トピッククラスター(topic cluster)と呼ばれる概念がSEOにはあります。

トピックは話題、クラスターは群れ、集まりという意味。トピッククラスターを直訳すると「話題の集まり」となり、SEOにおいては以下のような手法を指します。

あるトピック(キーワード)に関連するコンテンツを網羅的に用意することで、そのトピックに対する専門性のシグナルを強化し、単体のビッグキーワード・ミドルキーワードやその周辺のロングテールキーワードでの上位表示を目指す。

例えば、「アフィリエイト」というキーワードで上位表示を目指す場合、アフィリエイトに関連する様々なトピックでコンテンツを作成し、アフィリエイトというトピックに関する専門性をサイト全体で高めていきます。

トピッククラスターのイメージ

ある特定のトピックに関する専門的なコンテンツが多く掲載されているサイトはユーザーからもGoogleからも支持されやすいため、あるトピック(キーワード)に関連するコンテンツを網羅的に用意するというトピッククラスターの考え方は十分に有用だといえます。

ただし、誤った方法でトピッククラスターを実践すると効果が出ないどころか、サイト全体に悪影響を与えるリスクもあります。以下では、トピッククラスターを実践しているであろうサイトで散見される誤った手法の問題点について指摘し、本来あるべき正しいトピッククラスターの実践方法をお伝えします。

誤ったトピッククラスターの手法

誤ったトピッククラスターはウェブサイトに有害になる可能性があります。これから挙げる手法は注意が必要です。

関連キーワードに偏った低品質コンテンツの量産

ツールで抽出した関連キーワードを起点にコンテンツを雑に量産するやり方です。

  • 軸となるキーワードを決める
  • 軸キーワードの関連キーワードをツールで抽出する
  • 検索数の多い関連キーワードを雑にピックアップする
  • キーワードで検索した際の上位記事の要素を抜き出して記事構成を作る
  • クラウドソーシングの安価なライターに記事を書かせる

一昔前であれば、関連キーワードを基に片っ端からコンテンツを量産する手法がある程度通用していました。キーワードをさほど精査せずとも、またコンテンツの品質を追求せずとも、それなりの数が揃っていればGoogleに評価されていたのですが、そのような手法を採用していたサイトの多くは現在、流入を落としています。

キーワードを起点にした低品質コンテンツの量産はGoogleも問題視しており、細かなアルゴリズムの調整や定期的なコアアップデートの実施でそれらのコンテンツの淘汰を進めています。2022年8月に発表された「helpful content update(お役立ちコンテンツアップデート)」もその流れを汲んでおり、アップデートを告知した公式ブログでは以下のように言及されていました。

Are you producing lots of content on different topics in hopes that some of it might perform well in search results?(検索結果で上位表示されることを期待して、さまざまなトピックのコンテンツを量産していないか?)

出典: What creators should know about Google’s helpful content update | Google Search Central Blog

「さまざまなトピックのコンテンツを量産」という言葉を見ると、トピッククラスターの概念そのものが否定されているような印象を受けるかもしれませんが、トピックに関連したコンテンツを数多く作ること自体は問題ではありません。Googleが真に問題視しているのは専門性や独自性に乏しい低品質なSEOコンテンツの量産です。

専門性や独自性、検索ユーザーの利便性が担保された高品質コンテンツを作るという前提であれば、トピッククラスターを実施によってサイトの評価が下がることはまずありません。

キーワードを雑に詰め込んで作られた読者不在のコンテンツ

トピッククラスターは一般的に、トピックに関連するコンテンツを一つずつ作成していきます。

旗艦ページ

それとは別に、トピックごとにコンテンツを分けるのではなく、1記事にすべてのトピックを詰め込んで網羅性を上げるというやり方もあります。

コンテンツを個別に作るのではなく、1つのページに集約させるこの手法はトピッククラスターの新しいトレンドでもあり、「従来のコンテンツ横展開型のトピッククラスターはもう古い!これからは1記事全集中型のコンテンツがGoogleに評価される」といった主張もSEO専門家界隈では見られます。

たしかに、ある程度の強さを持つドメインのサイト(例えば、大手企業)に、トピックを網羅した長文コンテンツを投下すれば上位表示しやすいのは事実です。2022年の執筆時点では、1記事に全てを詰め込むことがGoogleのSEO的には正解なのかもしれませんが、そのような手法で上位表示しているコンテンツを実際に見てみると、品質面で大きな問題があるケースが散見されます。

具体的なサイト名は伏せますが、一目見ただけで「ああ、ツールで引っ張ってきたキーワードを雑に突っ込んで作ったのか」と理解できるコンテンツがほとんどを占めています。トピックを乱雑に詰め込んだだけで、話の繫がり(論理)やストーリー性などは皆無。多くのトピックが無造作に並んでおり、正直、人が読むことを想定しているとは考え難いコンテンツでした。

