2022年8月18日、Googleは新たなアップデートの実施を告知しました。

詳細: What creators should know about Google’s helpful content update | Google Search Central Blog

アップデートの名前は「helpful content update」。日本語に訳せば「お役立ちコンテンツアップデート」となり、ユーザーにとって有益なオリジナルコンテンツの評価を上げるための取り組みの一環です。
このアップデートにより、ユーザーのためではなく検索エンジンのために作られた役に立たない低品質コンテンツが中心のサイトは、検索順位を落とすと予想されます。

この記事では、「helpful content update」の概要やGoogleが提示するコンテンツ作成のガイドラインをご紹介します。コンテンツ作成の本来あるべき姿を見つめ直すキッカケになれば幸いです。

「helpful content update」とは?

「helpful content update」は英語圏で実施が予定されているアップデートです。

価値の低いコンテンツや付加価値のないコンテンツ、検索ユーザーにとって有益でないコンテンツを自動的に識別し、そのような低品質コンテンツを多く内包しているサイトの評価を下げるとされています。低品質コンテンツ単体の評価のみを下げるのではなく、サイト全体の評価を下げる点が特徴的です。

このアップデートにより、SEOキーワード起点でコンテンツ内容を企画し、安価なライターをクラウドソーシングで囲って記事を量産してきたサイトは致命的な影響を受ける可能性があります。

This ranking update will help make sure that unoriginal, low quality content doesn’t rank highly in Search, and our testing has found it will especially improve results related to online education, as well as arts and entertainment, shopping and tech-related content.(このランキングアップデートは、オリジナリティのない低品質なコンテンツが検索上位に表示されないようにするもので、当社のテストでは、オンライン教育、芸術・娯楽、ショッピング、技術関連のコンテンツに関する結果を特に改善することがわかっています。)

出典: More content by people, for people in Search

Googleが実施したテストでは、オンライン教育、芸術・娯楽、ショッピング、技術関連のコンテンツに関する検索結果が特に改善されたとのこと。

具体的なデータは公開されていないので憶測にはなりますが、例えばショッピングの分野では、「おすすめのアイテム〇〇〇選!」のようなコンテンツが標的にされる可能性は高いです。

あなたも一度は目にしたことがあると思いますが、40選や50選、極端なものになると130選など、大量の商品を紹介するのですが、そうしたコンテンツの大半は実際に商品を使ったことがないライターによって書かれたものであり、商品購入の助けになる有益なレビューを内包していません。

他の同じようなコンテンツを模倣しつつ、「あの上位記事が50選なら、こっちは60選で行こう。それなら文字数や網羅性で勝てるでしょ」という安易な思考で作られています(全てとは言いませんが、大半がそうです)。検索ユーザーの利便性や有益性は一切考慮されておらず、Googleにいかに評価されるかという視点に偏っているわけです。

同じような商品を、同じような写真を使って、同じような定型文で無難に紹介する。そのようなコンテンツはユーザーにとっては全く役に立ちませんし(商品の公式サイト以上の情報 = 付加価値がない)、そもそも50選、100選と大量の商品を提示されても選択肢が多すぎて選べません。

このようなコンテンツはGoogleが言うところの「オリジナリティのない低品質なコンテンツ」であり、今回のアップデートが日本でも適用されれば、恐らく順位を落とすことになるでしょう。そして代わりに、実際に商品の使用経験がある書き手による詳細なレビューを内包したオリジナルコンテンツが、より多く検索で露出することになるはずです。

ちなみに、Googleがテストを実施して高い効果を得たのはオンライン教育、芸術・娯楽、ショッピング、技術関連の4分野ですが、だからといって「自分のサイトはそれらに該当しないから大丈夫」ということにはなりません。あくまで上記4分野で特に高い改善効果が見られたという話であり、今回の「helpful content update」がそれら4分野にしか適用されないという話では必ずしもありません。

どの分野にまで適用されるのか、あるいは日本でも展開されるのか、という部分は現時点(2022年8月)では見えませんが、オリジナリティに乏しいSEO記事をGoogleが消しにかかっているのは明白であり、今後も同種のアップデートは継続して展開されていくはずです。「今はまだ大丈夫」という考えは捨て、Googleが目指す方向性を理解し、価値あるコンテンツの作成に向き合う必要があります。

では、価値あるコンテンツとは具体的にどのようなものを指すのか? どのような考えでコンテンツ作成に向き合えばいいのか?

