デジタルカメラの登場とGPS(衛星測位)技術の進歩によって、カメラで撮影した写真に「位置情報」をつけ、それをスマホやパソコンの専用ソフトや写真アプリで地図上に表示させることが手軽にできるようになりました。それによって、旅行や登山の楽しみが増え、写真を撮った場所を振り返ることができるようになりました。

けれども、このようにスマホやパソコンなど、自分の持っているデバイスだけで位置情報つきの写真を楽しむだけでは、もったいないような気もします。もし、自分の撮った写真をGoogleマイマップ上に表示させ、これを友人と共有したり、Webサイトにコードを埋め込むことによって公開したりできるならば、その活用範囲は飛躍的に広がるのではないでしょうか。

さらに、GPS機能のついたスマホやコンパクトデジタルカメラではなく、GPS機能のついていない高級一眼レフカメラやミラーレスカメラで撮った写真に、一緒に携行したスマホの位置情報を使って「ジオタグ」を追記してGoogleマイマップ上に撮影ルートと一緒に表示できるとしたらどうでしょうか。実は、お手持ちのスマホとパソコンにいくつかのアプリを入れるだけで、それが可能になるのです。

本記事では、写真愛好家の方ならきっとマスターしたくなるような、こうした驚きのテクニックをご紹介したいと思います。

GPS機能とは

最近のスマートフォンには、ほとんど例外なくGPS(位置情報)の機能がついています。GPSとは、Global Positioning System(全地球測位システム)のことです。アメリカ合衆国などが打ち上げた約30個のGPS衛星のうち数個以上から発せられる信号を使うと、受信者の位置を正確に知ることが出来ます。1995年頃から民間用でも使用が開始され、現在ではスマートフォンやカーナビを初め、多くの機器にGPSが搭載されています。当初は航空機、船舶、測量、登山用などに利用されていましたが、現在ではカーナビ、スマートフォン、各種携帯端末、デジタルカメラなどに搭載されて、位置情報を使った多くの用途に利用されています。

本記事では、スマートフォンに搭載されているGPS機能を使って、デジタルカメラで撮影した写真にジオタグ(GPS位置情報)をつけ、GPSロガーで記録した撮影ルートと一緒にGoogleマップに表示する方法をご紹介したいと思います。その際の注意点についても合わせて考えます。

GPS機能つきデジタルカメラ

iPhone、Androidなどのスマートフォンには、最初からGPS機能がついています。ただし、設定でGPS機能(位置情報)のオン、オフを切り替えることができます。スマホのカメラでは、位置情報を「オン」にしておくと、撮影した写真には、撮影場所の位置情報がExif情報の一つとして記録されます。スマホで位置情報つきの写真を撮っていると、標準の「写真」アプリで、場所別の写真アルバムなどに自動的に整理して表示してくれるので便利ですね。「ああ、あの写真はあそこで撮ったんだ」など、過去の思い出を振り返ることができます。

デジタルカメラでも、最近のコンパクトデジタルカメラ(コンデジ)の多くの機種には、GPS機能がついています。これらのカメラでは、写真を撮ると、一枚一枚の写真にExif情報に加えて位置情報が記録されますので、付属のソフトを使えば、マップ上に撮影した場所に写真のサムネイルを表示させることができるものが少なくありません。

スマホをGPSロガーにする方法(アプリの紹介)

スマホの位置情報の用途としてもう一つ便利なのは、「GPSロガー」としての利用です。
人や物の移動経路をGPSの計測によって正確に捕捉し、表示することができるので、カーナビのルート案内、徘徊者の見守り、素行調査、登山者やランナーの記録、写真ロケの撮影ルート記録など、多様な用途に応用することができます。ここでは、とくに写真撮影ロケのルート測定に便利なGPSロガーアプリを紹介したいと思います。

iPhoneのGPSロガーとしては、「ルートヒストリー」と「myTracks」がおすすめです。「ルートヒストリー」はAndroidにも同様のアプリがあり、使い方はiPhoneとほぼ同じなので、以下ではiPhone用の2種類のGPSロガーを紹介します。

実際の使用例としては、愛媛県松山市の道後公園から道後温泉にかけてのエリアで、デジタルカメラで写真を撮りながら散策したときのデータを用いることにします。

ルートヒストリー

使い方は非常に簡単です。画面右下の+マークをタップします。すると、現在地の地図が表示されますから、出発点に立ったら右下の「開始」ボタンをタップします。その瞬間からルートデータの記録が始まります。最終目的地に着いたら、左側の「終了」ボタンをタップすれば、一連のルート情報がログとして記録されます。


最初の画面に戻ると、ログの記録が表示されています。ここをタップすると、記録したルートのログ(記録)が地図上に表示されています。(S)が出発点、(G)が到着点を示しています。道に沿って、きれいなルートマップができました。スマホの画面を指でスワイプすれば、地図の拡大、縮小、移動が自由に行えます。


記録したデータをエクスポートするときは、画面上部にある↑のマークをタップします。

すると、下部に出力先の選択画面が表示されます。ファイルの形で出力するときは、「Export」を選択します。出力ファイルの種類を聞いてくるので、ふつうは「GPX」を選択します。


