WordPress(ワードプレス)は世界シェアTOPのCMSです。
無料で使えるオープンソース型CMSの代表格であり、機能性や利便性に優れていますが、Web上にはWordPressに対する見当違いな批判や誤解が散見されます。

もちろん、WordPressは完璧なCMSではありませんし、唯一絶対の選択肢というわけでもありません。弱点もあります。ただ、「それは的外れでは?」という批判がチラホラと見受けられるので、この記事では、WordPressに関するよくある批判や誤解を取り上げ、それらに対する反論を述べてみたいと思います。

CMSとWordPressの違いとは?

CMSとWordPressは別物だと思っている方もいるかもしれませんが、WordPressもCMSの一種です。

CMSはコンテンツマネジメントシステム(Contents Management System)の略で、記事や画像、動画などのコンテンツを管理してWebサイト運用を効率化するシステムを指します。CMSの特徴や種類、メリット・デメリットについて詳しくは、以下の記事で解説しています。

WordPressはCMSの中ではオープンソース型CMSと呼ばれるタイプです。
無料でダウンロードできるWordPressのファイルを、Webサーバーにインストールしてサイトを構築します。CMS市場の約65%(2022年4月時点)という圧倒的なシェアを誇るCMSの代表格であり、世界中のWebサイトの実に40%がWordPressで構築されています

WordPressについて詳しくは、以下の記事をご覧ください。

WordPressに関するよくある7つの誤解

ここからは、WordPressへのよくある批判や誤解を取り上げ、それらに対する反論を述べていきます。

サーバーへのインストールが難しい

「WordPressはサーバーへのインストール作業が難しい」と言われることがありますが、何も難しいことはないと思います。

ほとんどのレンタルサーバー(ホスティングサーバー)は、WordPressの簡単インストール機能があり、ほんの数分でWordPressのインストールは完了するからです(専門知識は不要)。
参考:エックスサーバーのWordPress簡単インストール

サーバーへのインストールが難しいという主張は、クラウド型CMSや無料ブログサービスを売りたい企業のポジショントークだといえます。そもそも、WordPressのインストール程度の作業を難しいと捉えていたら、この先のWebサイト運用も危ういレベルです。

管理画面の操作が難しい

シンプルな無料ブログサービスなどと比べれば、WordPressの管理画面は「難しそう」という印象があるかもしれません。しかし実際は、最低限のITリテラシーがあれば誰でも使いこなせます。

WordPressの管理画面(ダッシュボード)

WordPressの管理画面(ダッシュボード)。ブログサービスで記事の編集や投稿をおこなった経験があるなら難なく使いこなせる程度のレベル

本格的なカスタマイズは専門知識が必要ですが、ページの編集や投稿、画像のアップロード、プラグイン(拡張機能)の追加、レイアウト変更など、通常のWebサイト運用の範囲であれば何ら難しいことはありません。何度か管理画面に触れればすぐに慣れます。

企業サイトには向かない

WordPressは所詮個人サイト向けであり、企業サイトの構築には向かないという主張がありますが、事実ではありません。

なぜなら、中小企業から上場企業まで、WordPressは企業サイトの構築に広く使われている実績があるからです。

参考までに、上場企業のWebサイトで使われているCMSを調査した「DataSign Report 上場企業 CMS調査 2021年8月版」では、WordPressが全CMSの中でランキング1位の使用件数(3110件)になっています。企業サイトに向かないという主張が真実なら、このような結果にはなっていないはずです。

企業サイトを作るには大規模なカスタマイズが必要という意見もありますが、コーポレートサイトや求人サイト向けのデザインテンプレートを使えば、比較的簡単に企業サイトを構築できます。
>> TCDのコーポレートサイト向けWordPressテーマ一覧

専門用語が多い

WordPressは専門用語が多く初心者には理解が難しいという主張もあります。

人それぞれの主観が大きいので、何とも言えない部分ではありますが、WordPressの専門用語といっても、最低限の運用に必要なのはサーバー、ドメイン、プラグイン、テーマ、ウィジェットなどで、そこまで難解な概念ではありません。

WordPressの基本的な用語の意味
サーバー インターネット上の土地のようなもの。ここにWordPressをインストールする。
ドメイン インターネット上の住所のようなもの。WordPressサイトの公開に不可欠。
プラグイン WordPressサイトに追加できる拡張機能。
テーマ WordPressサイトのデザインを着せ替えるためのテンプレート。
ウィジェット サイドバーやフッターなどにコンテンツを簡単に追加できる機能。

TCDでは、これらの用語の解説も含めて、WordPressの基本的な概要や使い方をまとめた「WordPress使い方大全集」というページをご用意しています。こちらを見ていただければ、より理解が深まるはずです。

セキュリティリスクが高い

WordPressはユーザー数が多くソースコードが公開されている性質上、サイバー攻撃の標的にされやすく、セキュリティリスクが高いという指摘です。

しかし、セキュリティ被害は多くの場合、セキュリティに対する意識の低さやメンテナンスの不備や怠慢によるものであり、「WordPressだからセキュリティリスクが高い、危険」ということには必ずしもなりません。

世界中に利用者を抱え、巨大なコミュニティを形成しているWordPressは、脆弱性を見つけて指摘してくれる善意のハッカーが多く存在します。それによってセキュリティ面のアップデートが頻繁に実施されており、脆弱性を埋めるための対策がおこなわれ続けています。

