テクニカルなSEOの世界では「質の高いコンテンツ=上位獲得」になるわけではありません。

競争から抜け出すには、コンテンツの内容だけでなく被リンクの獲得数も関わってきます。「質の良い被リンク」は「質の高いコンテンツ」である可能性が高いからです。

ただし、被リンクを獲得するのはかんたんなことではありません。この問題を解決する際に役立つのが、今回紹介する「スカイスクレイパーテクニック」です。本記事では、スカイスクレイパーテクニックの特徴と、具体的な実践方法を解説します。

スカイスクレイパーテクニックとは?

スカイスクレイパーテクニックとは?

スカイスクレイパーテクニック(The Skyscraper Technique)とは、日本語では「超高層建築物」という意味で、簡単に言えば被リンクを増やす施策となり、そのやり方はこうです。

  1. 被リンクを獲得しているコンテンツを見つける
  2. より優れたコンテンツを作る
  3. リンク元に自社コンテンツを宣伝する

より具体的に書くとこうなります。

  1. 被リンクをたくさん獲得している競合記事を探す
  2. 競合記事より優れた記事を作成する
  3. 競合記事を紹介している各サイトの運営者に、自分が作成した記事をメールやDMなどで知らせて、被リンクをもらう

要するに、被リンクをたくさん獲得している競合記事から被リンクを奪い去る手法です。Eメールを使って「僕の記事を紹介した方が得だから、乗り換えてね」と連絡するわけです。ちょっとした営業的手法も取り込んでいるのがポイントで、それゆえに効果も明確に出やすい側面があります。

なぜ「超高層建築物」かというと、「世界一高いビルよりも高いビルを建てれば1位になれる」と言った発想からきています。記事執筆の際、下調べとして競合記事を調べることがありますが、その中で「一番良い記事を書こう」と決めて執筆に取りかかることがあります。その発想と似ているところがあります。

誰が考案したの?

スカイスクレイパーテクニックは、米国のSEOメディア「Backlinko」の設立者であるBrian Dean氏が2015年に考案したものです。ブライアン氏はスカイスクレイパーテクニックの実践で14日間で自然検索数を約11%増加させたと発表しています。

スカイスクレイパーテクニックの実践結果

参考: Backlinko

発表後、スカイスクレイパーテクニックがSEO業界で脚光を浴びました。資金力やコネがない人でも実践できるのがスカイスクレイパーテクニックの魅力と言えます。
参考: How to Execute the Skyscraper Technique (and Get Results)

検索エンジンで1位を狙う意味とは

そもそも検索エンジンで1位を狙う意味とはなんでしょうか?この答えを探るには、2021年にseoClarityが「日本の Google検索1〜20位までのクリック率」についての調査結果が参考になります。

seoClarity

参考: seoClarity

順位 CTR
1位 13.94%
2位 7.52%
3位 4.68%
4位 3.91%
5位 2.98%
6位 2.42%
7位 2.06%
8位 1.78%
9位 1.46%
10位 1.32%

1位になるか2位以下になるかでアクセス数が大きく変わることが分かります。

キーワードの種類によっても変わってくると思いますが、1位のクリック率が抜きん出ていることは覚えておいてください。ちなみに、参考グラフの7〜15位のクリック率よりも、16〜20位のクリック率の方が高いのが興味深いところです。

スカイスクレイパーテクニックの実践方法:3ステップ

スカイスクレイパーテクニックは、以下3ステップで実行できます。

  1. 被リンクを獲得しているコンテンツを見つける
  2. より優れたコンテンツを作る
  3. リンク元に自社コンテンツを宣伝する

被リンクを獲得しているコンテンツを見つける

被リンクをたくさん獲得しているコンテンツを見つけるには、以下の方法がおすすめです。

  • キーワードをGoogle検索
  • 上位コンテンツの被リンク数をツールで分析
  • リンク元をリストとしてまとめる

被リンクをたくさん獲得しているコンテンツの多くが、検索上位にランクインしているものです。

検索上位を獲得しているコンテンツをピックアップして、被リンクをどれくらい獲得しているのか確認しましょう。

キーワードではなく、競合サイトのURLから「被リンクをたくさん獲得しているコンテンツ」を抽出する方法もあります。

  • ツールで競合調査
  • 気になる競合サイトをツールで分析
  • 被リンクをたくさん獲得しているコンテンツを見つける

この方法の場合、競合他社の有力コンテンツを炙り出せるメリットがあります。

「このサイトはどんな記事で被リンクを獲得しているか?」が分かるのが特徴です。スカイスクレイパーテクニックだけでなく、サイト運営やキーワードの選び方なども参考にできるでしょう。

