リモートワークは、オフィスに出勤せず仕事ができる一方で「集中できない」との声も少なくありません。

この問題を解決するには、集中できない原因を理解して然るべき対策を講じる必要があるでしょう。表面的な問題はもちろん、根本から生活習慣や働き方を見直すことも大切です。

本記事では、リモートワークで集中できない原因と対策方法をまとめました。

リモートワークで生産性は下がる?

リモートワーク(テレワーク)の生産性はオフィスワークと比べてどうなのか。結論は「人による」のが実情です。

ただ、統計的にどうかという傾向はあるようです。有力データを2つご紹介します。

Adobeの調査によると日本の回答者の約43%がリモート環境で生産性が下がったと答えています。

リモートワークを始めたGMOの代表熊谷氏がリモート環境とオフィス環境でのタイピング数の計測結果を公表。時間あたりのタイピング数が減少し、労働時間が増えたという結果を公開しています。

テレワークに於けるパソコンのタイプ数を定量的に計測。

・PCの操作数(作業量)は1日当たり21%減少
・逆に労働時間は9.16時間→9.99時間と増加

時間当たりの操作数(作業量)は72.5%と27.5%の大幅減少。

弊社(株式会社デザインプラス)でも、創業以来10年以上にわたりフルリモートワークを実施していますが、体感としてこのデータには信ぴょう性があります。

リモート環境で生産性やクリエイティビティが開花する人が一部で存在する一方、生産性が若干、もしくは著しく落ちる層(7割くらい?)が生まれることは避けられないのかもしれません。

リモートワークで集中できないよくある原因

生産性の要因に「集中力」があります。目の前のこと集中できている状態(ここでは「ゾーン」と呼びます)にあれば、作業効率は格段に上がります。

一般的に、集中を削ぐ原因を挙げてみます。

  • 家族や同居人がいる
  • 仕事に関係ない物が多い
  • 他にやることを思い出してしまう
  • 仕事向きでないデスクと椅子
  • 生活音や雑音がうるさい
  • 公私の切り替えに時間がかかる
  • 人間関係の悩み事がよぎる

家族や同居人がいる

リモートワークで集中できない原因として、最もよくあるのが家族や同居人がいるケースです。

いざ仕事に集中しようと思っても、人の気配を感じると気が散ってしまうものです。作業中に話しかけられて集中が途切れてしまう人も多いはず。

人は一度集中が切れると、再度ゾーンに入るまでに時間がかかります。1時間に1回くらいのペースで気が散ると、ゾーンに入ることなく、生産性は著しく落ちていきます。

仕事に関係ない物が多い

作業部屋に仕事と関係のない物が多いと、集中を妨げる原因になります。

  • スマホ
  • 漫画・ゲーム
  • テレビ

例えば、上記のような物は気が散る原因になりやすいです。

目の前のスマホの画面が点灯したら、ついつい手にとってしまう人は少なくないでしょう。テレビをつけながら仕事すれば、どうしても目が行ってしまうものです。

人は「ながら作業」で集中することはありません。テレビを見ながらできる作業は質も量もたかが知れています。

他にやることを思い出してしまう

仕事中に他にやることを思い出して動き出してしまい、一向に作業に集中できないことがあります。

例えば、昨日出し忘れた郵便を出しに行ったり、植物に水をやったり。他にも無意識に冷蔵庫を開けに行ったりソファーに腰掛けたりと、何の制約も受けない自宅だからこそ、思いついたことに対して突発的に行動してしまうのです。