「helpful content update」への本質的な対策を、次章以降でご紹介します。

POINT1. 人間にフォーカスしてコンテンツを作る

Googleは常に人間のユーザーにフォーカスしたコンテンツ作成を推奨しています。
今回のアップデートの発表に関するブログ記事『What creators should know about Google’s helpful content update』でも、以下の6ポイントが紹介されていました。

  • Do you have an existing or intended audience for your business or site that would find the content useful if they came directly to you?
  • Does your content clearly demonstrate first-hand expertise and a depth of knowledge (for example, expertise that comes from having actually used a product or service, or visiting a place)?
  • Does your site have a primary purpose or focus?
  • After reading your content, will someone leave feeling they’ve learned enough about a topic to help achieve their goal?
  • Will someone reading your content leave feeling like they’ve had a satisfying experience?
  • Are you keeping in mind our guidance for core updates and for product reviews?

出典: What creators should know about Google’s helpful content update | Google Search Central Blog

以下、日本語訳です。

  • サイトには訪問者が存在するか? 訪問者が有用だと思うコンテンツがあるか?
  • コンテンツは誰が読んでも専門性や知識の深さを感じ取れるものか?
  • 明確な目的や意図を持ってサイトを運営しているか?
  • コンテンツを読んだ人は、自身の目標達成に役立つ十分な知識を得たと感じるか?
  • コンテンツを読んだ人は、満足のいく体験ができたと感じるか?
  • コアアップデートや製品レビューのガイダンスに留意してコンテンツを作っているか?

サイトの有用性やユーザーの利便性、コンテンツの専門性について主に言及されています。上記の内容を受けて、「helpful content update」への対策を以下にまとめました。対策といっても、テクニック的な話ではなく、コンテンツ作成やサイト運営に対する姿勢の話が中心です。

ファンやリピーターを生み出すコンテンツを作る

コンテンツは、熱心なファンやリピーターを生み出すために作るものです。

ファンやリピーターを生まないのなら、そのコンテンツは一見客を連れてくるだけの置物に過ぎません。Googleに評価されることだけを目的に作られたSEO記事は人間が見れば「つまらない、役に立たない」という感想しか出てこず、決してユーザーを魅了することはありません。

「この著者が書いた記事をもっと見てみたい」「もう一度このサイトに訪問したい」といった気が起こらないため新規ユーザーがファンやリピーターになることはなく、ただひたすら一見客を集め続けるだけの状態になります。

ユーザーを魅了するコンテンツがなく、ファンやリピーターを生まないのなら、検索から人を集めても意味がないということです。

その意味でも、検索エンジンのアルゴリズムを意識するのではなく、人間のユーザーが読んだときに面白いと感じてもらえるか、満足のいく体験ができたと感じてもらえるか、といった点を意識してコンテンツを作る必要があります。

ファンやリピーターを生み出すための面白く有益なコンテンツを作る方法については以下の記事で具体的なノウハウを紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。

専門性や深みを感じられるコンテンツを作る

専門的な知識と経験に基づいた深みのあるコンテンツであれば、それを読むユーザーにはコンテンツの専門性の高さが必ず伝わるものです。

専門的な知見と経験、それらに基づく深い洞察や的確なアドバイスなどが盛り込まれたコンテンツは、一般論をそれっぽくまとめただけの浅いコンテンツと比べて高い価値を感じてもらえますし、権威を示しユーザーからの信頼を獲得することにも貢献します。

世の中には「SEO記事は初心者が読むものだから、一般論をわかりやすくまとめるのが大事」という主張もありますが、たとえ読み手が初心者であっても、ありきたりな一般論を淡々と展開されれば「つまらない」「退屈」「役に立たなそう」と感じるのが普通です。
初心者向けのコンテンツを作ること自体は問題ありませんが、専門性や知識の深さのレベルを落としてはいけません。コンテンツの価値が途端に下がります。

