世の中で「コンテンツマーケティング」と称して生み出されているコンテンツ(記事)には、致命的な問題があります。

その問題とは、GoogleのSEOという狭い視点に偏ってコンテンツをプランニングしていることです。「Googleに評価されるためには、どんな情報をどれくらい盛り込めば良いのか?」という安易なSEO思考に囚われており、コンテンツを作ることで得たい成果やユーザーに提供したい価値といった部分は、ほとんど考慮されずにコンテンツが作られています。

そのようなコンテンツは、言ってみれば目的不在・ユーザー不在のコンテンツです。Googleが評価してくれそうな情報を羅列しただけの、それっぽい何か。Googleに評価されてアクセスを集めることはあっても、人の感情を動かすことができないので、ブランドイメージ向上や問い合わせ増といったビジネス上の成果にはつながりません。

検索エンジン起点のコンテンツは目的不在・ユーザー不在

ここで重要な結論を述べますが、コンテンツを通じて何かしらの成果を上げるには、コンテンツを通じて達成したい目的(ゴール)を明確にし、そこから逆算してコンテンツの切り口(誰に、何を、どのように伝えるのか?)をプランニングすることが重要です。

この記事では、SEO思考に偏ったコンテンツ作成手法の問題点を指摘しつつ、成果を上げるコンテンツを作るための「逆算思考」について詳しく解説します。

Web制作関係者やマーケター、ライターなど、コンテンツ作成に関わる方々にとって大きな気付きになるはずですので、参考にしていただければ幸いです。

推奨できない、SEO思考に偏ったコンテンツ作成手法

まずは、ありとあらゆる業界でおこなわれている、SEO思考に偏ったコンテンツ制作手法を見ていきましょう。細かな差はありますが、「コンテンツSEO」などと称してコンテンツを作っているところは、大体どこも以下のフローに従っています。

SEO思考におけるコンテンツ作成手法のフロー

以下で、この手法の詳細を補足します。

ステップ1. Google検索結果の上位10ページをチェックする

まず、上位表示を狙うキーワードでGoogle検索した際の上位10ページの内容をチェックし、それぞれのページのタイトルや見出し、総文字数などを把握します。把握した情報は、以下のようにスプレッドシートにまとめることが多いです。

検索結果TOP10のリサーチシート

ステップ2. 上位10ページの内容を網羅した記事構成を作る

Googleの検索結果上位10ページに共通して書かれている内容を可能な限り網羅して、記事の構成案(骨子)を作ります。

1つのページだけから内容を抜き出すと構成があまりにも似通ってしまうので、複数のページを参照して、それらのページで言及されている内容(主に見出し)を上手く組み合わせていきます。SEOを目的として書かれた記事の構成がどれも似たり寄ったりなのは、このような背景があるからです。

ステップ3. 複数の参照サイトの内容をリライトする

ほとんどの場合、執筆を担当するライターは特定分野に関する専門知識を持たないため、複数の参照サイトに書かれている内容を切り貼りして記事を作ることになります。いわゆるリライト、もっと言えばコピーコンテンツです。

テキストをそのままコピペすれば問題になるので、言い回しを微妙に変えることでリスクヘッジをします。

この手法の何が問題か?

上記のようなSEO思考でコンテンツをプランニングすることの最大の問題点は、コンテンツ作成の目的(ゴール)が見えていないことです。

本来、コンテンツはビジネス上の目的(ブランドイメージ向上や問い合わせ増)を達成するための手段であり、コンテンツを作る以上、「このコンテンツを通じて何を達成したいのか? どのような結果を得たいのか?」という目的を明確にしなければいけません。

コンテンツを通じて達成したい目的が明確になれば、目的を達成するためにユーザーに抱いてもらうべき感情や、その感情を喚起するための切り口(誰に、何を、どのように伝えるのか?)も自ずと決まり、コンテンツに持たせるべき機能や要件を合理的な根拠を持ってプランニングできます。

つまり、コンテンツは目的・ゴールから逆算してプランニングする必要があるということです。Googleの検索結果から逆算してプランニングするものでは決してありません。

