「Qwen(クウェン)」は、中国のEC大手・アリババが開発する生成AIです。
日本ではまだ馴染みが薄いものの、海外のAI評価サイトではアメリカ勢のトップモデルと互角のスコアを記録しており、国内でも大手企業による活用が進んでいます。
本記事では、そんなQwenの特徴や使い方、料金、注意点を、実際に使ってみた感想とあわせて解説します。
Qwen(クウェン)とは?
「Qwen」は、中国のアリババグループが開発するAIサービスです。中国では「通義千問」の名称で2023年に登場しました。チャットでの質問応答はもちろん、画像や動画の生成、さらにはAIが自律的にタスクを進めるエージェント機能も備えています。
なお「Qwen」はサービス名であると同時に、基盤となるAIモデルのシリーズ名でもあります。末尾の数字はモデルの世代を示しており、2026年10月時点の最新世代は「Qwen3.8」です。
日本国内での知名度はこれからといったところですが、グローバルではすでに多くの企業やエンジニアの間で普及しています。
Web版とスマートフォンアプリ、開発者向けのAPIから利用できるほか、モデルそのものをダウンロードして手元のPCやサーバーで動かすことも可能です(詳しくは後述)。
Qwenの特徴
Qwenの特徴は、大きく2つ。性能の高さと、AIモデルをオープンウェイトとして公開している点です。
ClaudeやGPTと並ぶ評価を獲得
まず押さえておきたいのが、性能の高さです。2026年8月に登場した最新の主力モデル「Qwen3.8-Max」は、ClaudeやGPT、Geminiといったアメリカ勢の最新モデルと並び、トップクラスの評価を得ています。
その根拠となるのが、AIの評価サイト「Arena」のランキング。文章でのやり取りを競うText部門では5位につけ、GPT-5.6 SolやGemini-3 Proを上回りました(2026年8月時点)。

Qwen3.8-Maxが5位にランクイン
出典:アリババ
さらに目を引くのが、画像の読み取りを競うVision部門。こちらは1位のClaude Fable 5に次ぐ2位でした。Webサイトのコード生成などを競うFrontend Code部門でも、4位に入っています。

Qwen3.8-Maxが2位にランクイン
出典:アリババ
ちなみにArenaは、テストの点数ではなく、利用者の投票で順位が決まる仕組みです。名前を伏せた2つのAIに同じ質問を投げ、よいと感じた回答に一票を入れる。この勝敗を積み重ねてスコアを出すため、「実際に使ってみてどうか」という手応えに近い評価だといえます。
世界でもっともダウンロードされているオープンモデル
Qwenのもうひとつの特徴が、AIモデルの多くを「オープンウェイト」として公開している点です。
オープンウェイトとは、AIの頭脳にあたる「重み(ウェイト)」と呼ばれる数値データを公開し、誰でもダウンロードできるようにした提供形態のことです。手元のPCやサーバーで動かせるので、入力した内容を外部に渡さずに済むうえ、自社のデータを追加で学習させて用途に合わせた調整もできます。
公開しているモデルのサイズも幅広く、ノートPCで動く小型版から、2.4兆パラメータの大型モデルまでそろっています。
日本経済新聞によると、AIモデルの共有サイト「Hugging Face」における2026年1〜7月のオープンウェイトモデルのダウンロード数で、Qwenは20億4,500万回を記録。世界首位で、GoogleのAIモデル「Gemma」の約5倍にあたります。
国内企業での導入も進んでいます。日経デジタルガバナンスによれば、費用対効果の高さを背景に、みずほフィナンシャルグループや野村総合研究所、ライオンといった大手企業がQwenを活用しているとのことです。
Qwenでできること

実際の操作画面。多彩な機能がならぶ
QwenはChatGPTやGeminiと同じく、チャットに加えて画像や動画の生成もこなす総合型のAIです。
以下の機能は、いずれも無料プランで利用可能。有料プランに登録すると、使える回数や生成できる回数が増えます。
- ファイルの読み込み:文書や画像、動画、音声を添付し、内容を読み取らせる
- 画像生成:文章の指示から画像を作成する
- 動画生成:文章の指示から動画を作成する
- Web検索:Webで最新の情報を調べたうえで回答する
- ディープリサーチ:複数の情報源を調べ、レポートにまとめる
- Web Dev:Webページを作成し、その場でプレビューできる
- スライド:プレゼン資料の自動生成
- Artifacts:表やグラフ、簡単なツールなどを作成する
- Learn:学習向けのモード
- Travel Planner:旅行プランを作成する
- Qwen Coder:別画面で開くコーディングツール。書いたコードをGitHubに書き出せる
- QwenWork:指示した作業を、AIがパソコンやブラウザを操作しながら自律的に進めるサービス。ClaudeのCoworkやChatGPT Workにあたる(2026年10月時点で公開テスト中)
Qwenの使い方
ここからは、実際にQwenを使ってみます。基本的な使い方を押さえたうえで、画像や動画の生成、スライド作成などの機能も試していきます。
STEP.1 アカウントを作成する