専門用語への補足や平易な言葉への言い換え、丁寧な論理展開(コンテンツのわかりやすさのノウハウはこちらを参照)といった配慮をおこなえば、高い専門性を維持しつつ初心者でも理解できるコンテンツに仕上げることは十分に可能なので、ありきたりな一般論でコンテンツを構成する必要はないのです。

サイト運営の目的を明確化する

なぜ、サイトを運営するのか? なぜ、コンテンツを作るのか?

その目的は明確になっているでしょうか。「そんなの、SEOで検索流入を獲得するためだよ」という答えが返ってくるかもしれませんが、SEOは目的ではなく集客の一手段に過ぎません。サイト運営やコンテンツ作成の目的とは、そのような局所的なものではなく、もっと大局的なものです。

わかりやすい言葉を使えばサイトコンセプトのようなものでしょうか。「このサイトは何を目的に運営しているのか? 誰の、どのような課題を解決するためにコンテンツが存在するのか?」といったことを言語化したものがサイトコンセプトであり、企業の経営理念、ミッション・ビジョンのようなものだとイメージしてください。

「誰に、どのような価値を、どのような切り口で届けるのか?」というコンセプトが不在なままサイトを運営すると、必然的に「文字数は5000文字以上。狙うキーワードはこれ。参考にする競合サイトはここ。」といったように、SEO視点に偏ったやり方でオリジナリティに乏しい無味乾燥なコンテンツが量産される結果になります。
そのような事態を防ぐためにも、以下のようなフレームワークに沿ってサイトのコンセプトを明確にする必要があります。

このサイトは、〇〇〇〇〇〇(特定の悩みや課題を抱えるターゲット)のために、〇〇〇〇〇〇(そのサイト独自のノウハウや考え)を伝えることによって、〇〇〇〇〇〇(ターゲットの願望や欲求、欲しい結果)を得るためのサポートをするために存在します。

このフレームワークに沿って作成したコンセプトが、そのままサイト運営やコンテンツ作成の目的になります。目的が明確になれば、コンテンツで訴求すべき主題(メッセージ)や届けるべき価値に独自の一貫した軸が出来上がり、ユーザーに対して独自の価値を提供しやすくなります。

結果として、何のメッセージも持たない、誰に対して語っているのかもわからない、そのような低品質なSEO記事の量産を抑制できるでしょう。

Googleの目指す方向性を理解する

Google検索のアルゴリズムを攻略する方法を探し出す努力は無駄なものですが、Googleが目指す方向性、実現したい世界を理解することは、価値あるコンテンツの作成に役立ちます。

もちろん、検索で(一時的にであれ)上位表示することだけが目的なら、アルゴリズムの抜け道を熱心に研究したほうが効率的かもしれませんが、過去の歴史が証明するように、それでは長続きしませんし、何よりサイトの実質的な価値は何一つ向上しません。

Googleは一貫してユーザーファーストのコンテンツ作成やサイト運営を推奨しており、Googleが示す具体的アドバイスの多くはユーザーファーストの思想が根底にあります。それを綺麗事だと笑ったり無視したりする人もいるかもしれませんが、個人的にはGoogleが提唱する各種アドバイスは極めて真っ当かつ効果的なものであると感じています。長期的に持続するサイトを運営したいなら、従う価値があるものです。

最低でも、以下の2記事はブックマークし、常に参照できるようにしておくことをおすすめします。

>> How To Write Product Reviews | Google Search Central | Documentation
こちらは優れた商品レビュー記事を書くためのガイドラインです。特にアフィリエイターの場合、こちらの記事のアドバイスを忠実に実行すれば集客・売上に大きなインパクトがあるはずです。

