日常的にもっとも頻繁に使うアプリの一つといえば、「メモ」や「ノート」のアプリでしょう。iPhoneでもAndroidでも、実に多くのメモアプリやノートアプリがリリースされていますが、iPhoneについては、標準(デフォルト)でプリインストールされている「メモ」アプリが最高です。

名前がシンプルなのに、実に多くの機能が実装されており、その一つ一つがよく考えられていて役に立ってくれるのです。標準アプリなので信頼性が高く、困った時はネットで検索すればAppleサポートやその他のユーザーが懇切丁寧に教えてくれます。

以下では、ユーザーの記憶力を補完、増進するためのツールとしてiOS用の「メモ」をフルに活用する方法をご紹介します。

メモの初期設定

メモを作成する前にしておきたいのは、初期設定です。iPhoneの設定 ⇒メモ をタップして、設定画面を開き、初期設定をチェックします。自分の好みにしたがって、設定を変えておくといいと思います。

ここでは「新規メモ開始スタイル」を、デフォルトの「タイトル」から「本文」に変更しています。というのは、デフォルト設定のままだと、メモの冒頭に必ず大きく太い字でタイトルを入れてから、改行してようやくふつうの本文サイズのメモを入れなければならず、面倒だからです。

「本文」に初期設定しておけば、新規メモの最初からタイトル抜きで本文を書き始めることができるので、メモを素早く入力するのに好都合です。タイトルを入れたければ、画面下の アイコンをタップすれば、大きなタイトルサイズを選ぶことができますから、とくに不便はありません。

本文サイズに変えるもう一つのメリットは、あとで述べる「テキスト認識表示」(Live Text)で本文サイズで自動入力してくれることです。デフォルトの「タイトル」設定のままだと、テキスト認識結果が大きなタイトルサイズになってしまい、いちいち本文サイズに変換しなくてはならず、面倒です。

メモの作成

クイックアクション

高齢者や忘れっぽい方は、忘れないうちにメモをとっておきたいと思う機会が少なくないはずです。そんなとき、クイックアクションでメモ作成画面を出す方法が二つあります。

一つ目は、ホーム画面の「メモ」アイコンを長押しして、サブメニューを出し、「新規メモ」をタップすることです(左下の画像)。二つ目は、iPhoneの画面右上を下にスワイプしてコントロールセンターを表示させ、「メモ」アイコンをタップすることです(右下の画像)。

どちらの方法でも、ワンタッチでメモの新規作成画面を表示させてくれますが、どの画面からでもワンタップでメモ作成画面を出せるのは二番目の方法なので、こちらがおすすめです。

ふつうに「メモ」アイコンをタップすると、左下のような画面が表示されます。画面右下の新規メモ アイコンをタップすると、右のような「メモ作成」画面が開きます。ここにメモを書いていきます。メモの入力が終わったら、画面右上の「完了」ボタンをタップします。

メモ作成の仕方

メモ作成の画面には、いろんなアイコンや記号が並んでいます。これらを使って、文章やリスト、表、罫線、写真、手書き文字、文字装飾などを入れることができます。

文字サイズの指定

メモの文字サイズを指定したり、変更することができます。画面下の ボタンを押して、選択メニューを出し、サイズを選ぶだけです。下の画像では、サイズを「本文」(標準)から「見出し」(やや大きなゴシック)に変更しています。

ゴシック、イタリック、下線、取り消し線、リスト表記なども、このメニューで選択することができます。

表の作成

メニュー をタップすると、表を作成することができます。最初は2行×2列の表がつくられますが、表の左と上のマークをタップすると、行と列をいくらでも追加することができます(下の画像を参照)。

行を追加する

列を加える

チェックリストを作成する

メモアプリでは、ToDoチェックリストを簡単に作成することができます。通常の「リマインダー」とは違って、作成したリストにチェックを入れても、リストが消えることはなく、その代わりにチェックしたリストの順番が最後に移動します。これはどのタスクが終わったのか、どのタスクがまだ残っているのかをチェックするのに便利です。

また、タスクの実施状況を振り返ってみるのに便利です。遂行機能障害、エピソード記憶障害をもった方には、記憶保持・再生を助けてくれるのではないかと思います。「ToDoリスト」というフォルダに入れてチェックリストを作成すると、メモの整理に役立つのではないでしょうか。