被リンク元の確認はツールが必要

競合コンテンツの被リンクを確認するには、有料ツールが必要になります。というのも被リンク数のみなら無料ツールで事足りますが、リンク元を調べるには有料ツールが欠かせないからです。

被リンク元を確認できるメジャーなツールは以下の通り。

  • ahrefs
  • Moz Pro
  • Majestic

ahrefs

ahrefs

ahrefsは、世界的に人気なSEO分析ツールです。被リンク元の確認・増減、検索順位、競合分析といった機能を搭載した高機能な分析ツールです。詳しい機能解説記事もあります。

月額料金:99ドル〜999ドル
公式サイト: https://ahrefs.com/ja

Moz Pro

Moz Pro

Moz Proは、シンプルなUIで使いやすいSEO分析ツールです。

コンテンツのURLを入力するだけで、被リンク元をチェックできます。被リンク元のスパムスコアも分かるので、質の良い被リンクかどうか判断する際にも役立つでしょう。30日間の無料体験が利用できます。

月額料金:99〜599ドル
公式サイト: https://moz.com/products/pro

Majestic

Majestic

Majesticは月額49ドルから利用できるリンクビルディングツールです。

SEO分析ツールとしても使えますが、より被リンク戦略に特化しているのが特徴的。既にSEOツールを導入しているものの、より被リンク分析に力を入れたい方に最適と言えるでしょう。

月額料金:49〜399ドル
公式サイト: https://ja.majestic.com/

被リンクしているサイトをリストにまとめておく

既存の記事に被リンクしているサイトを見つけたら、スプレッドシートやExcelなどにリストとして保存しておいてください。

どのサイトに連絡したのかや、被リンクを獲得できたかなどを記入しておきましょう。被リンクの承認率を計算する時に便利です。

より優れたコンテンツを作る

ターゲットを見つけたら、より優れたコンテンツを作る必要があります。「数ある競合記事の中で一番良い記事を書く」という意識で書くと良いのですが、もう少し具体的に言うと、高品質コンテンツをつくるということです。

高品質コンテンツとは何か。下記記事で詳しく解説しています。

  1. 独自性がなければ高品質コンテンツは作れない
  2. E-A-T(専門性・権威性・信頼性)を意識する
  3. 高品質かどうかはサイト全体で判断される

リンク元に自社コンテンツを宣伝する

コンテンツが完成したら、参考にしたコンテンツにリンクしているサイトへ、自社のコンテンツに被リンクしてもらえないか直接問い合わせます。

連絡手段はEメールがベターですが、サイトの問い合わせフォームやSNSのDMでも良いでしょう。相手の迷惑とならない連絡手段が選べるといいですね。Eメールで送信する際は、以下の例文を参考にしてみてください(そのまま送信してほしいのではなくて、どういうスタンスで送信するかの参考にしてほしいだけです)。

<Eメールの例文>
〇〇(サイト名)様「xxx」というキーワードで調べ物をしていたところ、
「相手のサイトのURL」というページを見つけました。

それにインスピレーションを得て、
突然のご連絡で申し訳ないのですが、
私も「xxx」のテーマで記事を書いてみましたので、紹介したくなりました。
【自社コンテンツURL】

〇〇様がリンクしている「競合コンテンツURL」より
新しく、少し掘り下げた内容になっています。

よろしければご覧頂けると嬉しいです。
〇〇様のサイトはとても見やすく分かりやすいので、今後も参考にさせていただきます。

それでは失礼いたします。

【あなたのサイト名と氏名】

「被リンクしてください!」とお願いするより、相手が紹介したいと思えることが理想です。そのためには、記事を丁寧に書くことが前提として必要になってきます。あくまでもこちら側は提案であって、相手にとってメリットがあることが成功の秘訣でしょうか。