>> What site owners should know about Google’s core updates | Google Search Central Blog
こちらはコアアップデートに対する向き合い方を説明したガイドラインです。コアアップデート後は検索順位の変動が起こりますが、それに対して小手先の改善策を講じるのではなく、優れたコンテンツの作成に集中すべきと説かれています。コンテンツ品質を自己判断するための質問リストも紹介されており、コンテンツ作成後の見直しにも役立ちます。

POINT2. 検索エンジンのためのコンテンツ作成は避ける

Googleは検索エンジンのためのコンテンツ作りを避けるよう以前から訴え続けており、『What creators should know about Google’s helpful content update』の記事でも、以下の9ポイントを避けるべきと提言されていました。

  • Is the content primarily to attract people from search engines, rather than made for humans?
  • Are you producing lots of content on different topics in hopes that some of it might perform well in search results?
  • Are you using extensive automation to produce content on many topics?
  • Are you mainly summarizing what others have to say without adding much value?
  • Are you writing about things simply because they seem trending and not because you’d write about them otherwise for your existing audience?
  • Does your content leave readers feeling like they need to search again to get better information from other sources?
  • Are you writing to a particular word count because you’ve heard or read that Google has a preferred word count? (No, we don’t).
  • Did you decide to enter some niche topic area without any real expertise, but instead mainly because you thought you’d get search traffic?
  • Does your content promise to answer a question that actually has no answer, such as suggesting there’s a release date for a product, movie, or TV show when one isn’t confirmed?

出典: What creators should know about Google’s helpful content update | Google Search Central Blog

以下、日本語訳です。

  • コンテンツは人間向けに作られたものではなく、検索エンジンから人々を引きつけるためのものではないか?
  • 検索結果で上位表示されることを期待して、さまざまなトピックのコンテンツを量産していないか?
  • 多くのトピックに関するコンテンツを作成するために、大規模な自動化を使用していないか?
  • 他人のコンテンツの内容を要約しただけの付加価値のないコンテンツになっていないか?
  • 単にトレンドになりそうだからという理由で書いていないか?
  • 他のソースからより良い情報を得るために、読者に再度検索させる負担を与えるコンテンツになっていないか?
  • Googleが好む文字数があるという噂から、特定の文字数で書いていないか?(そんなものはない)
  • 検索トラフィックが得られるという理由だけで、専門知識なしにニッチな分野に参入していないか?
  • 製品、映画、テレビ番組などの発売日・公開日が確定していないのに、その発売日・公開日を示唆するなど、実際には答えのない質問に答えることを約束したコンテンツになっていないか?

検索エンジンのために作られたコンテンツのやっかいな問題は、(大抵の場合一時的ではあるものの)効果が出てしまうケースがあることです。読者不在の長文コンテンツや関連キーワードを詰め込んだだけのコンテンツ、検索上位サイトのリライトなど、いずれも過去には猛威を奮っていましたし、何なら今でもキーワードによっては効果が出ます。

ただそれでも、検索エンジン起点のコンテンツ作成には多大なリスクと無駄があるため、基本的にはおすすめしません。以下、その理由をご紹介します。

Googleに媚びたコンテンツは無価値である

「今は〇〇〇すると上位表示するらしいから、そうしよう」という思考で作られたコンテンツは無価値である。そう決め付けることが優れたコンテンツ作成の第一歩です。

当たり前の話ですが、検索順位は日々変動します。そしてそれは我々には一切コントロールできません。Googleに媚びてGoogleに好かれるコンテンツを作って上位表示したとしても、Googleのアルゴリズムが変化したり大規模なアップデートが実施されたりすれば、一瞬で吹き飛ぶ可能性があります。今日1位だったコンテンツが明日も1位でいる保証はどこにもないのです。

そのような事実を鑑みれば、SEOのためだけに作られたコンテンツの存在意義は非常に怪しいものだと理解できるはずです。

あくまでGoogleに好かれるために作ったコンテンツなので、人間が見たら「つまらない」という感想しか出てこないのは明白であり、まず反応は得られませんし、SNSでのシェアやページのブックマークといった行動も引き出せません。検索から見せかけのアクセスを集めるだけの置物と化すわけです。検索順位が下がればその見せかけのアクセスすらなくなり、完全に無価値になります。