もちろん、検索結果の上位10ページの傾向をリサーチすること自体は、必ずしも悪いことではありません。大まかなユーザーニーズの把握に役立つことはありますし、競合のコンテンツ内容を知ることは、自社コンテンツにおける差別化要素(独自性)を見つけるキッカケにもなり得るからです。

しかし、コンテンツの目的やユーザーに与えたい感情、その感情を生ませるための切り口といった要件をプランニングせず、単に検索結果の上位ページに書かれている内容を抜き出してまとめるだけでは、それはただの情報の羅列であり、コンテンツとして機能しません。

「コンテンツとして機能しない」とは、ユーザーの感情に何の影響も与えられないということを意味します。ユーザーの感情に影響を与えられなければ行動にもつながらないため、ビジネス上の成果が上がることも決してありません。

成果を上げるコンテンツは逆算思考で作る

繰り返しになりますが、成果を上げるコンテンツを作るには、コンテンツを通じて達成したい目的や得たい結果から逆算して内容をプランニングする必要があります。

逆算思考によるコンテンツプランニング

以下で、実際のコンテンツの例を交えながら、逆算思考を用いたコンテンツプランニングの具体的なノウハウをご紹介します。

↓↓今回事例として取り上げる記事はこちら

ステップ1. 目的(ゴール)を明確化する

まずは、コンテンツを作成することで達成したい目的(ゴール)を明確にします。

目的とは、コンテンツを通じて得たい最終的な成果のことです。問い合わせや商品購入などのコンバージョン、あるいはブランドイメージや認知度の向上が主な目的になります。事例として挙げたコンテンツでは、「ライター応募に関する問い合わせ獲得」を目的としています。

ちなみに「検索順位で◯位獲得」は、コンテンツを作る際の目的としては不適切なので注意してください。検索順位を目的にすると、Googleにいかに評価されるか? という思考に陥り、Googleの検索結果を起点にしたコンテンツプランニングになってしまうからです。すでに述べたように、それでは何の機能も持たない情報の羅列になり、成果を上げるのが難しくなります。

ステップ2. 読後感情を設定する

目的を明確にしたら、その目的を達成するためにユーザーに抱いてもらうべき感情は何か?という仮説を立てます。専門的な言葉を使えば「態度変容」を促すということです。

商品購入や問い合わせなど、ユーザーが何か行動を起こす際、そこには感情の変化が必ずあります。「これをやれば自分の悩みが解決するかも」「これは知っとかなきゃマズイぞ」など、ポジティブ・ネガティブの差はあれ、何かしらの感情が動くことで人は特定の行動を起こします。逆にいえば、ユーザーの感情が動かなければ行動にはつながらず、コンテンツの成果も上がらないということです。

したがって、どのような感情を喚起すればユーザーは行動を起こしてくれるのか? を見極める必要があります。

事例として挙げたコンテンツでは、「ライターって稼げないって聞くけど、どうなんだろう?」→「ライターって稼げるんだ! あと、このメディアの記事執筆の仕事、けっこう高単価だな。応募しようかな」という読後感情を設定しています。

作成するコンテンツのテーマ・ジャンル・市場に関する知識・経験が豊富にあれば、ユーザーの読後感情の見極めは容易でしょうし、精度も高いはずです。知識・経験がない場合は、「◯◯◯ 悩み」「◯◯◯ 本音」などのキーワードでGoogle検索したり、クラウドソーシング経由でユーザーアンケートを実施したりして知見を蓄えるのがおすすめです。

ステップ3. 切り口を設定する

読後感情が決まれば、その感情を生み出すために必要な切り口も自ずと見えてきます。

切り口とはコンテンツの見せ方のことで、「誰に、何を、どのように伝えるのか?」という要素から成ります。

誰に伝えるのか?
何を伝えるのか?
どのように伝えるのか?

