になるように言う気持ちもよくわかりますが、仮説思考はいい加減な初動を元に仮説を検証しはじめるのではなく、常に感度を高く保った自分の意見をまずはアクションとしてぶつけているわけなので、思っているよりずっと手堅いと私は思います。

自覚症状のない完璧主義者が多い日本という国

「完璧主義は良くないよ」というフレーズは多く聞くことがあると思いますが、そういっている本人も実は完璧主義者だということも充分にありえます。それは我慢して結果を得るという工程が普通だという認識を、小さい時から教育の中で刷り込まれているからです。

・宿題が終わってから、遊びに行きなさい。
・お手伝いをしてくれたら、お駄賃をあげる。
・努力をしないと、成功できない。

教育の観点から無駄とは言いませんが、このような教育から刷り込まれた無意識の判断は大きな成果を目標に立てた行動を起こそうとした時において、邪魔になることもあるのです。大きな目標を達成するにはそれ相応の準備が必要と無意識に構えてしまい、その準備に取り掛かってしまうわけですね。大層な目標であればあるほど、準備が終わらないということになります。

・転職を考えていると言っているけどしない人
・独立起業する予定で勉強中のまま数年経過する人

ずっと何かを頑張り、準備を続けている人は危ないと思います。「しっかり準備をしたらチャレンジしよう」ということが全てだと思いますが、しっかりとした準備の基準も怪しいわけで、チャレンジ中の状態が習慣化、日常化しているという危険があります。ルームランナーの上を走り続けていて1歩も前に進んでいない状態を想像してください。速く走れる準備をしていながら、1mも進んでいない。そんな万年準備中な人、周りに結構居るのではないでしょうか。

無策で突撃して大けがをすることを推奨するわけではありませんが、真剣に行動を起こすための準備を進めているのであれば、「今の自分は歩みを止めていないだろうか?」と自問自答をしっかりと繰り返したほうがよいでしょう。そして本稿でもオススメしています仮説思考をもって1歩目を歩み出して見るという進め方についても検討をしてみてください。実はもうすでに必要十分な準備ができているということにも気づくことができるかもしれません。自分を過少評価していた人は、小さな行動、小さな成功を体験するだけで見違えるほどにイキイキと躍動するようになる可能性も秘めています。

仮説思考を磨くには人脈を活用する

仮説思考はその人の知見から要素を組み合わせてサイクルが回り始めます。ですので、より仮説思考による検証サイクルを優位に展開しようとすると、最初の仮説を成功に近い基準で持つ、または一気に成功に近づく検証結果を得るかということになるわけです。いわゆる”当たり”をつけるという時点でよい材料を手元に持っていると、その仮説は成功にグンと近いところに立てられるかもしれません。

そんな理想的な仮説には、正しい情報が材料として必要になります。インターネットなどで情報集め自体は楽な時代になりましたが、その情報が本物であるかどうかの判断は意外に難しい。その道で成功を収めた人から本物の情報を収集することができるのならば、それが一番の情報源になると考えられます。

未経験の世界で行動を起こすことが求められたのなら、その道の成功者に自分のもつ仮説をすべてぶつけ、本物の情報を引き出し、自分の仮説に取り入れるということができると大きく優位な仮説立てが可能になるでしょう。

成功を手にしても回し続けるべき、仮説検証サイクル

目標達成、成功を手にしてからも仮説思考はとても大切になります。日々新しい商品が産まれ、変化する現代において、今のままでよいということはほとんどないからです。どんどん変化する時代に併せて、変化を求められることも多くあると思いますし。そういう変化への対応こそ、仮説思考が活きるシーンです。成功を手にしてからも、今から挑戦する視点に立って情報収集を行うことを忘れてはいけません。一度よい波に乗ることができたなら、その波に少しでも長く乗り続けるように仮説検証のサイクルを電光石火に回していきましょう。