「Twitterに上がっている投稿は転載・埋め込みしてもOK」
というのは、多くの人の共通認識となっています。それはある意味で正しく、ある意味で間違っています。
なぜなら、現実には裁判で判決がひっくり返る可能性があるからです。
本記事では、これまでの事例とTwitter社の公式見解を交えながら、Twitterの投稿の著者権について整理できればと思います。
Twitterの公式見解
まずはTwitter社の公式見解はどうなっているのか、ご利用規約を見てみましょう。
ユーザーは、本サービス上にまたは本サービスを介して自ら送信、投稿または表示するあらゆるコンテンツに対する権利を留保するものとします。
ユーザーが投稿したあらゆるコンテンツの著作権はユーザーが保持していることになります。ここが前提となってきます。
ユーザーは、本サービス上にまたは本サービスを介してコンテンツを送信、投稿または表示することによって、…… あらゆる媒体または配信方法を使ってかかるコンテンツを使用、コピー、複製、処理、改変、修正、公表、送信、表示および配信するための、世界的かつ非独占的ライセンス(サブライセンスを許諾する権利と共に)を当社に対し無償で許諾する
先程の「前提」のとおり、ユーザーの投稿したコンテンツはすべてユーザーが著作権を持っているので、そのままではTwitter社はコンテンツを自由に使うことができません。そこで、Twitter社はTwitterのサービスを介した時点で、ユーザーから当該コンテンツを利用する「許諾(=ライセンス)」を受けると定めています。
更に、この許諾はサブライセンス、つまりTwitter社が第三者にコンテンツの利用を許諾する権利まで認めています。このサブライセンスが他ユーザーのコンテンツのRTや埋め込みをOKとする根拠になっています。
Twitterのサービスを利用するとTwitter社は自動的にユーザーからコンテンツについての利用許諾を受け(ユーザー→Twitterへの許諾)、更に第三者に対するサブライセンスによって他ユーザーは埋め込みやRTなどTwitterのサービスを介してコンテンツを利用することができる(Twitter→他ユーザーへの許諾)という流れになるため、少なくともTwitterが提供するサービスを介すればコンテンツの利用は問題ありません。
つまり、Twitterの埋め込みやRTで、他者のツイートを掲載しても著作権侵害には当たらないと考えるのが妥当です。
ですが、時折Twitterのツイートの著作権侵害が話題に上がります。どういう場合がOKでNGなのか。判例を元に解説していきたいと思います。
個別のケースごとに判決も変わる?
埋め込みやRTは問題ない。でも、裁判で一部このルールを覆す判例も出ています。
イラストの無断転載
まずはこちら。漫画「勇者のクズ」の著者でもあるナカシマ723さんが起こした裁判が一部界隈で話題になりました。
参考:イラスト無断転載、まとめサイトに30万円の賠償命じる判決 「VIPPER速報」「ガールズVIPまとめ」など訴えた注目裁判が決着 – ねとらぼ
ただ、この裁判では、埋め込みやRTなどサービスを介した転載ではなく、イラストの無断転載が問題の焦点です。ナカシマ723さんがTwitterで無料公開していたイラストを無断転載していたと。これは損害賠償請求されてもおかしくないかもしれません。
スクショ転載
例えば、このように他人のつぶやきのスクショを転載する手法。これはブログでもよく見られる転載の手法のため、情報発信者はチェックしておくべき項目です。
スクショ転載は著作権侵害との判決が出ています。
参考:スクショ画像のツイートは「著作権侵害」 東京地裁判決はユーザーにどんな影響がある? – 弁護士ドットコム
スクリーンショットによるツイート引用は著作権侵害との判決(栗原潔) – 個人 – Yahoo!ニュース
サービスを介さない形でのコンテンツの利用についてTwitterはユーザーからサブライセンスを得ていません。使用許諾がない以上、そういうコンテンツの利用は著作権侵害に当たります。
一方ツイートの埋め込みはTwitterから提供された正規の機能であり、規約でサブライセンスを得ることが明示されています。そのため、埋め込みで他社のツイートを表示させることは著作権侵害にはなりません。
(※)ツイート埋め込みとの比較という論点からはズレますが、この判決では引用に当たらないことの理由が「Twitterが他に適切な手段を用意しているのに利用しなかったのは規約違反であり、『公正な慣行』に合致しない」からとされており、これについては異論も批判もあると思われます。そもそも規約違反の問題と著作権法上の引用の問題とは別もののはずです。
RT
先程、RTは著作権侵害には当たらないと書きましたが、下記はそれを覆す判決となっています。
参考:「TwitterのRTで著作権侵害」最高裁判断は「日本のITをガラパゴス化する判決」と紀藤弁護士 | Business Insider Japan
一見「タイムラインに流れてきたツイートをRTしただけで著作権侵害になった」ように見える判決ですが、話は少しややこしくなっています。状況を簡潔にまとめるとこうです。
2. その写真をある人物が勝手にコピーしてツイートした。
3. そのツイートを更に別の人がRTした。
2の人物が著作権(公衆送信権)を侵害しているのは明らかですが、3の人物にも著作権侵害が認められるか、というものでした。そして、2審(知財高裁)では公衆送信権の侵害はないが、著作者人格権(氏名表示権)を侵害したと認められ、最高裁もその判断を支持しています。
Twitterの仕様上、タイムライン上では画像がトリミングされた状態で表示されるせいで写真内に入れられていた写真家の著作権表示が見えなくなっていた、そのような状態で表示されたのは3の人物がRTしたせいである、ということのようです。
3の人はTwitterの仕様に巻き込まれただけにも見え、理不尽なようにも思えますが、法律上で判断するなら、3の人は「著作権表示が消えるような行為を行った」と言えてしまいます。
法律の方が現実に追い付いていない感が強いですが、当面はその写真が他者の権利を侵害していないか、RTしたとき著作権表示が消えるトリミングにならないかをよく確認しなければいけません(RTするツイートの画像がその人自身の画像であれば、RT自体が出所の表示になるのでおそらく氏名表示権の侵害にもならないのではないかと思われます。この事例では別人が画像を勝手にツイートしていたため、結果として画像の著作権者がわからなくなってしまった)。
参考:Instagramが「画像の埋め込み機能を使っても著作権侵害になる」という公式見解を発表 – GIGAZINE
「Instagramの埋め込みは著作権侵害に当たらない」という判決が下る – GIGAZINE
結論
まとめますと、
- Twitterの埋め込み機能で転載するのは著作権侵害になる可能性は低い
- スクショは今のところアウトの可能性が高い
- RTの場合は他人の画像を勝手にツイートしたものをRTするとアウトになることがある。
というところでしょうか。ツイートを転載するならTwitterが提供するサービスを利用してやるのが無難、という感じです。
埋め込みやRTはサービスを介した転載のため、問題はないのですが、元ツイートが著作権を侵害していれば、RTした側も罪に問われる可能性があります。Twitterの規約では著作者人格権の不行使特約などはありませんから、誰かのツイートを自分のものであるかのように表示する場合などは、たとえそれがTwitterの機能を利用していたとしても、元のツイート主から著作権(著作者人格権)侵害を訴えられます。
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