事例として挙げたコンテンツでは、以下の切り口を設定しています。

Webライター未経験者もしくは現役ライター(現状稼げていない)向けに、Webライターがちゃんと稼げる仕事である根拠と稼ぐための具体的なハウツーを伝え、ライターとしてのキャリアに希望を持ってもらう。そして「高単価可」という訴求でライター募集ページへの導線を用意し、ライター応募の問い合わせ獲得につなげる。

ここまで見てきたように、目的 → 読後感情 → 切り口の順番でプランニングすることで、コンテンツの核となる要素が固まります。

この方法の利点は、ユーザーの感情に着目できる点だと個人的に思います。コンテンツはユーザーありきのものですから、コンテンツに触れるユーザーを思い浮かべ、ユーザーの感情に配慮して、一つひとつの文章を紡いでいく必要があります。

逆算思考によるコンテンツプランニングでは、読後感情を設定し、その感情を喚起するための切り口を考えていくので、コンテンツの作り手の意識は必然的にユーザーの感情に向かうことになります。つまり、ユーザーファーストなコンテンツになりやすいということです。

少なくとも、検索結果を眺めたりSEOスコア判定ツールをいじくり回したりして作られるコンテンツよりも価値があるのは間違いありません。

【補足】コンテンツの執筆時はベネフィットを意識する

「ステップ2. 読後感情を設定する」の項でお伝えしたとおり、成果を上げるコンテンツを作るには、読み手であるユーザーの感情を動かす必要があります。そこで重要になるのが、ベネフィット(コンテンツを読むことで得られる利点、利益、得)という概念です。

コンテンツの文章を書く際は、すべての文章を読み手のベネフィットに結び付けることを意識してください。

すべての文章を
ベネフィットに結びつける。

読み手が面白いと感じる文章とは、読み手にとってのベネフィットが明確に認識できる文章のことです。逆に、つまらないと感じる文章とは、読み手にとってのベネフィットが認識できないものを指します。

例えばアフィリエイトでクレジットカードの商品説明を書く際、以下のような文章では大多数の読み手は「つまらない」と感じます。コンバージョンもしません。

「◯◯◯カード」は株式会社◯◯◯が発行するクレジットカードです。総発行数は約1億枚です。月会費1,000円、初月1ヶ月分無料です。カラーは赤、緑、青、黒、白の5色が展開されています。人気キャラクター◯◯◯とのコラボバージョンもあります。カードのタイプは通常、ゴールド、プラチナ、ブラックの4種類。ポイント還元は・・・

この文章は単に事実(特徴)を並べただけであり、その事実が読み手のベネフィットとどう関係しているのかが見えません。情報の羅列に過ぎないのです。

この文章を改善するなら、例えば以下のようになります。

「◯◯◯カード」は株式会社◯◯◯史上初のサブスクリプション制クレジットカードです。年会費をまとめて支払う必要がない、月会費1,000円の月額課金制。いつでも解約できるのでお試し感覚で気軽に発行できます。今なら初月無料のキャンペーンも実施されています。

「お試し感覚で発行できる」「リスクを減らせる」といった、読み手にとってのベネフィットが明確に認識できる文章に修正しました。

このように、コンテンツで展開するすべての文章は、読み手にとってのベネフィットと関連付けることが極めて重要です。一文を書き終わった後、あるいは執筆後の推敲時に、「この文章は読み手にとって意味があるのか? 読み手の欲求や願望と関係があるのか?」ということを自問自答してみましょう。情報を単に羅列しただけのコンテンツになってしまう事態を防ぐことができます。

まとめ

成果を上げるコンテンツを作るには、逆算思考が欠かせません。

コンテンツを通じて達成したい目的を明確にし、その目的を達成するために喚起すべきユーザーの感情を見極め、コンテンツで発信する情報の切り口を決める。

この流れでコンテンツをプランニングすれば、ブランド認知向上やコンバージョン獲得といった成果を出しやすくなります。これまでGoogleの検索結果起点でコンテンツをプランニングしていた方は、今回の記事でご紹介した逆算思考をぜひ意識してみてください。コンテンツの品質が明確に変わるはずです。

以下の記事も読めば、コンテンツやSEOの正しい理解が進みます。