PAAとは「People Also Ask(他の人はこちらも質問)」の略称です。
以下のように、Googleの検索結果に表示される質問と回答の欄のことを指します。
質問をクリックすると、アコーディオンが開き、以下のような回答が表示されます。
もともと、PAAは日本では導入されていませんでした。しかし2023年現在では、日本語圏の検索結果でもPAAの表示が多く確認されており、導入はほぼ完了しています(なお全ての検索結果において表示されるわけではありません)。
PAAが導入されたことで、検索ユーザーは自分が検索しているテーマの関連情報に手軽にアクセスできるようになり、検索の利便性が向上しました。サイト運営者側としては、PAAにコンテンツを表示させることで検索での露出機会を増やし、トラフィック獲得につなげることができます。
本記事では、PAAの仕組みをより詳細に解説したうえで、コンテンツをPAAに表示させるためのノウハウをお伝えします。
PAA(People Also Ask)の仕組み
PAAの概要は冒頭で説明したとおりです。ここでは、PAAの仕組みをさらに掘り下げて解説します。
PAAは探索機能の一つ
PAAは検索結果における探索機能の一つです。Googleは探索機能を以下のように定義しています。
ユーザーが元の検索を拡張して、より関連性の高い結果を表示するために役立つ機能。
出典:Google 検索の視覚要素ギャラリー | Google 検索セントラル | ドキュメント | Google Developers
PAAでは、特定のキーワードで検索するユーザーの多くが抱くであろうトピックをGoogleのAIが予測して、質問を自動的に生成しています。それにより検索ユーザーは、関連性の高い情報を探しやすくなり、検索の利便性が向上します。
つまりPAAは、情報の探索を助けるための機能だということです。
このように、質問をクリックすると、新たな質問がどんどん生成されていきます。そうやって検索ユーザーは、欲しい情報を探し求めることが可能なわけです。
質問の回答はコンテンツから抜粋
PAAの質問はGoogleのAIが自動生成しますが、質問への回答は実際のコンテンツから抜粋されます。
文字数の明確な決まりはありませんが、50〜150文字程度でコンパクトに抜粋されるケースがほとんどです。
コンテンツのどの部分を表示させるかは、サイトの運営者側ではコントロールできません。ユーザーへの回答として最適だとGoogleのAIが判断した部分が抜粋されます。
一般的には、疑問・質問への端的な回答や、定義の説明、具体例の列挙(箇条書き)といった部分が抜粋されやすい傾向にあります。また、テキストだけでなく、画像や動画、表などが表示されるケースもあります。
PAAと強調スニペットの関係
強調スニペットとの関係性を理解すると、PAAへの理解がより深まります。
以下は、強調スニペットの定義です。
Google の検索結果では、通常の形式と異なり、ページへのリンクが表示される前にそのページの内容を示すスニペット(抜粋)が表示されることがあります。このように表示された結果を「強調スニペット」と呼びます。
出典:Googleの強調スニペットの仕組み – Google 検索 ヘルプ
強調スニペットというと、一般的には検索結果の最上部に表示される抜粋をイメージされる方が多いかもしれません。
しかし、これだけが強調スニペットというわけではありません。実はPAAも強調スニペットの一種なのです。
表示される場所や形式こそ若干違うものの、検索ユーザーの疑問への端的な回答を表示し、ユーザーが素早く情報を得られるようにするための機能である点は全く同じだからです。恐らく、表示させるための基準や仕組みもある程度は共通しています。
実際、PAAの欄に表示されている、質問文で検索した際のGoogle検索結果へのリンクをクリックすると、飛び先の検索結果でも同じ抜粋が表示されるケースが多いです。
つまり、PAA = 強調スニペットという認識でほぼ問題はなく、PAAに表示させるためのノウハウは、強調スニペットに表示させるノウハウをそのまま流用できるということです(具体的なノウハウは次章でご紹介します)。
ちなみに、以下に挙げるようなコンテンツは強調スニペットに表示されません。
- 危険なコンテンツ
- 不正行為
- ハラスメント コンテンツ
- ヘイト コンテンツ
- 操作されたメディア
- 医療のコンテンツ
- 露骨な性的描写を含むコンテンツ
- テロに関するコンテンツ
- 暴力や残虐行為
- 下品な言葉や冒とく的表現
これらはPAAにも当てはまる基準なので、コンテンツを作る際は留意が必要です。
PAA(People Also Ask)に表示されやすくなるテクニック
前提として、PAAに表示させるための確実な方法は存在しません。
コンテンツがPAAに表示されるか否か、そして、コンテンツのどの部分が抜粋されるかは、GoogleのAIが決めることです。こちら側で完全に制御することはできません。
とはいえ、コンテンツがPAAに表示されやすくなるテクニックは存在します。以下でご紹介するテクニックを使えば、コンテンツがPAAに表示される確率を上げることができます。
端的な回答を記述する
検索ユーザーの疑問に対する回答を、端的に記述してください。
例えば用語解説系のコンテンツ(●●●とは?)であれば、用語の定義をコンテンツ冒頭(あるいは最初の段落の冒頭)で素早く提示します。
PAAの回答欄に表示される文字数が50〜150文字程度と短いことを考えれば、端的な回答を記述することは理にかなっています。
特にコンテンツ冒頭(リード)で、検索ユーザーの疑問や関心事に対する回答を素早く提示することは重要です。
