働き方革命を皮切りに、日本国内でも浸透しつつあるリモートワーク。

オフィス勤務の働き方からシフトしきれず悩んでいる企業も少なくありません。

様々な企業が試行錯誤をする中、2005年からリモートワークを貫いているのが今回紹介するAutomattic社です。メリットを最大化しつつ、デメリットを補うにはどのような働き方をすれば良いのでしょうか。

本記事では、リモートワークのベテラン企業であるAutomattic社から、働き方の極意を学んでいきましょう。

完全リモートワークの「Automattic社」とは

Automattic社は、2005年8月に米国サンフランシスコで創業された企業です。
社名は創業者でCEOである「Matt Mullenweg(マット・マレンウェグ)」のファーストネームにちなんでいます。

このAutomattic社は、TCDとは切ってもきれない「WordPress」を開発した企業なんです。WordPress本体はもちろん、以下のようなプラグインやメモアプリも提供しています。

2019年9月にはSNSで人気のTumblrも傘下に納めました。2019年時点で時価総額300億ドルと評価される巨大企業になっています。

はじめから「分散型」の会社を意識していた

Automattic

世界中にスタッフが分散

現在のAutomattic社は、1939名の社員が世界98ヶ国に分散しているそうです。
※公式サイトより

CEOのマット氏は「創業当時から分散型の会社を意識していた」と言います。
そもそも20名ほどの社員でWordPressを立ち上げた頃、マット氏は社員のほとんどと顔を合わせたことがなかったそう。

オンライン上でやり取りする彼らにとって、リモートワークは最早必然と言えるでしょう。

ちなみにマット氏は「Remote Work(遠隔勤務)」ではなく「Distributed Work(分散型勤務)」という呼び方を好んでいます。「遠隔」を意味するリモートは、中心的な人たちとそうでない人を区別する印象があるからです。

「中央集権型」ではなく「自律分散型」のリモートワークであることがポイントです。

>> Distributed Work’s Five Levels of Autonomy – Matt Mullenweg

Automattic社がリモートワークに拘る理由

Automattic社がリモートワークに拘り続ける理由は主に2つあります。

1つ目の理由は「世界中にいるスキルや才能を持った人を採用したい」からです。
例えば、競争率の激しいシリコンバレーで優秀な人材を見つけるのは至難の業。高額な給与や魅力的な待遇の提案も必要になるでしょう。

この点、リモートワークなら世界中のプロフェッショナルを採用可能です。
日本最北端に位置する稚内在住のエンジニアも、ロンドン在住のデザイナーも同じように採用できます。

2つ目の理由は「社員に仕事のやり方について自主性を与えたい」からだそうです。
マット氏は、自分に合った働き方を自ら作り出せることで生産性を上げられると考えます。

人によって仕事しやすい環境は違うもの。デスクや椅子はもちろん、室温やBGMなどもリモートワークなら各個人で環境をつくれます。社員の中には、世界を転々としながら生活するノマドワーカーもいるそうです。

Automattic社に学ぶリモートワークの極意

Automattic社がリモートワークで重視しているポイントを見ていきましょう。

  • 社員が自由にスケジュールを組める
  • 各社員に合った仕事環境を提供する
  • 年に1度は全社員が集合できる場を設ける
  • 社員が自由にスケジュールを組める

Automattic社では始業と終業を決めておらず、各社員が自由にスケジュールを組めるようになっています。

それぞれに任された仕事を完遂させられれば、1日の作業時間が2時間でも問題ないのです。
リモートワークに勤務時間を設定する企業も多い中、Automattic社は自由度を重視しています。

  • 午前中は1時間しか働けない
  • 夜に集中して働きたい
  • 仕事できる時間帯が毎日変わってしまう

上記のような人も問題なく働ける仕組みを構築しているのが特徴的です。

各社員に合った仕事環境を提供する

Automattic社では各社員に合った仕事環境を提供するため、以下2つの手当を支給しています。

コワーキング手当

コワーキング手当は、コワーキングスペースの利用料やカフェで仕事をする際のコーヒー代に利用できます。
マット氏いわく「店から追い出されないためにコーヒーを買えるようにしている」とのこと。