今はそれで検索順位が上がるからやる。という対応をしているのだとしても未来の資産を築いているとはいえない。検索エンジンに振り回されているWebサイト運用はもうすぐ通用しなくなる。そんな時代がすぐそこに来ている気がします。 (…)ユーザーに有益なコンテンツを独自性をもって育むということ。今からでも注目して取り組んでみてはどうでしょうか。

引用: オーソリティサイトの目指す方向は狭義の意味でのSEOではない | ワードプレステーマTCD

コンテンツは資産とよく言われますが、Googleに媚びたコンテンツは、未来の資産には決してなり得ません。人間のユーザーにとって有益なコンテンツを作ることに真剣に向き合う必要があります。

関連キーワードだけを起点にコンテンツを作ってはいけない

ツールで関連キーワードを大量に抽出して、検索数の多い関連キーワードで片っ端からコンテンツを作るという手法は(一時期に比べれば減った印象はあるものの)まだまだ横行しているように思います。

たしかに、この手法は楽ではあります。キーワードツールを使えばワンクリックで大量のキーワードが出てきますから、それらのキーワードを基にコンテンツのトピックを機械的に決めることができるからです。検索数の多さという定量的な指標も、上司や顧客を納得させるうえで役に立つことでしょう。

ただ、この手法が効果的かと問われれば、それは「No」という答えになります。なぜか? その理由は以下のとおりです。

  • 競合と同じようなコンテンツを作ることになる(競合の多くも検索数の多いキーワードでコンテンツを作っている)
  • 関連キーワード起点でコンテンツ内容を企画しても面白いコンテンツにはなりにくい
  • キーワードは所詮、点に過ぎない(連続したユーザー行動を捉えられない)

まず、競合とのバッティング。多くの競合もキーワードツールで抽出した検索数の多い関連キーワードでコンテンツを作っているため、扱うトピックやコンテンツの内容が似通ってしまいがちです。検索上位記事の内容を模倣するやり方を実践しているならなおさらです。
ビジネスやサイト運営の成功の鍵は「他との違い」にあるのですから、他と同じコンテンツを作っても意味がありません。

次に、関連キーワード起点でコンテンツを企画しても面白くはならないという問題があります。検索数の多い関連キーワードを選び、そのキーワードで検索した際の上位記事の傾向を分析し、上位記事の内容を踏襲しつつ多少の追加要素を加える。SEO記事の多くはこのようなフローで作られますが、これはGoogleの機械の関心を引くことはあっても、人間のユーザーの関心を引くことはありません。

本来であれば、常識を裏切る意外性や、他との違いを期待させる独自性、興味深い新情報を提供する新規性など、相手を惹きつける要素を基にコンテンツを企画すべきなのですが、関連キーワード起点ではこのあたりが完全に抜け落ちてしまいます。

そして、キーワードは所詮、点に過ぎません。キーワードはユーザー行動の一部分を切り取ったものなので、そこだけにフォーカスしても、ユーザー行動の全体像を捉えることは難しいのです。そのキーワードの分野に関する背景知識がなければなおさらです。

検索数の多い関連キーワードで順々にコンテンツを作っても、それぞれのキーワードが線で繋がらないため、サイトのコンテンツはバラバラで雑多な印象になってしまいます。本来は、まずユーザー行動の全体像を描くことから始めなければいけません。

例えば、「ブログを始めたい ⇒ WordPressというツールがあるらしい(どういう特徴があるの?) ⇒ WordPressでサイトを完成させる手順を知りたい ⇒ サイトの集客方法を知りたい ⇒収益を伸ばす方法を知りたい」といった形で、ユーザーの思考(行動)フローを設定し、それぞれのフェーズごとにユーザーが興味を持つであろうトピックを書き出します。そして、それぞれのトピックに適切な検索キーワードを当てはめていきます。

この方法であれば、連続するユーザー行動のすべてに対応するコンテンツを適切に用意できます。まずはユーザー行動ありきであって、関連キーワードありきではないのです。

自動化ツールは幻想である(魔法の薬はない)