Backlinkoのブライアン氏は、160件のメールを送信したところ、17件から被リンクを獲得できたと言っています。10%が被リンクしてくれたということですが、そんなものでしょう。

ただ、「全く新しいコンテンツに最小限のコストで17件の被リンクが獲得できた」という事実は、個人ブログ運営者や中小企業のサイト運営者にとっても希望になるのではないでしょうか。良いコンテンツを武器に、被リンク獲得に動きましょう。

意識しておきたいポイント

スカイスクレイパーテクニックで失敗しないために意識しておきたい点をまとめました。

  • コピー記事にならないようにする
  • 質の悪い被リンクは避ける
  • 全ての要素で競合コンテンツを上回る

コピー記事にならないようにする

当たり前ですが、コピー記事にならないように注意しましょう。

既存記事を参考にしてコンテンツを作ろうとすると、文体を変えてもコピーコンテンツと判断されることがあります。記事執筆前に既存記事から情報を得ること自体は問題ありませんが、基本的に既存記事を参考にするのはおすすめしません。

理由は、オリジナリティが失われるからです。既存記事を参考に書くのは、実力や経験が乏しいライターによる手抜きのためのテクニックで、見る人が見れば一瞬でバレバレなのでやめた方がいいでしょう。

時々、「コピペチェックツールで確認すれば大丈夫」と書いているブロガーがいますが、指摘されないだけで内容をパクっているのはバレているというわけですね。なぜバレるかというと、書いている本人が理解して書いてないからです。ゆえに、内容の薄さが際立ってしまうのですね。

コピーコンテンツは、記事単体だけでなくサイト自体の評価を下げる原因になります。さらに、コピーコンテンツで紹介記事を書いても、紹介された方が嬉しくありません。

既存記事から学ぶのはいいですが、それを自分のものとして吸収し、必ず独自の見解のものとしてコンテンツを発信しましょう。

>> 絶対に競合ブログの真似をしてはいけない

質の悪い被リンクは避ける

「質の悪い被リンク」とは、以下のようなものを指します。

  • 過剰な相互リンク
  • 量産サイト・コンテンツからの被リンク
  • 低評価サイトからの被リンク

上記は読者の利便性を損ねる原因になるでしょう。

Googleは「スパムリンク」として判断し、サイトの評価が下がってしまいます。被リンクは数だけでなく質が重要です。ツールを活用して、被リンクの質自体もチェックするようにしましょう。

>> スパムアップデートとは?5つの対策方法を知ってサイト運営に役立てよう

全ての要素で競合コンテンツを上回る

Backlinkoのブライアン氏は、より優れたコンテンツを作る際に大切な「より長く」「より最新で」「より美しく」の全ての要素で、競合コンテンツを上回ることを推奨しています。

競合コンテンツを上回るコンテンツを作るのは至難の業と思うでしょう。確かにそうです。

ただ、1つだけコツがあります。それは競合コンテンツを作成した人の誰よりも、そのテーマをよく理解した上で書くということです。多くの人は、競合記事を参考にするあまり、似たような記事を書いてしまいがちですが、それでは劣化版にしかなりません。

結果として負けても構いません。結果だけにこだわるよりも、過程の段階で「一番良い記事を書こう」という意識で書くのが一番良いですね。

まとめ:日本ならではの手法

スカイスクレイパーテクニックは、うまくいけば明確に被リンクが得られるSEO施策です。ただ、この手法はあくまで米国で流行ったものであって、日本で使えるかと言うと「使えないこともない」というところでしょうか。いくら効果があったと言っても、実践的でなければ意味がありません。

日本ならではの、スカイスクレイパーテクニックよりも実践的で効果のある手法も存在します。やり方は似ているのですが、例えばツールの解説記事をアップするとします。その解説記事をツールの作成者に伝えるのです。その報告に喜んでくれたツール作成者は、あなたの記事を紹介してくれるかもしれません。

  1. ツールやサービスの解説記事を書く
  2. ツールやサービスの作成者に解説記事を送る

これも実に有効的な被リンク獲得方法です。

スカイスクレイパーテクニックがもてはやされていますが、必ずしも同じ手法をとる必要はありません。自分のサイトに合ったやり方で、被リンクを獲得することは可能です。