マーケティング面から見たオウンドメディアは、企業が運営するコンテンツ配信サイトという狭義で使われることが一般的ですが、本来的な意味でのオウンドメディアは自社メディア全般のことを指し、広義に捉えるとコーポレートサイトやSNSのアカウント、パンフレットなどの紙媒体を含んだ、自社が所有するメディア全般を意味します。

本稿では、インターネット上のWebサイトをどのようなスタンスで運営していくのか、まずはオウンドメディアの位置付けを明確にするための話をしたいと思います。オウンドメディア運営の目的を定めるきっかけとなれば幸いです。

オウンドメディアのターゲットを明確にする

そもそも、どのような効果を求めてオウンドメディアを運営しようと考えたのでしょうか。運用のメリットは様々なものがあります。

インターネットを使えば、誰でも簡単に情報を発信するメディアをもつことができます。メディアをもつことのメリットはたくさんありますが、闇雲に情報を発信すればいいわけではありません。また、集客と収益化とでは、必要となる施策やコンテンツも異なってきます。まずはオウンドメディア運営の目的となる、最終的なゴールをどこにするかです。

集客、顧客教育、既存顧客のリピートとメリットは様々ですが、目的によってターゲット層が変わることは言うまでもありません。潜在顧客向けなのか、インフルエンサー向けなのか、既存顧客向けなのか。誰に対して向けたメディアなのかで情報の内容や切り口も変わってくるということです。メディアごとにターゲットを明確に分けるのもよし、1つのメディアで複数のターゲット向けに情報を発信するのもよし。いずれにせよ、ターゲットを明確にしなければ、効果的なオウンドメディアの活用はできません。

属性が一致している層に興味をもってもらう

オウンドメディアでのコンテンツマーケティングは、一般的には「集客」に重きを置いて構築されています。つまり、購買につながりやすい層に響くようなコンテンツが作られているのです。例えば、ファッション系のメディアなら、ブランドに関する小ネタなどで集客を試みます。当然、そのブランドに興味がある層を呼び込めるので購買に繋がりやすい。

すでに商品との属性が一致している層を集客すれば、収益化までの距離が短いので、売上アップに繋がやすいというわけです。その為、多くのオウンドメディアではこうした情報発信の手段がとられています。

ただ、問題はライバルが多いことです。どこもやっていることなので、同じ属性同士の企業で顧客の取り合いになりがちなのです。自ずとブランド力やマーケティング力が強いところが有利な仕組みになってしまうので、もっと別角度からの情報発信が求められる時代になっていると言って良いでしょう。

属性の範囲を広げ、潜在顧客の分母を拡大する

すでにその属性の商品に対して興味を持っている層ではなく、さらに属性を広げて情報発信していくことも大事です。ファッション系のウェブメディアなら、よく恋愛や結婚に関する情報が掲載されていたりするでしょう。ファッションとは直接的な関係はありません。でも、人々がオシャレをする目的から考えれば、どういったことに興味を持ちやすい層なのかを類推することができます。

ターゲットが興味を持ちやすいジャンルに属性を拡大し、発信する。潜在顧客を広く探っていくマーケティングは、ユーザーの分母を増やすことで、分子であるヘビーユーザーを増やす施策なのです。あなたの自社商材の顧客をよく観察し、なぜ商品を買ってくれるのか、購入の動機や目的などから考えることで、属性を広げたり、商品そのものを拡大した属性向けに生まれ変わらせることにもなるかもしれません。

そこまでいけば新たなビジネスの幕開けになりうるかもしれませんね。

既存顧客に「買ってよかった」と思ってもらえる情報発信

集客も重要ですが、既存顧客へのアプローチも重要です。多くの企業では、一度買ったら終わりのスタンスを無意識にとっていることがあります。契約書を交わすまでは「Yes」のスタンスだったのが、締結後は「No」に変貌する企業が世の中には珍しくありません。焼き畑的なやり方は長くは続かないものです。

IT業界は日進月歩なために企業の栄枯盛衰が早いとよく言われますが、そうではなく、既存顧客に対するアプローチを疎かにした結果であることも往々にしてあるのです。

既存顧客に対しては、商品をよりよく使うために必要な知識を提供したり、商品のアップデートを行う必要があります。もちろん、追加コストをかけて特典やプレゼントキャンペーンをするのもありですが、コストをかけるだけがすべてではありません。その前にやるべきことの方が多いのです。「買ってよかった」と思わせることです。

顧客満足度を上げるには商品価値を上げることがもっとも重要ですが、顧客フォローのあり方として、どういう媒体でどういう情報を発信するかも大事です。ブログで発信してもいいし、メルマガや会員制のWebサイトでの発信も良いでしょう。特にメルマガはこちらからお知らせを通知することができるので、顧客とのアプローチには最適なメディアです。