コンテンツを手軽に楽して作るために自動化ツールの使用を検討しているなら、それは止めたほうがいいでしょう。自動化ツールにより作成されたコンテンツ(自動生成コンテンツ)はGoogleも警告しており、もし以下に該当するようなコンテンツがあれば検索から除外するとしています。

  • 検索キーワードを含んでいるが、文章としては意味をなさないテキスト
  • 自動化されたツールで翻訳されたテキストが人間によるチェックや編集を経ず公開されたもの
  • マルコフ連鎖などの自動処理によって生成されたテキスト
  • 自動化された類義語生成や難読化の手法を使用して生成されたテキスト
  • Atom / RSS フィードや検索結果からの無断複製によって生成されたテキスト
  • 複数のウェブページからのコンテンツを、十分な付加価値を加えることなくつなぎ合わせたり組み合わせたりしたもの

出典: Automatically generated content | Documentation | Google Developers

そもそも、人が見て耐えうる品質の文章を作れる自動化ツールは存在しません。なんとか読める、というラインはクリアしても、面白さや興味深さ、臨場感といったものは皆無であり、コンテンツの文章としてそのまま機能する代物ではないのです。

「キーワードを指定するだけで記事を大量に自動生成!」といった触れ込みのツールも販売されているようですが(「記事 自動作成」で検索してみてください)、それらは単にキーワードが詰め込まれているだけの検索エンジン向けの文章を生成するものであり、人間が読むことを想定してはいません。Googleが警告する自動生成コンテンツに完全に該当するものであり、まず使い物にはならないでしょう。

「自動化ツールで楽して・・・」は幻想なのです。

その場限りのトレンドコンテンツに傾倒してはいけない

話題性がありアクセスが多く期待できるからという理由だけで、トレンドコンテンツの作成に傾倒してはいけません。

トレンドのネタを取り入れること自体は問題ありませんが、それはあくまでコンテンツ戦略の一部分として位置付けるべきです。トレンドコンテンツは旬が過ぎれば価値が失われますから、基本的には資産になりません。資産が積み上がらないため、次々と新しいトレンドを見つけてコンテンツ化していく必要があります。

明確な目的(コンセプト)を持たず、他サイトとの違いも特になく、ただひたすら、今この瞬間のアクセスを期待してトレンドコンテンツを投下し続ける・・・。これは何の戦略もなしにサイトを運営しているようなものです。

コンセプトやコンテンツの作成方針が曖昧もしくは存在すらしないサイトであればあるほど、全体の戦略がなくトレンドに走る傾向があります。「今月はあのネタがホットだからそれを書こう」「いま話題の〇〇〇に乗っかればアクセスを稼げそうだ」など、その時々のトレンドに流されてしまい、本当にサイトにとって必要なコンテンツ、ファンやリピーターを生み出すコンテンツを戦略的に積み上げることができていません。

目的(コンセプト)やコンテンツ作成の戦略・方針が明確にあり、必要なコンテンツもきちんと積み上げ、そのうえで、起爆剤的にトレンドコンテンツを取り入れる分には何の問題もないのですが、目的や戦略もなしにトレンドに傾倒することは避けるべきです。

ユーザーに再検索させてしまう不完全なコンテンツを避ける

検索ユーザーに再検索の負担を与えるコンテンツは不完全だといえます。
例えば、以下のようなケースです。

  • 商品紹介のコンテンツなのに商品ページへのリンクが貼られていない
  • より詳細な参考文献や一次情報へのリンクが貼られていない
  • 情報不足(例:「〇〇〇するための方法」の記事なのに具体的ハウツーが書かれていない)

商品紹介のコンテンツに商品ページへのリンクがなければ、購入意欲が湧いたとしても、ユーザーはその場で商品ページに即移行できません。ブラウザバックしてわざわざ商品名を検索窓に打ち込む必要があります。人によっては「売り込み色を出したくないからリンクは貼らない」と考えるかもしれませんが、ユーザーの利便性を考慮すれば、リンクを設置するのが筋です。