そういう環境下だと、いつまで経ってもゾーンに入れず、生産性は著しく落ちていきます。

仕事向きでないデスクと椅子

仕事に向いていないデスクや椅子も、集中力を妨げる原因になります。

  • 高さが合っていない
  • グラつく
  • 座面が硬い

デスクが高すぎたり、椅子が低すぎたりすると快適にリモートワークができません。集中できないだけでなく、肩や首を痛める原因にもなってしまうのです。

デスクがグラつけば少なからずストレスを感じるでしょう。見た目はよくても、座面が硬い椅子に長時間座って作業することは難しいものです。

生活音や雑音がうるさい

生活音や雑音が聞こえると、集中できない原因になるケースもあります。

  • スマホの通知(マナーモードも含む)
  • ペットの鳴き声
  • 工事の音

ちょっとしたノイズに意識が持っていかれることは珍しくありません。

集中したい時こそセンシティブになるものです。同居人がいる場合、生活音もたくさん聞こえるでしょう。耳からの情報によって意識が散漫になるケースはよくあることです。

公私の切り替えに時間がかかる

プライベートな空間だからこそ、仕事に対するオン・オフができないこともあります。

  • 出勤時間がなくなって不規則になる
  • 家族サービスをして作業時間が短くなる
  • 昼寝のつもりが長時間寝てしまった

自宅でリモートワークをしていると、どうしてもプライベートとの切り替えに困るものです。「少し休憩しよう」という誘惑にかられて、気づけば時間を浪費してしまう。

自由な空間だからこそ、仕事への意識が散漫になってしまいやすいのです。

人間関係の悩み事がよぎる

これもよく聞く話ですが、人間関係で悩みや不安があると、集中力を削ぐ要因となります。

  • 家族と喧嘩した
  • 恋人とうまくいっていない
  • 知人関係でのトラブル

本来プライベートのことは仕事に関係ない問題なので、会社や取引先相手に言い訳できるものではありません。「恋人にフラれたから仕事が手につかなかった」など、プロフェッショナルであれば言い訳にすべきではないでしょう。

とは言え、人間関係は本人にとっては大事な問題であることは事実で、自由に動けるリモート環境での生産性に与える影響は小さくありません。

リモートワークで集中できない時に試すべきTips

リモートワークで集中できない時の対策方法をまとめました。

いずれも人によって対応策は異なるのでパーフェクトではありませんが、参考になれば幸いです。

作業しやすいデスクと椅子に変える

深く集中できている時は、椅子やデスクの高さなど気にならないもの。ただ、悪い姿勢で仕事するのは中長期的には、首や腰に負担がかかったりとよくありません。身体の問題が生じれば、そもそもの集中力タイムも短くなってしまいます。

よって、ストレスなく作業できるデスクと椅子を揃えることは、いいリモート環境を構築するには大事なことです。

  • 椅子に深く座って足裏全体が床につく
  • 椅子の座面は長時間座っても疲れないか
  • デスクは肘が90度に保てるか
  • デスクの角で腕が痛くならないか
  • 正しい姿勢を保ちやすいか

座り方も前かがみにならないようにするなど、なるべく身体に負担のかからない姿勢を自然ができるように意識してみましょう。身体のケア、大事です。

作業前と後にストレッチ

先の椅子とデスクにも関係することですが、デスクワークは一見楽なように思われがちですが、長い目で見ればハードワークだと筆者は考えています。毎日身体が固まった状態で過ごしていれば、少しずつ悪影響が生じてきます。

筆者の周りのプログラマーでも腰痛持ちや頭痛持ちが少なくありません。身体は資本です。痛みが伴えば、当然集中力にも影響します。次の3つを習慣にすることをおすすめします。

  • 作業前と後のストレッチで身体をほぐす。
  • 湯船につかり身体をほぐす。
  • 適度な運動で身体をほぐす。

仕事に関係ない物を排除する

リモートワークをする室内から、仕事と関係のない物を排除するのも1つの対策になります。

大きなテレビなどは別室に移動したり、デスクから見えないところに配置するのもおすすめ。小物は小さな箱にまとめてしまってしまいましょう。

「決まった時間以外は箱を開けない」というルールを使えば、集中力の維持を助けてくれます。無駄な物を排除するだけで、仕事に適した環境にすることが可能です。

作業前に「今日やること」リストをつくる

タスク管理は、アプリを使ってもいいし、アナログ的にメモ帳にペンを使って書いてもいいです。

大事なのは、今日やることを必ず作業開始前にリスト化することです。作業開始前にリスト化することで、自分が今日やらなければいけない仕事の全体像を把握でき、スピードアップに繋がります。

「今日やることリスト」は集中力アップとスキルアップに大いに役立つのでぜひ試してみてください。

仕事向きの音楽を利用する

作業中に音楽をかけるのも集中力をブーストする効果があります。

作業内容によって聞く音楽のテイストを変えるのもありですね。クラシックでもEDMでも、その時の気分に合わせて変えてみましょう。

歌詞があると気を取られてしまう場合は、聞き取りにくい歌詞であるとか外国語の歌詞であるとかはありかもしれません。

ただ、かかっている曲が何かに気を取られないくらいに集中できているときが、ゾーンに入っている時です。深く集中できている時は、プレイリストの音楽が終了して無音になっていても気づかないです。