インフルエンサーに向けた細やかなアプローチ

口コミとは、人の口を介して伝わるだけではありません。個人がネット上でメディアをもつようになった今、インフルエンサーと呼ばれる人たちの影響力も無視はできないものとなっています。インフルエンサーとは、ユーチューバーやインスタグラマーと呼ばれる人たちだけではなく、業種ごとに影響力のある人が存在し、彼らは特定の分野で権威性を持っていたりします。

彼らがどういうものに響くかにもよりますが、商品力を高めればいいというだけ問題でもありません。新しい活動や試みであったり、いかに新鮮さをニュースを通じて感じてもらえるかも重要です。どれだけ拡散するかは彼らが呼応するかによっても変わってくるからです。ですから、顧客向けとはまた違ったアプローチも必要になることがあるのです。

ターゲットによって発信する情報も変わってくる

オウンドメディアに望む効果、狙うターゲットが明確になれば、次は具体的に何を発信するかも自ずと決まってくることでしょう。

例えば、商材の存在すらも知らない潜在顧客向けとすでに商材のことを知っている潜在顧客向けとでは発信する内容も少し変わってきます。「ウォーターサーバー」であれば、商材のスペック情報ではなく、水に関する基礎知識を出すことが有効になるといった違いです。いきなり商材の特徴を記事にしたところで、興味を引ける可能性は低い場合は、悩みや困ったことの解決策として、自社商材を勧めるといった方法もあります。商材周辺の情報を丁寧に発信していくことが信頼に繋がっていくからです。

自社商材を知っている見込み客に対しては、社名や商品名がすでにフックとなる状態です。SEO対策のためにも、固有名詞である社名や商品名はしっかり記事に盛り込みましょう。興味を持っている段階から、購入や申し込みを進めるために背中を押すなら、自社商材の活用事例などもおすすめです。商材の性質にもよりますが、用途が限定される商品の意外な活用方法、サービス内容をグレードアップする裏技など、商材に絡めて知って良かったと思ってもらえる情報を発信しましょう。購入や申し込みにあたってはベネフィットが重要です。商材の価値を伝えることで、購入や申し込みに対する理由付けをしてあげましょう。

一般的に、人は広告を避ける傾向にあります。オウンドメディアは有益なコンテンツを発信するメディアなので、いわゆる広告臭が出ないように気をつけたいところです。自社商材を紹介する際も、説明文と混同せず、きちんとコンテンツとして仕上げましょう。

商材の購入、申し込み経験のある既存顧客は、商材をよく知ってくれています。潜在顧客や見込み顧客と違い、すでにある程度の信頼関係が築けている状態とも言えます。新規顧客や既存顧客を優良顧客まで育成するためには、さらに強固な信頼関係構築を目指しましょう。そのためには、裏側や中身を見せましょう。開発秘話など、どういった思いで商品化に至ったか、どのような苦労があったかという情報を発信しましょう。その他、どういった人が担当するのか、どういった人が作成したのか、中の人を紹介するのもいいですね。商材の裏側にある思いや関わりのある人物を紹介することで、商材に対する信頼感を高めて愛着を持ってもらいましょう。

オウンドメディア運営Tips

記事を作成する際には、ターゲットに合わせた切り口とストーリー性を持たすことを意識しましょう。例えば「ロリータ服をこよなく愛する新入社員がカジュアルブランド担当として企画したスニーカー」などにすると、少し興味を持つ人もいるのではないでしょうか。実際のところ、ロリータファッションを好きな新入社員がカジュアル担当になったのはたまたまです。しかし、好みと仕事が反する状態で企画したと言われれば、そこに何かしらのストーリー性を持たせられます。また、ユーザーの声を商品に取り入れるという企画を、オウンドメディアで連載するのもおすすめです。その過程をコンテンツとして発信しながら、企画に協力してくれる既存顧客に新たなベネフィットを提供することができますよ。

オウンドメディアの運営にあたって、外部ライターに記事作成を依頼することもあるでしょう。何を書いてもらうかに迷った際には、売れ筋商品の企画意図を聞いたり、新商品のアピールポイントを整理したりして、社内で記事ネタを探しましょう。自社商材と関連があるテーマでオウンドメディアを運営するのですから、社内はネタの宝庫です。同じネタであっても、どこを切り口にするかで内容は変わってくるでしょう。記事の執筆を外部ライターに任せるなら、記事ネタを提供することで自社らしさを足すようにしましょう。

社内ネタを盛り込んだオウンドメディアなら、販売サイトやコーポレートサイトとサイトカラーを合わせた方が良いでしょう。自社商材を包括するような広めのテーマで運営する場合は、オリジナルデザインで新たなイメージを打ち出してもいいかもしれません。オウンドメディアの運営には、更新が容易いWordPressが多く利用されています。WordPressのテーマは数多くあり、簡単に好みのデザインのサイトを実現してくれます。職種や業種に合わせたデザインのテーマを選べば、スムーズ運営をスタートできるでしょう。