チェックリストを作成するには、メニューの マークをタップします。表示された○のあとに項目を記入し、改行して次の項目を追加していきます。この例では、買い物リストに6項目入れました。

実際に買い物をした品目にチェックを入れると、左下の画像のように、買った項目には黄色のチェックマークが入り、下の方に移動しています。これによって次に買うべき品目が分かりやすく表示されます。

メモを完了して、ToDoリストのフォルダ画面に戻ると、右の画像のように、いま作成したチェックリストのタイトルが「ジャム」となっています。これでは、何のリストなのか、また作成日時もわかりません。そこで、チェックリストの1行目に「見出し」サイズで「10月6日 買い物リスト」というタイトルを入れることにします(左下の画像を参照)。

そして、メモを完了してToDOリストのフォルダに戻ると、右下の画像のように、「10月6日 買い物リスト」というタイトルが表示されました。これなら、あとでリストを探すときに便利でしょう。長期記憶のアーカイブとして役に立つと思います。

このように、メモアプリのToDoリストは、単なるリマインダーだけではなく、完了、未完了のタスクの記憶を保持し、再生するためのデータベースとなってくれるのです。

写真の挿入

メモにはテキスト以外に、写真、スキャンした書類の画像、地図やウェブページのサムネイルなどを挿入することができます。

写真を挿入するときは、メニューの マークをタップします。すると、「写真またはビデオを選択」「写真またはビデオを撮る」「書類をスキャン」というサブメニューが表示されます。「写真またはビデオを選択」をタップすると、iPhoneの「写真」に保存されている写真やビデオの一覧が表示されますから、そのなかから好きな写真を選んで、メモの画面に挿入することができます。

スキャン書類の挿入

メモアプリには、紙の書類をカメラで撮影してスキャンし、形状などを補正してメモに取り込んでくれる機能があります。iPhoneのメモアプリがドキュメントスキャナの役割を果たすわけですね。

使い方は、メニューの アイコンをタップし、サブメニューの「書類をスキャン」をタップします。すると、カメラの撮影モードになりますから、スキャンしたい書類に合わせて、シャッターを押します。

アプリが自動的にスキャンする範囲を切り取ってくれます。ずれている場合は自分で補正することもできます。

OKなら、画面右下の「スキャンを保持」続いて「保存」をタップすると、スキャンした画像がメモに取り込まれます。メモの中で紙のスキャン書類を表示させるときに便利です。

また、画像をタップし、「共有」を選択すれば、画像をPDFとして外部の媒体に出力させることもできます。

画像の出典:柴本礼『高次高機能障害の夫と暮らす日常コミック 日々コウジ中』(2010)主婦の友社

メモに地図を挿入する

メモにはサムネイルの地図を挿入することができます。サムネイルをタップするだけで目的の地図が表示されるので便利です。

主要な地図アプリには、iPhone標準の「マップ」と、「Googleマップ」の二つがあります。いずれもメモに地図のサムネイルを貼り付けることができます。それぞれについて、「新宿駅周辺地図」を例にして手順を説明します。

iPhone標準「マップ」をメモに挿入する手順
  1. マップアプリで「新宿駅」を検索し、地図の①をタップし、②「共有」をタップする
  2. 「メモ」アイコンをタップする
  3. 保存先の「新規メモ」をアップし、フォルダ選択画面で「地図」をタップする
  4. 「新規メモを作成」ボタンをタップする
  5. 「保存」ボタンをタップする
  6. メモに新宿駅のマップが大きなサムネイルで挿入された
  7. サムネイルをタップすると、iPhone標準マップの新宿駅周辺地図が開く
1.
2.
3.
4.
5.
6.
Googleマップをメモに挿入する手順
  1. Googleマップで「新宿駅」を検索し、「詳細」をタップする
  2. ①画面上の横スクロールメニューをスライドし、「共有」のメニューを表示させ、タップする
  3. ②画面下の「メモ」アイコンをタップする
  4. 「地図ー新規メモ」をタップする
  5. あらかじめ作成した「地図」フォルダをタップする
  6. 「新規メモを作成」ボタンをタップする
  7. 画面右上の「保存」マークをタップする
  8. 「完了」をタップするとメモに地図のサムネイルが挿入される
  9. サムネイルをタップすると、Googleマップの新宿駅周辺地図が開く
1.
2〜3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.