このあと、ファイルの出力先を指定して、ファイルを取り出します。

myTracks

myTracksもGPSロガーアプリの一つですが、iPhoneとMac PCのどちらにも対応しているので、iPhoneで作成したGPSログデータをiCloudを介して同期できるところが便利です。使い方は「ルートヒストリー」とだいたい同じです。計測が終わって、ログデータを地図上に表示させると、下のようになっています。「ルートヒストリー」に比べると、ルートからのズレがやや大きくなっているようにも見えます。

スマホの写真をルートつきでGoogleマップに表示する

上の方法でGPSルート情報をGPXファイルやKMLファイルの形に出力することができれば、これをGoogleマイマップにインポートして、マイマップ上に表示させることができます。それだけではなく、ルート上の任意の地点で撮影した写真を、地図上で正確に表示させることもできます。そのためには、撮影した写真をいったん「Googleフォト」または「Googleドライブ」の共有アルバムとして登録する必要があります。ここでは、より一般的なGoogleフォトのアルバムを経由してGoogleマイマップにインポートする方法を紹介します。

GoogleフォトとGoogleマイマップの併用

Googleフォトというのは、パソコンやスマホなどにある写真をクラウド上に保管し、共有してくれるツールの一つです。写真を無制限に保管してくれるので、人気があります。Googleアカウントで登録しておくと、PC、タブレット、スマホなど複数のデバイス間で写真や動画を共有したり同期させることができます。

Googleマイマップに写真や動画をインポートする場合にも、Googleフォトのこうした機能を使うことができます。そのために、ルート上で撮影したスマホの写真(位置情報つき)をGoogleフォトの新規共有アルバムに入れて保存します。

次に、パソコンのGoogleマイマップを立ち上げて、左上のメニューから「マイプレイス」→「マイマップ」→「地図を作成」とすると、「無題の地図」画面が表示されます。マイマップの作り方の説明は、次の記事をごらんください。

ここで、「無題のレイヤ」の下にある「インポート」をクリックすると、「インポートするファイルの選択」という画面が表示されますから「アップロード」欄に「ルートヒストリー」または「myTracks」で作成したGPSロガーの記録ファイル(GPXまたはKML形式)をドラッグしてアップロードします。これでマイマップ上に、スマホで計測したGPSログの軌跡が表示されます。

次に、「レイヤを追加」をクリックして、新しいレイヤ上に撮影した写真のマーカーを作成します。再び「インポート」をクリックし、今度は「フォトアルバム」のタブをクリックして、表示されたGoogleフォトの中からスマホで撮影した写真のアルバムを選択します。すると、撮影した写真のサムネイルが、撮影地点できちんとルート上に表示されます。サムネイルをクリックすると、ポップアップ画面が表示されて、撮影地点のタイトル(道後温泉駅前など)と住所、リンクが表れますので、さらに詳しい情報を得ることができます。

GPS機能のないカメラで撮った写真にジオタグをつける

位置情報つきの写真を撮れるスマホの場合には、簡単にサムネイルつきGoogleマイマップを作成できましたが、位置情報のつかない(GPS機能のない)高級一眼レフやミラーレスカメラの場合にはどうでしょうか。

これについては、NIKON、CANONなど主要なカメラメーカーでは、位置情報を自動的につけてくれるスマホ用アプリを用意しているようです。専用アプリを使えば、撮影した写真に位置情報を追加し、専用地図アプリ上に写真をサムネイルで表示することができるでしょう。

SONY:
https://support.d-imaging.sony.co.jp/app/iemobile/ja/instruction/2_1_location.php
CANON:
https://cweb.canon.jp/eos/lineup/r/feature-communication.html
NIKON:
https://www.nikon-image.com/products/software_app/lineup/snapbridge/

ただし、各社ともこの機能に対応する機種は限定されているようです。実際には、こうしたメーカーの提供するツールを使わずとも、GPXやKLMなどのGPSログデータがあれば、パソコン上でジオタグ(位置情報データ)を付与することにより、GPS機能付きカメラで撮影したのとほぼ同等の写真データを作成することができます。以下では、その実際例を説明しましょう。

ジオタグをつけるアプリ

1枚の写真にExif情報だけしかついていなくても、撮影時に携帯したスマホにGPSロガーで位置情報のログファイルを作成しておけば、この二つを照合することによって写真撮影時の場所情報を割り出して、Exif情報に撮影場所の位置情報をあとから追加することができるはずです。

それを可能にするのが、Macでは「myTracks」、Windowsでは「GeoSetter」というアプリです。有料ながら使い方が簡単なMac用のmyTracksを使って、写真にジオタグをつける方法を説明します。

myTracksを起動したら、「ファイル」→「GPX(またはKML)を読み込む」を選択し、スマホのGPSロガーアプリで記録したルート(位置)情報をmyTracksの編集画面に読み込みます。このファイルには、写真のExif情報と照合するための位置&時間情報がすべて含まれています。