参考文献や一次情報へのリンクに関しても、記事を読んで「もっと詳細な情報を知りたい」という感情になったユーザーのために設置しておくとタメになります。もしリンクがなければ、情報を探す負担をユーザーに与えることになり、望ましくはありません。

情報不足に関しては、コンテンツに対するユーザーの満足度に深刻な影響を与えるものです。「役に立つ情報が書かれていないから、他のサイトに行こう」となれば、再びあなたのサイトに戻ってくることはまずないでしょう。

上記の例はいずれも、検索ユーザーに再度検索を強いるものであり、ユーザー体験の観点からは好ましくありません。

付加価値のあるオリジナルコンテンツが欠かせない

検索上位サイトの焼き直し的なコンテンツは年々、評価を落とし始めています。

かつてはGoogleもそのようなコンテンツを検索上位に置き続けていましたが、最近は独自性に乏しいコンテンツは軒並み評価を下げる方向でアルゴリズムの調整が行われているため、上位表示が難しくなりつつあります。

もし今現在、以下のようなフローでコンテンツを作っているなら、即刻止めるべきです。

  1. SEOの対策キーワードを決める
  2. そのキーワードで検索した際の検索上位サイトをチェックする
  3. 検索上位サイトの見出し要素を抜き出す
  4. 見出し要素を上手くミックスさせて記事構成を作る
  5. 複数の参照サイトの内容をリライト※してライティングする

※ここで言うリライトとは、他サイトのテキストの言い回しを変えて拝借する行為。早い話がパクリです。この問題については以下の記事で触れています。

上記のフローで作られたコンテンツは、Googleが言うところの「他人のコンテンツの内容を要約しただけの付加価値のないコンテンツ」であり、良い評価は受けられません。インデックスすらされないケースもあります。

Googleからの評価を抜きにしても、検索上位のコンテンツを模倣しただけの独自性に乏しいコンテンツではユーザーに支持されることはありません。この記事で何度も繰り返していますが、ビジネスやサイト運営において優位性を獲得するために重要なのは「他との違い」であって、「他と同じこと」ではないのです。オリジナルコンテンツの重要性や価値を認識し、どうすれば独自性を担保できるのかを真剣に考える必要があります。

文字数ありきでコンテンツの構成を決めてはいけない

Googleは文字数や単語数でコンテンツの品質を判断しているわけではありません。

「Word count is not indicative of quality(単語数は品質を示すものではない)」とあるように、コンテンツの総文字数や使用されている単語数は直接的なランキング要因ではありません。

もちろん、検索上位のコンテンツほど文字数が多いという相関関係があるのは認めますが、すべてのクエリでそのような関係が見られるわけではなく、文字数の少ないコンテンツが長文のコンテンツを抑え込んで上位表示しているケースも多々あります。

文字数だけでコンテンツの評価が決まるほどGoogleのアルゴリズムは単純ではないため、「最低5000文字は書こう」などと決める合理性は全くありません。「競合が7000文字書いているから、こっちは8000文字書かなければいけない」という発想も同様です。Googleに評価されやすい文字数など存在しないのですから。

そもそも、コンテンツの文字数は単なる結果に過ぎません。そのコンテンツに必要な情報を盛り込んだら結果的に〇〇〇〇文字になったというだけの話であり、文字数自体は重要な指標ではないのです。重要な指標ではない文字数ありきでコンテンツの構成を決めてしまうから、不必要に長いだけのコンテンツあるいは逆に情報が全然足りないコンテンツが生まれることになり、結局、ユーザーの役にも立たないという結果になります。

コンテンツを外注している場合は、文字数を一律で設定して文字単価でフィーを支払ったほうが管理しやすいという側面があるのかもしれませんが、いずれにせよ、効果的とはいえません。

専門知識がなければ何をやっても上手くいかない

世の中のSEO記事の多くは専門知識を持たないライターによって書かれたものです。

専門知識や経験がない分野であっても、ネットから情報を拾い、その情報をそれっぽくまとめればコンテンツは作れてしまいますが、そのようなコンテンツは品質面で大きな問題があります(たとえ日本語がどれだけ整っていたとしても)。