想定ターゲットが曖昧(例:人事向けの面接見極めノウハウと学生向けの面接突破ノウハウが1記事に混在している)なコンテンツも多く、コンテンツを届けるべきユーザーの絞り込みやコンテンツで得たい結果といった要件定義は、恐らくされていないのでしょう。

実際の記事URLを貼るわけにもいきませんので、例として「アフィリエイト」というトピックにおけるNGコンテンツのイメージを以下に挙げてみました。

ダメなトピッククラスターの例

左の例はトピックを雑に詰め込みすぎていて、コンテンツの主題がまったく理解できません。アフィリエイトの概要なのか、具体的な進め方なのか、ASPやメルマガスタンドの説明なのか、トピックがあちらこちらに飛んでしまい、「で、結局何が言いたいのか?」という印象になります。
右の例は、商材を探しているアフィリエイター向けの内容と、アフィリエイト広告の出稿を検討している広告主向けの内容が混在しており、誰に向けて書いているのかが曖昧です。関連キーワード、トピックを何も考えずに配置するとこうなります。


ここまで、多くのサイトが陥りがちなトピッククラスターの誤りについて見てきました。

ツールで抽出した関連キーワードを基に低品質なSEOコンテンツを量産したり、1つのコンテンツに対して大量のトピックを無造作に詰め込んだりする手法はGoogleをハックするための小手先の手法に過ぎません。

低品質なSEOコンテンツの量産は確実に効果が薄まっていますし、大量のトピックを1コンテンツに詰め込む手法は今現在Googleが評価する傾向にあるというだけの話であり、将来的には全く逆の評価が下されるリスクもあります。これらの手法をトピッククラスターと称して実行した場合、サイト全体に悪影響を与える可能性が高いです。

では、本来あるべきトピッククラスターの実践方法とは、どのようなものなのか?次章で解説していきます。

「コンテンツ・マイルストーン」を使った
トピッククラスターの実践方法

これからご紹介するトピッククラスターの手法は、「コンテンツ・マイルストーン」と呼ばれる概念を基にしています。

マイルストーンとは、プロジェクトの進行管理でよく使われるもので、プロジェクト完遂に必要な中間地点のことを指します。最終的な目標達成に必要なタスクや目標を細分化して可視化することで、プロジェクトの全体像の把握と円滑な進行の助けになります。

そしてコンテンツ・マイルストーンとは、マイルストーンの概念をコンテンツマーケティングに適用したもの。「どのようなコンテンツを網羅していくべきか?」というプランニングに非常に役立つもので、トピッククラスターの実践と相性がいいのです。

コンテンツ・マイルストーンの概要と重要性

詳しい作り方は後述するとして、まずはコンテンツ・マイルストーンの大まかなイメージをお伝えします。

コンテンツ・マイルストーンでは、ターゲット(見込み客)の現状と理想の状態の2つをまず定義します(スタートとゴールを設定するイメージ)。

現状と理想

例えば「アフィリエイトで稼ぎたいけれど、何をすればいいのか検討もつかない」という現状があると仮定すると、理想は「アフィリエイトで収益化できた!」というものが考えられます。

このような現状と理想を描き出したら、その中間地点のステップを一つずつ設定していきます。

中間地点となるハードル

当然ですが、人は現状から理想に一気に到達できるわけではありません。現状と理想の間には、必ずいくつかのハードルや障壁が存在します。例として挙げたアフィリエイトでいえば、ブログのテーマを決めて、ASPで商品を選定して、サーバーやドメインの手続きを済ませて、WordPressをインストールして、記事を書いて・・・と、乗り越えるべきいくつかのハードルがあるはずです。

現状と理想、そしてその間にあるステップを書き出すことで、ターゲットに提供すべき情報を時系列で捉えることができ、どのようなトピックを用意すればいいのかが明確になります。初心者が上級者に成長するための道筋を示してあげるイメージです。

ちなみにこの「時系列」というのが重要なポイントです。ツールで抽出した関連キーワードを起点にしてトピックを網羅するやり方では、コンテンツを時系列で捉えることができません。なぜなら関連キーワードは所詮「点」に過ぎないからです。

キーワードは所詮、点に過ぎません。キーワードはユーザー行動の一部分を切り取ったものなので、そこだけにフォーカスしても、ユーザー行動の全体像を捉えることは難しいのです。そのキーワードの分野に関する背景知識がなければなおさらです。

検索数の多い関連キーワードで順々にコンテンツを作っても、それぞれのキーワードが線で繋がらないため、サイトのコンテンツはバラバラで雑多な印象になってしまいます。本来は、まずユーザー行動の全体像を描くことから始めなければいけません。