次に、デジタルカメラで撮影した写真をmyTracksに読み込みます。これには、GPSロガーで記録された位置情報と照合するための撮影日時の情報が含まれています。

続いて、「バッチ処理を開始」ボタンを押すと、読み込んだすべての写真にジオタグ(位置情報)が書き込まれます。

これで、デジタルカメラの写真にジオタグがつき、これをGoogleフォトの共有アルバムとして保存し、Googleマイマップにルートファイルと一緒に読み込めば、写真つきのマイマップができるはずです。

ジオタグとGPSロガーの同期失敗例(原因と対策)

ところが、ジオタグをつけた写真と、スマホで計測したGPSロガーデータをGoogleマイマップに読み込ませたところ、実際に撮影した写真の場所と、マイマップ上に表示されたルートの位置とがかなりずれていることがわかりました。よく調べてみたところ、これはスマホの時計とデジカメの時計が約3分ほどずれていたために生じたずれであることがわかりました。

今回のようにスマホのGPS機能とデジタルカメラのExif(日時)をマッチングすることによって写真にジオタグを正しく追加する場合には、スマホとデジタルカメラの設定日時が正確に同期されていることが要求されます。ですから、GPSロギングを開始する前に、必ず両方の時計をきちんと合わせるという作業をしなくては、今回のような失敗を招くことになります。

正しく時計合わせを行ったあと、再びGoogleマイマップにルート情報とジオタグをつけた写真を読み込んでみたところ、今度は正しい位置に正しい写真を表示させることに成功しました。

記録したルートと写真の共有と公開

カメラメーカーで提供しているアプリは、写真にジオタグをつけるところで終わっていますが、これでは自分で写真入りの地図を楽しむだけで終わります。けれども、上にみたように、Googleマイマップに撮影ルートと写真を表示することができたら、ぜひともこのマイマップを家族や友人と共有し、さらには一般の人々に公開したいものです。

Googleマイマップでの共有

ルートと写真入りのGoogleマイマップができたら、マイマップ画面の左上にある  マークをクリックして、共有の設定をしましょう。友人などと共有したいときは、「このリンクを知っている人なら誰でも表示できる」をオンにして、友達にリンク先のアドレスを教えてあげましょう。

Googleマイマップの埋め込みと公開

写真入りのマイマップをWordPressなどのウェブサイトに載せて公開したいという場合には、上の画像の2番目と3番目の「公開」オプションをオンにした上で、マイマップ画面の地図タイトル右の3点メニューを開き、「自分のサイトに埋め込む」を選びます。

「この地図を埋め込む」というサブ画面に埋め込みコード(<iframe> …. </iframe>)が表示されますから、これをコピーして、WordPressページにペーストすれば、下のリンクページに示す例のように、ウェブサイト上に自分の作った写真入りの地図を表示することができます。旅行、登山、観光案内などのウェブページがいっそう楽しいものになるでしょう。

https://medialabo.info/reference/?p=115

個人情報に関する注意事項

スマートフォンやデジカメについている位置情報(ジオタグ)は、撮影地点に関する情報を表示することを可能にするので、旅行の思い出作りや観光ガイドの作成、ストアの案内など多様な用途に威力を発揮してくれます。けれども、こうした位置情報には、住所等プライバシーに関わる個人情報が含まれていることがあり、公開にあたっては十分な注意を払うことが必要です。

例えば、もしGPSロガーで記録したルートの出発点や到着点に自宅が含まれている場合には、マイマップの編集画面やmyTracksなどの編集ソフトを用いて、ルートから自宅を外して分からないように編集するといった配慮が求められます。また、ジオタグのついた写真の場合には、myTraksやスマホのアプリを用いて、自宅が見えるなどといった写真からジオタグ(位置情報)を消去することができます。

まとめ

いかがでしょうか。スマートフォンにはGPS機能がついており、位置情報がオンの状態で撮った写真には、撮影場所を示すジオタグがついています。これを用いて写真アプリで場所別の写真整理をしたり、場所の思い出を振り返ることができるようになりました。

また、GPSロガーアプリで撮影ルートを記録することによって、Googleマイマップにルートを表示させ、さらにはGoogleフォトアルバムを介して、地図のルート上に写真を配置、表示させることが簡単にできます。高級一眼レフやミラーレスカメラなど、GPS機能のついていないデジタルカメラであっても、スマートフォンをGPSロガー代わりに使うことによって、スマホの写真と同様に、1枚1枚の写真にジオタグをつけることによって、Googleマイマップ上にルートと一緒に高画質の写真を表示させることができるのです。

ただし、写真の位置情報には、自宅の住所につながる個人情報が含まれている場合もあるので、こうした位置情報はアプリやソフトを使って削除するなど、きめ細かいプライバシー対策を施すことも必要です。

合わせて読みたいGoogleマップの関連記事

第1回 :GoogleマップをWordPressサイトに埋め込む方法
第2回 :リッチなコンテンツを地図上に表示できるWordPressプラグイン「WP Google Maps」
第3回 :「Googleマイマップ」でオリジナル地図を作成する方法
第4回 :「Googleマイマップ」で位置情報つきのルートと写真を表示する方法(当記事)