コワーキング手当を複数名で出し合って、仕事場をレンタルしている社員たちもいるそう。リモートワークを推進する企業ならではの手当ですね。

自宅オフィス手当

自宅オフィス手当は、在宅ワークの作業環境を整えるために利用できます。
デスク、椅子、モニターなどの費用を会社が負担することで、社員が生産的に働ける環境を整えやすくしているのだそうです。

Automattic社のベテラン社員に「おすすめの作業環境」を聞けば、リモートワークに最適な様々なツールを提案してくれるでしょう。

オフィスの維持費や交通費などを削減できる分、社員が心地よく働けることに重きをおいていることが分かります。

年に1度は全社員が集合できる場を設ける

完全リモートのAutomattic社は、年に1度世界中の社員が対面できる場を設けています。

1週間ほど開催されるオフラインミーティングの内容は「半分遊びで半分仕事」なのだそうです。旅費は会社が負担するため、ちょっとした旅行気分で参加できます。

実際に顔を合わせることで、社員同士の絆やリモートワーク時のモチベーション維持にも役立っているのだとか。お金の使い方も、リモートに特化した企業ならではと言えます。

CEOによるリモートワーク導入へのアドバイス

リモートワークの導入に不安を抱える企業も多いでしょう。以下は、CEOのマット氏がリモートワークを検討している企業へのアドバイスです。

  • オンライン上に全てを記録する
  • コミュニケーションをできるだけオンラインで行う
  • 最適なツールを選択する

オンライン上に全てを記録する

世界中に社員を抱えるAutomattic社は、仕事に関する全てのドキュメントをオンラインで保存していると言います。

会議の議事録からプロジェクトの進捗まで、あらゆるものを記録する。これにより会議に参加できなかった人にも情報共有ができます。仕事を引き継ぐ際もスムーズです。

「リモート社員だけに情報共有ができていない」といった原因で、生産性が下がるケースは少なくありません。オンラインツールを活用して、あらゆる情報を記録・シェアできる仕組みを目指しましょう。

コミュニケーションをできるだけオンラインで行う

コミュニケーションをなるべくオンラインで行うこともポイントなのだとか。

チャットツールでのやり取りや、ZOOMミーティングでのビデオ会議などを積極的に取り入れる重要性を強調しています。
オフラインとは異なりアーカイブが残せるので、新入社員の学習にも役立つそうです。

「オフィスに4名/リモートで2名」のような状況でビデオ会議する際は、全員が個別にZOOMを開いて参加することも大切にしています。
オフィスの4名が1つのPCでビデオ会議に参加してしまうと、対面している者同士で話を進めがちだからです。

「同じ空間にいたとしてもオンラインで会話する」

結果として、オフィス/リモート関係なく仕事を進められる組織作りができると言います。

最適なツールを選択する

リモートワークを効率化するツールは、様々な企業からリリースされています。

どれも便利だからこそ「自社に合ったツールの選択」が重要です。
人に勧められたツールを導入したものの、生産性が上がらないケースは珍しくありません。

マット氏は「実際に試してみること」に重きを置くべきだと言います。試行錯誤を繰り返すからこそ、本当に合ったツールを見つけられるのです。

ツール選びで悩んでいる企業の方は、定期的にテスト運用をして生産性がどのように変わるのかチェックしてみてはいかがでしょうか。

まとめ

Automattic社は、リモートワークのパイオニア的な企業です。

CEOのマット氏は、社員が快適に働ける環境構築に力を入れています。年々社員数が増えている点からも、リモートワークが上手く機能していることが分かるでしょう。

  • 世界中の人材を採用できる
  • 快適な仕事環境にコストをかけられる
  • 通勤時間の短縮

上記のようなメリットを考えると、今後リモートワークがより浸透していくと予想できます。

デジタル化が進み、どこでもインターネットが繋がる時代です。「コロナ禍だから」と考えず、変化に対応できるワークスタイルが求められています。新しい働き方をテストしつつ、Automattic社のように「自社に合ったスタイル」を目指していきましょう。

CEOのマット氏によるリモートワークへの考え方は、以下の動画で垣間見れるので参考にしてみてくださいね。

※字幕あり

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