出典: 検索エンジン起点の低品質SEO記事は淘汰される。Googleの「helpful content update」の概要と対策 | ワードプレステーマTCD

キーワードはあくまで点ですが、実際のユーザーの行動は線です。「この悩み・欲求がまずあって、それを解消したら次はこの課題が出てきて、それを解決したら次は・・・」といったように前後の課題や欲求が連動しているものなので、そのような全体像・時系列を意識してコンテンツのトピックをプランニングする必要があります。検索キーワード起点ではここの視点が欠落しやすいのが問題です。

ターゲットの現状と理想、その間に存在する各種ステップを意識せず、単に検索数の多い関連キーワードを見つけてコンテンツのトピックを決めるやり方では、それぞれのコンテンツはただの点にしか過ぎず、決して線にはなりません。バラバラなのです。そのような状態ではサイトのベネフィットが直観的に伝わらず、「なんか雑多なコンテンツがいっぱいあるなぁ・・・」という印象になってしまいます。

一方、マイルストーンに沿った線で繋がったコンテンツが網羅されているサイトであれば、「ここでなら問題が解決できる!」という直感をターゲットに与えることができます。現状から理想までの道のりが示されていて、何を学び、どのような行動を取ればいいのかが明確だからです。

TCDの「WordPress使い方大全集」のページはそのようにして作られた例です。

WordPress大全集

初心者がWordPressの知識を得て、WordPressを使ってサイトを構築・運用するまでの手順・道のりが示されており、コンテンツ・マイルストーンの理論を基にしたトピッククラスターの実践例として参考になるかと思います。

コンテンツ・マイルストーンの作り方

ここからは、コンテンツ・マイルストーンを作成する手順を解説していきます。

ステップ1.現状と理想を書き出す

まずは、ユーザーの現状と理想を設定します。

現状と理想を書き出す

上の例では、「アフィリエイトを始めたいけど、何をすればいいのかわからない」という状態と、「アフィリエイトで稼げた!もっと収益を伸ばすためにビジネスを拡大しよう」という理想を設定しています。

あくまでターゲットにとっての理想の状態(ゴール)を考えることが重要なので、サイトの運営者目線でゴールを設定しないよう注意してください。

例えば、転職エージェントへの送客が目的のアフィリエイトサイトを運営していたとします。この場合、サイト運営者のゴールはターゲットにアフィリエイトリンクを踏ませて転職エージェントに登録させることですが、ターゲットのゴールはそこではありません。転職先が無事決まり、転職先の企業でもバリバリ活躍できている状態になることが理想でありゴールのはずです。

したがって、そこを理想の状態に設定し、ターゲットが理想の状態に至るまでの道のりをサポートできるコンテンツも用意しなければいけません。運営者目線で考えると「比較」「選び方」といったコンバージョンに近いごくごく一部のコンテンツに偏り、トピッククラスターの実践が難しくなります。

ステップ2. 現状と理想の間のハードル(課題)を書き出す

ターゲットの現状と理想を可視化したら、次は現状と理想の間に立ちふさがる障壁を設定します。スタートとゴールの間の中間地点を決めるイメージです。

中間地点を書き出す

ここでのポイントは、ある程度抽象化して考えることです。あまり細かくハードルを書き出すとキリがないため、最大公約数的なハードル(多くの人が共通して抱えるであろうハードル)を設定することをおすすめします。

ステップ3. それぞれのハードルに対応するトピックを書き出す

最後に、ハードルを乗り越えるために必要なトピックをそれぞれ書き出していけば、コンテンツ・マイルストーンが完成します。

コンテンツ・マイルストーンの完成系

これで、ユーザーにとって必要なコンテンツを網羅したサイトを構築できます。トピッククラスターの実践方法の一つとして、参考にしていただければ幸いです。

まとめ

ここまで、トピッククラスターの概要や世の中でおこなわれている手法の問題点、コンテンツ・マイルストーンを基にしたトピッククラスターの実践方法を解説してきました。

特定のトピックに関連するコンテンツを網羅的に用意するというトピッククラスターの概念自体は非常に有用なものです。ただし、関連キーワードを起点に低品質コンテンツを量産したり、1記事に大量のトピックを無造作に詰め込んだりといった安易な方法はサイトに悪影響を及ぼすリスクがありますので、注意してください。

今回お伝えした、コンテンツ・マイルストーンの考え方を基にしたトピッククラスターは、今この瞬間Googleに評価されることを主眼としたものではありません。ユーザーにとって有益なサイトを作るための本質的かつ普遍的なノウハウなので、この先ずっと活用できるものです。すぐに廃れるものではないので、安心して実践していただければと思います。