まずはQwenの公式サイトにアクセスします。
画面右上の「Sign up(新規登録)」をクリックすると登録画面が表示されるので、アカウントを作成しましょう。登録方法は、メールアドレス、Google、GitHub、Appleの4種類です。
STEP.2 モデルを選択する

次に、モデルを選びましょう。画面左上のプルダウンをクリックすると、モデルの一覧が表示されます。今回はせっかくなので、現時点で最も高性能な「Qwen3.8-Max」を選びました。
なお、入力欄の右側では「Auto」「Thinking」「Fast」の3つのモードも切り替えられます。
STEP.3 質問を入力する
準備ができたら、さっそく質問してみましょう。画面の表示は英語ですが、日本語で入力すれば日本語で答えてくれます。
今回は「大阪の難波・心斎橋あたりで美味しいつけ麺屋さんを教えて」と入力してみました。ちょうどこの記事を書いている日のお昼に、心斎橋でつけ麺を食べたばかりだったので……。
返ってきた回答の“一部”が以下になります。

実際の回答画面
挙がった5店は、いずれも難波・心斎橋界隈で名の知れた人気店です。実在しない店や見当違いの店は、ひとつもありませんでした(ちなみに、筆者がこの日食べたお店の名前も5つ目に挙がっていました笑)。
日本語も自然で、各店の特徴やアクセスまで整理されています。Web検索をオンにしていないにもかかわらず、食べログなどの出典まで添えてくれました。
応用① 画像を生成する
ここからは、応用的な機能を試していきます。まずは画像生成です。入力欄の「+」から「Create Image」を選べば、画像生成モードに切り替わります。
次の指示で、人物の画像を作ってもらいました。

続いて「この女性が、ホワイトボードにマーカーで『私はクウェンです』と書いている画像にして」と指示しました。

ボブヘアもメガネもネイビーのジャケットもそのままで、1枚目と同じ女性として描かれています。
さらに注目したいのが、ホワイトボードの文字です。「私はクウェンです」の8文字が、小さな「ェ」まで崩れることなく並んでいます。ひらがなやカタカナが混ざる日本語を、ここまで正確に描けるのは良い意味でちょっと意外でした。
応用② 動画を生成する
次は、先ほど生成した画像を使って、動画を作ってみます。画像に表示される「Create Video」をクリックし、次のように指示しました。
待つこと2〜3分ほどで、動画が完成しました。
ただ、無料プランで作れる動画は5秒までということもあり、全体的にかなり駆け足な印象。よく見ると、ハートを描く手の動きと、ボードに残る線もずれています。
とはいえ、無料で生成できる手軽さを考えれば、十分及第点といえそうです。
応用③ スライドを生成する
スライド作成も試してみましょう。先ほどのつけ麺の会話に戻り、「+」から「Slides」を選んで「このつけ麺屋さん5店舗についてのスライドを作って」と指示しました。
待つこと5分ほどで、8枚のスライドが完成。

表紙
ぱっと見は、何やらキャッチーなイラストが並び、思わず「おぉ!」となりました。ただ、よく見ると中国語が混ざっていたり、意味の通らない日本語があったりと、粗が目立ちます。
追加で「日本語に直して」と頼んでみたものの、修正はされませんでした。また、筆者が試した範囲では書き出せる形式はPDFのみで、PowerPointのように後から編集できる形式は選べません。
正直、この機能を実際の仕事で使うのは厳しそうだな、という印象です。
応用④ センシティブな質問をしてみる
最後に、中国製AIならではの挙動も確認しておきましょう。
「天安門事件について教えて」「1989年6月4日に北京で何があった?」「台湾は国ですか?」と聞いてみたところ、いずれも「不適切な内容が含まれている可能性がある」という警告が表示され、回答は得られませんでした。