ポモドーロタイマーを使う

ポモドーロタイマーとは「25分作業→5分休憩」のようにタイマーをセットする仕組みです。

例えば、「25分作業→5分休憩」を4セット繰り返した後、30分の休憩を取ります。「作業中は絶対に仕事以外しない」と決めることで、集中力が高まります。

どんなにやる気がない状態でも「5分ほど仕事をしていたら自然と集中できていた」という経験は誰しもあるでしょう。ポモドーロタイマーを活用し実際に手を動かすことで、いつ間にかゾーンに入っていることがあります。

スマホのタイマー機能の他、ポモドーロタイマー専用のアプリもあるので、使いやすいものを導入してみてください。

外で仕事する

カフェやコワーキングスペースで作業すれば、同じ空間に他人がいるので、突然冷蔵庫を開けに立ち歩いたりと無意味な行動に出ることはありません。仕事するしかない環境に身を置くことがポイントです。

外出先での仕事は時にオフィス環境よりも集中できるのでおすすめです。

ただ、筆者の経験上、外で仕事したほうが集中できる人とそうでない人は、綺麗に分かれますので、あなた自身がどちらに向いているかを見極めることも大切です。

気持ちがアガる場所で仕事する

いつも同じカフェでは慣れが生じます。その方が落ち着くという人はいいですが、時には気分を変えてみるのもひとつです。

例えば、海の見えるカフェとか温泉宿もいいでしょう。時間とお金をかけてその場所に行けば、それを取り返すだけ仕事しようという気分にもなるものです。

場所を変えるだけで仕事は楽しめるものですので、リモートワークの人にはぜひおすすめしたい働き方です。

瞑想する

人間関係など雑多な悩みは、瞑想して心を無にすることで雑念を取り除くことができます。他にも青空を見る、散歩する、高いところから見下ろす(東京タワーなど)なども効果的です。

この対策は人によって効果がもっとも分かれるところなので、一番はご自身にあったやり方を見つけることです。自分にあった精神統一の方法を見つけられれば、目の前のことに集中する力は格段に上がるでしょう。その時々によって起こるトラブルや変化に右往左往させられることも減ります。

根本的に自分を変えたいなら習慣を変えるべき

ここまで読んできて「それはもう既に試したよ」という方もいるのではないでしょうか。

筆者自身、リモートワークを5年以上続けていますが、今でも「どうしたら集中力が保てるか」を考えては試しています。
経験の中で分かったことは、表面的なテクニックでは長続きしないということです。

リモートワークに対する集中力を上げるには、日々の習慣から改善する必要があります。

  • 決まった時間に就寝・起床する
  • 朝一番にやるべきことを決める
  • 時間割に従って仕事と私事を分ける

決まったルーティンを習慣化すると、余計な思考をしなくて済むようになり集中しやすくなります。

新しい習慣を身につけるには、とにかく小さく始めることです。「朝5時に起きる」という習慣が身についたら「朝一番にやるべきことを決める」というイメージで進めていきます。

短期的に見れば小さな変化ですが、長期的な視点で見ると集中力の維持具合が大きく変わっているはずです。また、良い習慣を身につけられると自信にも繋がります。

集中力を維持するには裏技的なテクニックではなく、根本的に自分を見直すことも考えてみてください。

まとめ:一人でも集中できるスイッチをもとう

リモートワークで集中できない原因と対処法を解説しました。

仕事をしていく中で、どうしても集中できない時は出てくるものです。しかし「どれだけ早く集中モードに戻れるか」は、経験や作業環境によって変えられます。

部屋を仕事に適した環境にすることで、気が散る原因を最小限にできるでしょう。

根本から集中できない自分を変えたいと思うなら、習慣を改善するのがおすすめです。不要な習慣をアンインストールして、良い習慣をインストールすれば、新しい自分に出会えます。

ぜひ、今回紹介した方法を試しつつ、リモートワークに集中できない自分から脱却してみてくださいね。