iPhone標準マップアプリとGoogleマップの違いは、メモに挿入されたサムネイルの表示方法です。

iPhoneマップアプリでは、地図のサムネイルが表示されますが、Googleマップでは、新宿駅の写真のサムネイルが表示されています。どちらもサムネイルをタップすると、詳細な地図が表示されますから、大きな違いとはいえません。

この表示サムネイルのサイズを小さくするには、サムネイルを長押しして、「小さなイメージ」を選択します。これもユーザーの好み次第です。

WebサイトのURLサムネイルを貼り付ける

メモアプリでたぶん一番よく利用するのは、WebサイトのURLサムネイルを貼り付けることかもしれません。

私自身は、この方法を多用して忘れやすいサイトへのアクセスを容易にしています。これはブラウザの「ブックマーク」と似ていますが、ブックマークと違って、WebサイトのURLを写真つきサムネイル形式で表示させることができたり、サムネイルの下にWebサイトからの抜粋記事などをメモ欄にコピペすることによって、サイト紹介ページにすることができます。

例として、iPhone13についてのApple公式ページのURLをメモに貼り付ける手順を説明します。ブラウザはChromeとSafariを使いますが、違いは最初のサイト画面で「共有」ボタンの位置が異なっていることだけです。

WebサイトのURLサムネイルをメモに貼り付ける手順
  1. Chrome  で検索してiPhone13のApple公式サイトを開き、画面右上の↑マークをタップする
  2. Safariで検索してiPhone13のApple公式サイトを開き、画面下の↑マークをタップする
  3. 画面下の「メモ」アイコン をタップする
  4. 「新規メモ」をタップする
  5. あらかじめ作っておいたフォルダ「iPhone」をタップする
  6. 新規メモを作成」をタップする
  7. 右上の「保存」マークをタップする
  8. iPhone13に関するApple公式ページのURLサムネイルがメモに貼り付けられた
1 Chromeブラウザ
2 Safariブラウザ
3
4
5
6
7
8

音声入力とSiriによる入力

メモに入力する方法は、キーボードを使うのが普通ですが、キーボード入力がわずらわしい場合や、手がふさがっている場合などには、音声による入力も可能です。

音声入力するには、メモの新規入力画面で、まず右下のマイクアイコン をタップします。すると、音声入力モードになるので、入力したい文章を読み上げます。すると、iPhoneが自動的にテキストに変換して入力してくれます。例として、夏目漱石作『草枕』冒頭の一節を音声入力してみました。


夏目漱石『草枕』冒頭

原文と比べると、いくつかの変換ミスがみられますが、概ね正確ではないでしょうか。

手書き入力

メモアプリは手書き入力にも対応しています。手書き入力するには、メモ画面のメニューから アイコンを選びます。すると、下の右のような手書き入力画面になります。画面下には手書きペンの選択ツールが並んでいます。文字の太さも調整できます。

また、文字のカラーも自由に設定することができます。下の右は、手書きで文字を入れてみたところです。字だけではなく、イラストや絵を描くこともできます。

「ライブテキスト」で写真から文字を抽出してメモに貼り付ける(iOS15新機能)

次に、iOS15(2021年6月)から新しく導入された「ライブテキスト」(Live Text)という機能を紹介しましょう。iPhoneのカメラに映った対象の中に含まれる文字を自動認識して、スマホ内のアプリにテキストとしてコピーしてくれるというものです。

ただし、認識できる言語の種類は限定されていて、いまのところ日本語には対応していません。対応言語は次の通りです。

  • 英語
  • フランス語
  • 中国語
  • イタリア語
  • ドイツ語
  • スペイン語
  • ポルトガル語

ここでは、例としてフランス語の教科書を使って、iPhoneのメモにコピーする実験をしてみましょう。文字抽出をする元のテキストは次の写真の通りです。フランスで開かれるクリスマス市 ( Le marché de Noël )についての文章です。

変換の手順は次のとおりです。

ライブテキストでフランス語教科書をメモ文書に変換
  1. カメラアプリを起動して、テキストを写す
  2. コピーしたい箇所でライブテキストのアイコン をタップする
  3. 変換したいテキスト部分をタップし、青く反転させる
  4. 「コピー」マークをタップして、指定した範囲をクリップボードにコピーする
  5. メモアプリで新規メモ画面を開き、ペーストする