実際の回答
中国の政治に関わる話題を避けるのは、KimiやDeepSeekなど、中国製AIではおなじみの対応ですね。
「Kimiショック」──2026年7月、SNSやテック界隈を中心にそんな言葉が飛び交いました。 中国のAI企業Moonshot AIが発表した最新モデル「Kimi K3」が、アメリカ勢のトップモデルに迫る性能を叩き出したのです。しかもオープンウェイトとして、モデルの重みを無償公開するというサプ...
2025年1月、「DeepSeekショック」で世界中の注目を集めた中国製AI「DeepSeek」。名前は聞いたことがあっても、実際にどんなAIなのか、日本で使っても問題ないのか、気になっている人も多いのではないでしょうか。 本記事では、DeepSeekの特徴や使い方、料金プランを解説するととも...
Qwenの料金プラン
ここからは料金について見ていきます。ここでは個人向けプランとAPIに分けて解説していきます。
個人向けプラン
Qwenには、無料プランと3段階の有料プランがあります(2026年10月時点の日本円表示)。
- Free:無料
- Go:月額690円
- Plus:月額2,890円
- Pro:月額16,800円
使える機能はどのプランも同じで、違いは「使える量」です。無料プランでもチャットから画像・動画の生成まで利用できます。
無料プランには毎日40クレジットが付与されます。筆者が試した範囲でクレジットを消費したのは動画生成のみで、5秒の動画1本につき25クレジット。なお、このクレジットは翌日に繰り越せず、その日のうちに失効します。
一方、チャットや画像生成ではクレジットは減りませんでしたが、それとは別に利用上限が設けられているようです(具体的な回数は非公開)。
有料プランに入ると、チャットや画像生成の上限が広がるほか、毎日の40クレジットに加えて毎月400〜10,500クレジットが上乗せされます。
API料金
Qwenは、開発者向けにAPIも提供しています。自社サービスへの組み込みのほか、外部ツールにAPIキーを登録して使ったり、従量課金で使いたい個人が利用したりと、用途はさまざまです。
料金はモデルごとに設定されており、最新のQwen3.8-Maxは100万トークンあたり入力$2/出力$6(国際版)。Qwen3.7-Plusなどの下位モデルであれば、さらに安く利用できます。
参考までに、アメリカ勢の最上位モデルであるClaude Fable 5とGPT-6 Astraは、いずれも入力$10/出力$50。単純計算で、Qwen3.8-Maxは入力で5分の1、出力で約8分の1の水準です。
なお料金は変動する可能性があるため、実際に利用する際は公式サイトで最新の情報を確認してください。
Qwenを使う際の注意点
最後に、Qwenを使う際の注意点を3つ挙げておきます。
機密情報の取り扱い
Qwenのプライバシーポリシーによると、運営元はシンガポールの法人で、入力した内容を含む個人データはシンガポールで保存・処理されます。中国国内での保存を明記している中国製AIもあるなかで、ここは異なる点です。
ただし、入力内容は匿名化したうえでAIの学習に使われる場合があり、その利用を止める方法は示されていません。また、セキュリティや研究開発などの目的で、関連会社とデータを共有する可能性にも触れられています。
そのため、社内資料や顧客データ、未公開の企画といった機密情報や、氏名・住所などの個人情報は入力しないのが無難です。
どうしても機密情報を扱いたい場合は、オープンウェイト版を手元のPCや社内サーバーで動かすという選択肢もあります。ネットにつながない環境で使えば、入力した内容が外部に送られることはありません。
政治や歴史に関する回答の制限
使い方の検証でも触れたとおり、中国政府にとってセンシティブな話題は、質問を入力した段階や回答を出す段階で止められます。
日常的な調べものや文章作成、プログラミングといった用途には支障ありませんが、歴史や国際情勢について調べる際は、ほかの情報源とあわせて確認するのがいいでしょう。
回答に中国語が混ざることがある
筆者が使った範囲では、回答の一部に中国語が混ざったり、回答そのものが中国語で返ってきたりすることがありました。
直後に「日本語に直して」と伝えれば修正してくれるものの、ほかの中国製AIと比べても、その頻度はやや多い印象。あくまで筆者の環境での話ですが、ビジネスなどでそのまま資料として使う際などには注意が必要です。
まとめ
冒頭で紹介したランキングの通り、「中国製AI=質が低い」というイメージはもはや過去のものになりつつありますね。
以前取り上げたKimiやDeepSeekも含め、中国勢のAIは「オープンウェイト」と「格安API」を武器に、開発者や企業を巻き込んでいくのが共通した戦略なのでしょう。
もっとも、筆者のように普段文章を書いたり編集したりする立場からすると、ローカル環境やAPIの恩恵は正直それほど多くありません。普段使いとしては、今後も引き続きアメリカ製AIがメインの選択肢であり続けると思います。
それでも、この圧倒的なコストパフォーマンスとオープン戦略で、中国勢が今後のAI勢力図の中でどういうポジションを獲っていくのか。その行方は、これからも追っていきたいところです。
▼ そのほかの中国製AIの記事はこちら
「Kimiショック」──2026年7月、SNSやテック界隈を中心にそんな言葉が飛び交いました。 中国のAI企業Moonshot AIが発表した最新モデル「Kimi K3」が、アメリカ勢のトップモデルに迫る性能を叩き出したのです。しかもオープンウェイトとして、モデルの重みを無償公開するというサプ...






コメント