また、ログイン周りの強化として極めて有効な二段階認証(二要素認証)を実装するためのプラグインも用意されているため、WordPressそのものはむしろセキュリティに優れているCMSです。

もちろん、WordPressのバージョン更新やログイン周りの強化といったセキュリティ対策を怠れば、セキュリティ被害のリスクは大きく上がります。以下の記事で紹介している対策は最低限、実施する必要があるでしょう。

表示速度が遅い

静的CMSやHTMLサイトに比べれば、動的CMSであるWordPressは表示速度で劣る傾向にあります。

しかし、「WordPressだからサイトが重くなる」というのは少し乱暴な主張です。
サイトの表示速度には、使用するサーバーのスペックやサーバーのPHPバージョン、使用しているテーマ、アップロードしている画像サイズ、インストールしているプラグインの数など、実に様々な要因が関係しています。WordPressそのものが、表示速度を決める唯一の要因ではありません。

以下の記事で紹介しているような高速化の工夫をおこなえば、WordPressサイトでも表示速度は担保できます。

ソースコードが汚くSEOで不利になる

WordPressは出力されるソースコードが汚いからSEOで不利になるという主張もあります。
本職のプログラマーやエンジニア、SEO専門家が見れば、気になる箇所や不完全な部分はたしかにあるのかもしれません。

しかし、ソースコードの綺麗さや正しさがSEOに影響するという考え自体が、もはや時代遅れだといえます。

綺麗で正しいソースコードを記述したからといって、検索順位を押し上げるような効果はありませんし、記述が多少SEOのセオリーから外れていても、検索順位を不当に下げられることもありません。

「ソースコードが汚いとSEOに致命的」「ソースコードの綺麗さ = SEOに強いサイト」といった主張のSEO業者や制作会社も存在しますが、ただのポジショントークなので気にする必要はないでしょう。

もちろん、サイトのメンテナンスや管理のしやすさのためにソースコードを意識するメリットはありますが、検索で上位表示するためにソースコードが重要というのは誤った考えです。

WordPressは万能なCMSなのか?

ここまで、WordPressに対する批判や誤解と、それらに対する反論をご紹介してきました。

いささか、WordPressを擁護する形になりましたが、決してWordPressが万能なCMSだと言いたいわけではありません。

CMS市場のシェアNo.1で、知名度が圧倒的ということもあり、「サイトを作るならとりあえずWordPress」という風潮があるのは事実ですし、多くの場合それは正しい選択になり得ますが、他のCMSやツールを使ったほうがいいケースも存在します。

たとえば、動的サイトを作れることがWordPressの特徴の一つですが、小規模なコーポレートサイトや数ページで構成されるミニサイトなどは、WordPressの多機能さを持て余してしまう可能性があります。この場合、シンプルかつ軽量なHTMLサイトや静的CMSのほうが適しているかもしれません。

その他、セキュリティリスクに厳しい上場企業などでは、オープンソース型CMSをそもそも禁止されているケースもあり、WordPressを現場で導入したくても許可が降りないということもあり得えます。他のCMS(パッケージ型かクラウド型)を検討するしかありません。

WordPress以外の選択肢がおすすめなケースを簡単にまとめると、

  • 5~20ページ程度の超小規模サイト = 静的CMSや「SIRIUS」などのHTMLサイト作成ツール
  • セキュリティを重視する上場企業など = クラウド型やパッケージ型のCMS
  • 保守運用できる人材が自社にいない = サーバーの管理が不要なクラウド型CMS

といった形になります。おすすめのCMSやホームページ作成ツールは以下の記事にまとめているので、選定時の参考にしてみてください。

【まとめ】WordPressに関するよくある誤解と反論

WordPressに関するよくある誤解と反論まとめ
サーバーへのインストールが難しい レンタルサーバー(ホスティングサーバー)の簡単インストール機能を使えば専門知識不要。数分で完了する。
管理画面の操作が難しい ブログサービスとほとんど大差はない。最低限のITリテラシーがあればすぐに慣れる。
企業サイトには向かない 上場企業でも使われている。実際、「DataSign Report 上場企業 CMS調査 2021年8月版」では、WordPressが全CMSの中でランキング1位の使用件数(3110件)になっている。
専門用語が多い 最低限の運用に必要なのは、サーバー、ドメイン、プラグイン、テーマ、ウィジェットなどで、そこまで難解な概念ではない。
セキュリティリスクがある WordPress自体が危険なのではなく、ファイルのバージョン更新やログイン周りのセキュリティ対策を怠ることにリスクがある。それらを徹底すれば過度に恐れることはない。
表示速度が遅い 表時速度はサーバーのスペックやサーバーのPHPバージョン、使用しているテーマ、アップロードしている画像サイズ、インストールしているプラグインの数など多くの要因が関係している。「WordPressだから遅い」という単純な図式ではない。
ソースコードが汚くSEOで不利になる そもそもソースコードは検索順位にほとんど影響しないため(極端にひどい記述でない限り)、SEOで不利にはならない。

このように、オープンソース型CMSであるWordPressに対しては、見当違いな批判や誤解がWeb上に散見されます。そのほとんどは、競合となるCMS販売企業が意図的にWordPressを貶める目的か、あるいは、知識不足によってWordPressの性質を正しく認識できていないかのどちらかです。

いずれにしろ、WordPressについて正しく理解していただくために、この記事が参考になれば幸いです。

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第1回 :CMSとは?
第2回 :無料で使える7つのCMSを比較
第3回 :主要15個のCMSの料金比較
第4回 :WordPressにある誤解と反論(当記事)