変換の結果をみると、フランス語だけあって、きわめて正確に変換されていることがわかります。日本語への変換精度はまだまだのようです。今後の改良が望まれるところです。

メモ画面から直接ライブテキストを起動する方法もあるのですが、変換できる範囲がカメラアプリよりも狭く、安定度も低いので、上に述べた方法がおすすめです。

階層的フォルダ作成によるメモの整理

WindowsやMacのPCでは、ファイルを整理するのにフォルダを利用します。フォルダがないと、どのファイルがどこにあるか分からなくなってしまうからです。一つのフォルダには複数のサブフォルダを置くことができ、何層にも深く設定することができます。これによって、階層的な情報ネットワークがPC内部に構築されているのです。

iPhoneの「メモ」アプリでも、これと同じように、メモを階層的なフォルダを用いて効率的に整理することができます。しかも、その操作は非常に簡単かつ柔軟です。iPhone、iPad、Macの異なるデバイスで共通のフォルダ操作ができ、結果はiCloudによって瞬時に同期されます。

これはEvernoteやOneNoteなどの情報整理ツールよりも優れた特徴であり、メモアプリを脳内の階層的記憶ネットワークの補完ツールとして活用する切り札たる所以でもあります。

新規フォルダの作成

フォルダーは、複数のメモ(ファイル)を収納する入れ物あるいはキャビネットようなもので、PCのフォルダと同じように簡単に作成したり削除したりすることができます。

下の画像には、私のメモアプリにつくったフォルダーを表示しています。このうち、「すべてのiCloud」と「メモ」はメモアプリで自動的に作成されているフォルダーで、これは削除することができません。

なにも指定せずにメモを作成すると、アプリでは自動的にこの二つのフォルダーに入ります。例えば、Siriに「メモして」といってメモを作成すると、Siriは自動的に「メモ」フォルダー内に新規メモを作成します。

例えば、Appleという名前のフォルダーを新規作成する手順は次のとおりです。

  1. フォルダ画面の左下の アイコンをタップする
  2. 二つの選択肢が表示されるので、「新規フォルダー」をタップする
  3. 新規フォルダの名前(Apple)を入れる
  4. 「保存」をタップする
  5. Appleという新規フォルダが追加された

フォルダの編集

このようにして、新しいフォルダを追加していくと、そのうちにフォルダが多くなりすぎて収拾がつかなくなります。そこで、フォルダを階層的に整理する必要に迫られます。

メモアプリでは、フォルダの下にサブフォルダを収めることが簡単にできます。しかも、すでにあるフォルダを別のフォルダに移動することで、サブフォルダにすることができるので便利です。

例として、すでにあった「iPhone」フォルダを移動して、新しく作ったAppleフォルダのサブフォルダにする方法の手順を示しておきたいと思います。

「iPhone」フォルダを「Apple」のサブフォルダにする手順

  1. フォルダリストの中から移動したいフォルダiPhoneをタップする
  2. 「iPhone」フォルダ画面で、「このフォルダを移動する」をタップする
  3. 移動先のフォルダAppleをタップする
  4. フォルダ一覧から「iPhone」が消えたように見えるが、Appleフォルダを開くと、iPhoneがサブフォルダになっていることがわかる

フォルダ一覧画面で、右上の「編集」をタップすると、フォルダの右側にそのアイコンが表示されます。長押しして、ドラッグすると、フォルダの位置を移動させることができます。サブフォルダも一緒に移動します。

下の画像の例では、Appleというフォルダのを長押しして下にドラッグし、地図とアーカイブの間に移動させると、サブフォルダのiPhoneも一緒に移動していることがわかります。

フォルダの名称を変更したり、削除するには、フォルダの右側の アイコンをタップします。例えば、「ToDoリスト」というフォルダの名称を「リマインダー」に変更したい場合は、このフォルダの右側の をタップして、下部メニューから「名称変更」を選びます。フォルダを削除したいときは、同じメニューで「削除」を選べば、フォルダを削除することができます。

 

サブフォルダによる階層化

このような操作によって、メモアプリでは、フォルダーとサブフォルダーを自由に作成、移動、名称変更、削除することにより、自分の思うような階層的ネットワークを構築することができます。その中にメモを入れることによって、情報をきちんと整理し、外部記憶メモの入力、保持、再生(想起)を容易にすることができるのです。