専門知識や実体験がなければ深い分析や洞察、考察を展開することができず、ネットで拾ったありきたりな一般論を展開することになりますが、そのような情報に価値を感じるユーザーはいません。結果として、「読まれない、シェアされない、再訪されない」というコンテンツが出来上がります。

今回の「helpful content update」はそのような低品質コンテンツで構成されたサイトを淘汰する目的がありますので、記事冒頭でも触れたように、安価なライターをクラウドソーシングで囲って専門性の低いありきたりなSEO記事を量産してきたサイトは非常に危険です。

低品質コンテンツを削除するというその場しのぎの対策ではなく、コンテンツに対する考え方やコンテンツの制作体制を根本から見直す必要があるでしょう。

専門性こそがコンテンツの根幹であり、専門性があるからこそ、コンテンツやサイトの権威や信頼が増していき、人気サイトに育つのです。以下のGoogleのアドバイスは専門性の高いコンテンツの作成に役立ちますので、ぜひ参考にしてほしいと思います。

  • コンテンツは、独自の情報、レポート、研究、分析を提供しているか。
  • コンテンツは、特定のトピックに対して包括的または完全な説明を充分に提供しているか。
  • コンテンツは、あたりまえのことだけでなく、洞察に富んだ分析や興味深い情報を含んでいるか。
  • コンテンツは、トピックに関して明らかに充分な知識を持つ専門家や愛好家によって書かれているか。

出典: What site owners shouldknow about Google’s core updates | Google Search Central Blog

最後に:本物で有用と感じられるコンテンツ以外は淘汰される

検索エンジン向けの低品質コンテンツを避け、人間のユーザーのための高品質コンテンツを作るべしという、これまでGoogleが幾度となく提言してきたこのアドバイスに従うことが、今回の「helpful content update」を受け我々がやるべきことではないでしょうか。

SEOのためだけに作られた検索エンジン起点のコンテンツはもう通用しません。もちろんGoogleのアルゴリズムにはまだまだ抜け道もあるので、そのようなコンテンツでも評価されてしまうこともあるでしょう。しかし人間が見たときに価値を感じられないコンテンツでは結局、上位表示しても意味がなく、サイトの価値を向上させることに貢献もしません。

SEO自体は別に悪いものではありませんが、SEOの理論だけでコンテンツを作る行為は完全に有害なものであり、効果的ではありません。

必要とされるのは、本物で有用と感じられるコンテンツです。

コンテンツを投資ではなく単なるトラフィック集めの一手段と認識する人々によって作られた低品質なSEOコンテンツはいずれ淘汰され、代わりに、専門知識や経験、熱意を持った人々によって作られた高品質なオリジナルコンテンツが生き残っていくはずです。
オリジナルで質の高いコンテンツのランキングを向上させるよう、Googleもアルゴリズムを調整し続けており、今回の「helpful content update」もその一環です。

この記事の執筆時点(2022年8月)では英語圏のみの展開の予定ですが、いずれ日本でも適用されるのは間違いないでしょう。万が一適用されないとしても、オリジナルな高品質コンテンツを作ることの価値は何一つ変わることはないので、今回の記事でご紹介した各アドバイスを参考にコンテンツ作成に取り組んでみてください。

参照情報(Google公式)

What creators should know about Google’s helpful content update
https://developers.google.com/search/blog/2022/08/helpful-content-update

More content by people, for people in Search
https://blog.google/products/search/more-content-by-people-for-people-in-search/

商品レビューを書く方法
https://developers.google.com/search/docs/advanced/ecommerce/write-high-quality-product-reviews

Google のコア アップデートについてサイト所有者が知っておくべきこと
https://developers.google.com/search/blog/2019/08/core-updates

自動生成されたコンテンツ
https://developers.google.com/search/docs/advanced/guidelines/auto-gen-content?visit_id=637970909878413934-2877343666&rd=1

高品質コンテンツ作成に役立つ関連記事