こうして作られた階層フォルダは、脳内の長期記憶ネットワークと似たものを考えられ、私たちの限られた記憶能力を補完、拡充するための「外部脳」の役割を果たしてくれることでしょう。

フォルダ間のメモ移動

大脳の記憶ネットワークの中では、新しい情報や知識はいつも同じフォルダに収納されるとは限らず、別のフォルダに入ったり、別のフォルダに移動したりして、絶えず「知の組み替え」が行われていると推測されます。

人間の肉体能力や認知的能力は年とともに衰えていきますが、脳や精神の場合には、未開拓の領域が無限に近くあるので、新しい上位または下位のフォルダを作り、メモを移動させることができれば、死滅してゆく脳神経細胞(旧フォルダ)を補完することができ、いつまでも若さを保ち続けることができます。これは知識の整理にもなるので、一石二鳥といえます。

その意味でも、メモアプリにおける「フォルダ間のメモ移動」は重要です。必要がなくなったフォルダを削除したり統合したりして、そのフォルダに含まれていたメモを別のフォルダに移動する、という作業は日常的に必要になってきます。その手順は次の通りです。

例としては、「メモ」フォルダにあるメモを、別の特定のフォルダに移動させる場合を取り上げます。これは、Siriを使ってメモする場合、自動的にデフォルトの「メモ」フォルダに収納されるので、これを別のフォルダに移動する必要がたびたびあるからです。

メモのフォルダ間移動の手順

  1. 「メモ」フォルダを開き、移動したいメモをタップする
  2. メモ画面の右上の アイコンをタップする
  3. 下のメニューから「メモを移動」を選んでタップする
  4. フォルダ一覧から「iPhone」サブフォルダを選んでタップする。これで、メモは「メモ」フォルダから「iPhone」フォルダに移動した。

ハッシュタグとスマートフォルダー (iOS15新機能)

ハッシュタグ(タグ)というのは、#のついたキーワードのことです。複数のファイル、メモ、ノート、ページなどにタグをつけることによって、検索を容易にしてくれる便利な機能です。

SNSのtwitter、instagram、Facebookでもよく使われる人気のツールなので、ごぞんじの方が多いと思います。メモアプリでいえば、EvernoteやGoogle Keepにもタグの機能があります。

iPhoneのメモでも、2021年のiOS15からタグが使えるようになりました。これによって、フォルダやテキスト検索に頼らずとも、タグリストから該当するメモを簡単に探すことができるようになりました。

ハッシュタグというのは、人間の脳でいえば、「思い出すためのキーワード」のようなものだといえるでしょう。私たちは、日頃、ある特定の言葉を聞くと、それに関わりの深い出来事(エピソード)や知識などが次々と頭に浮かんでくるといったことがあります。これは、たとえて言えば、それぞれのメモ(記憶)に共通のハッシュタグがつけられているからかもしれません。

フォルダの壁を超えて情報が関連づけられているからこそ、思い出は断片的ではなく、夢と同じように一貫した物語として想起されるのかもしれませんね。

タグのつけかた

タグのつけかた(登録の仕方)は簡単です。新規メモでも既成メモでも、入力画面の任意の箇所に、半角の#につづけて好きなキーワードを入れるだけです。キーワードの後には、必ず半角または全角のスペースを入れるか、改行しなければタグは登録されませんので、ご注意ください。タグ名が黄色く変わればOKです。

いったんタグが登録されると、「フォルダ」一覧画面のタグセクションに「タグ」が一覧表示されます。検索するときは、この中から好きなタグをタップすれば、タグ名を含むメモの一覧が表示されます。この中から、好きなメモを選べば、目的のメモに一発でアクセスすることができるのです。

脳内でも、同じようなタグづけの機能が働いているのではないか、と私は想像しています。忘れてしまった何かを思い出そうとするとき、私たちは、それに関連する「キーワード」を手がかりに、いくつもの「メモ」を絞り込み検索式に探して思い出すことはないでしょうか。

そのような検索の仕方は、フォルダを階層的にたどるよりも手っ取り早いことが少なくないような気がしますが、いかがでしょうか。iOS15でメモアプリにハッシュタグが導入されたことは、メモアプリの検索性能をさらに高めるもので、歓迎すべき機能アップといえます。

最後に、注意点を2点まとめておきたいと思います。

【注意ポイント】

  1. メモアプリでハッシュタグが利用できるようになるのは、「iOS15」にアップデートしたデバイスです。アップデートを実施していない場合、ハッシュタグを付けても反応しません。まだお済みでない方は、iOS15へのアップデートを行って下さい。
  2. #とキーワードの間には空白を入れないでください。また、キーワードの後には必ず半角または全角のスペースを入れるか、改行しなければタグは登録されませんので、ご注意ください。タグ名が黄色く変わればOKです。
  3. iPhoneの設定で「タグに自動変換」が有効になっていないことで、ハッシュタグが付けることができなくなっていることがあります。「設定アプリ」を起動し、「メモ」を開いてください。設定項目内の「タグに自動変換」のスイッチトグルがオンになっていることをご確認ください。

スマートフォルダ

iOS15から新しく導入された「スマートフォルダ」は、複数のタグを自動的に一つのフォルダに表示してくれる機能です。これは、タグを一つ上位の階層に統合するような働きをします。メモアプリEvernoteにあるタグの階層化とよく似た機能といえるかもしれません。スマートフォルダの作成手順は次の通りです。

スマートフォルダ作成の流れ

  1. フォルダ画面の左下のをタップする
  2. 新規スマートフォルダの画面で新規スマートフォルダ名を入力する
  3. タグのリストから、フォルダに含めるタグ(複数可)をチェックし、「完了」をタップする
  4. 「フランスの世界遺産」というスマートフォルダが作成され、タグを含むメモが表示される
  5. フォルダ画面に戻ると、歯車のついたスマートフォルダが表示される

スマートフォルダには、指定したタグをすべて含むメモだけが自動抽出されて表示されます。つまり、タグにもとづく条件絞り込みAND検索の結果が表示されるわけです。OR検索でない点に注意が必要です。

「フランスの世界遺産」フォルダについていえば、#世界遺産と#フランスのタグを両方ともつけたメモだけがスマートフォルダに入ることになります。これは非常に便利な機能です。というのは、階層的フォルダでこのようなフォルダを作成するには、「世界遺産」フォルダの下に、すべての国のサブフォルダを作成しなければならず、世界遺産の参加国数が200カ国近くある現状を考えれば、ほとんど実現不可能だからです。タグであれば、国が増えるたびに国名のタグを増やしていけば済むので、効率的です。サブフォルダをあまり増やすのは情報整理上も、フォルダ検索上もあまり好ましくありません。

もっとも、わざわざスマートフォルダを作らなくても、「タグセクション」から複数のタグをタップすれば、AND検索による「絞り込み検索」が可能です。iPadではこれがワンタップでできますが、iPhoneでは、1つのタグをタップし、次の画面でもう一つのタグをタップすることによって絞り込んでいくという風に、若干仕様が異なっているようです。

このように、フォルダとタグを上手に組み合わせることによって、メモの保持、想起を容易にすることができます。フォルダやタグ(スマートフォルダ)はいつでも変更、削除、移動、統合が可能ですから、脳内の階層的記憶ネットワークのように、絶えず柔軟に自己組織化をはかることによって、メモアプリの性能を常に維持、更新することが必要でしょう。

最後に

長い解説にも関わらず、最後までご覧いただきありがとうございます。

iOSのメモアプリは、パッと見ではEvernoteなどに比べて機能が乏しいと思われがちですが、実際に使いこなしてみると、実に多機能で高性能なアプリだと感心するばかりです。

メモ・表作成・音声入力などそれぞれの機能を持つアプリを複数インストールするより、このメモアプリ1つに集約した方が便利です。「便利なメモ帳」程度に考えているともったいないと言えるでしょう。このことを少しでも多くの方に知っていただければうれしいです。

iOSのメモアプリは、Apple創業者のスティーブ・ジョブスの「シンプルで洗練された」ものづくり思想の一つのあらわれだと思います。

ちなみに、Googleにも「Google Keep」というメモアプリがあって、それも無料で使えます。同様にメモ機能だけでなく、手書きや音声入力、共有機能がついていて便利です。Google Keepの解説は下記にありますので、よろしければどうぞ。

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