PAAや強調スニペットに表示されやすくなるのはもちろん、コンテンツからの早期離脱を防ぎ、精読率を上げるのにも効果的だからです。コンテンツの冒頭部分はどうしても”ウォーミングアップ”として、検索ユーザーの疑問や関心事とは無関係な前置きをダラダラと書いてしまいがちです。
例えば「●●●は最近とても話題です。しかし、●●●についてよく知らないという人もいるのではないでしょうか・・・」 といった前置きです。テンプレートとして使いやすいのはたしかですが、このような文章が効果を発揮することは滅多にありません。ウォーミングアップはせず、最初からエンジン全開、全速力で話題を展開すべきです。
この記事も、コンテンツ冒頭、最初の一文目からいきなりPAAの定義・概要に切り込んでいます。一般的な冒頭文のテンプレからは逸脱しているかもしれませんが、個人的にはこれが最もユーザーファーストであり、かつPAAや強調スニペットとの相性がいいと考えています。
PREPの流れで主張を展開する
PREPの流れで一つひとつの主張を展開することも効果的です。
PREP法(プレップ法)とは、論理的な文章を書くためのフレームワーク(型)です。
Point(結論)、Reason(理由)、Example(具体例)、Point(結論)、それぞれの頭文字を取ってPREPと表します。PREPの順番を意識すると、誰が読んでもわかりやすい論理的な文章を簡単に書けるようになります。
出典:Webライター必修の文章作成スキル「PREP法」とは?論理的な文章を作るフレームワークを解説 | ワードプレステーマTCD
PREPのフレームワークはPAAと相性がいいです。PREPの各要素が、PAAの質問とリンクすることが多いからです。
-
- P:結論を単刀直入かつ端的に切り出す
→「●●●は何ですか?」 「●●●の意味は?」 といったPAAに回答が表示されやすくなる。 - R:結論に対する理由を述べる
→「●●●はなぜですか?」 「●●●の理由は?」 といったPAAに回答が表示されやすくなる。 - E:具体例を挙げる
→「●●●の例は?」 といったPAAに回答が表示されやすくなる。 - P:結論を再度述べる
→最初のPと同じく、「●●●は何ですか?」 「●●●の意味は?」 といったPAAに回答が表示されやすくなる。
- P:結論を単刀直入かつ端的に切り出す
何かを主張したり結論を述べたりする際は、PREPの流れで論理展開することをぜひおすすめします。文章がわかりやすくなりますし、情報の網羅性が上がることでSEOにも良い影響があります。さらにPAAにも表示されやすくなるとあって、メリットばかりです。
PREPについて詳しくは、以下の記事で解説していますので、よければご覧ください。
Webライターが真っ先に習得すべき文章スキルがあるとすれば・・・ 私は「PREP法(プレップ法)」 を挙げます。 PREP法とは、論理的な文章を書くための便利なフレームワークです。 PREPの流れに当てはめて文章を並べていくだけで、論理的で説得力ある記事を簡単に書くことができます。...
名詞を多く使った密度の高い文章を書く
情報が凝縮された高密度の文章を書くことも、PAA対策に有効です。
ポイントは、名詞をたくさん使うことです。
何か適当なキーワードでGoogle検索して、表示されたPAAをチェックしてみてください。PAAに表示されているコンテンツの抜粋を観察すると、大抵の場合、名詞がふんだんに盛り込まれた密度の高い文章であることに気付くはずです。
Googleの検索エンジンは名詞が大好物です。なぜなら、キーワードとして認識しやすいからです。
「素晴らしい」 「全然」 といった形容詞、副詞の場合、それ単体では固有の意味を認識できませんが、「デジタル販売」 「モバイル端末」 といった名詞はそれ単体で意味を認識できます。名詞を多く盛り込んだ文章を書くことで、コンテンツ内容をGoogleに理解してもらいやすくなる、というわけです。
しかも名詞を多く使えば文章をコンパクトにまとめられるので、PAAの狭い枠内に収まりやすい利点もあります。無駄に長ったらしい表現を使って文章を書くよりも、コンテンツが抜粋される確率は上がるでしょう。
補足として、名詞の配分を多くするには、主語と目的語をキチンと記述することが有効です。
主語 = 動作の主体となる名詞(あるいは代名詞)
目的語 = 動作の対象となる名詞(あるいは代名詞)
例えば「デジタルコンテンツは市場規模が伸びています」 という文の場合、「デジタルコンテンツ」 が主語で、「市場規模」 が目的語です。細かい部分ではありますが、「誰が、何を」 という描写を丁寧に記述することで、必然的に名詞が多く含まれた具体的な文章になります。
ただ、名詞を多く使うと漢字の占有率が増え、それはそれで読みにくい文章になってしまうリスクもあります。「ポイント」 「ノウハウ」 といったカタカナを適度に配置したり、難解な漢字をひらがなに変換したりして、バランスを取ることを意識してください。
適切なHTMLタグでマークアップする
PAAにコンテンツを表示させるには、コンテンツの構造や内容をGoogleに正しく認識してもらう必要があります。そのためには、HTMLタグのマークアップを適切におこなうことも有効です。最低限押さえておきたいのは、以下の3つのタグです。
見出しタグ(h1〜h6)
見出しタグであるh1〜h6を、見出しセクションの階層構造を意識して正しく使います。例えば、h2の次にh3ではなくh4を使うのは厳密には誤りです。以下のような正しい階層構造になるよう、見出しタグを設定してください。
<h1>大見出し(タイトル)</h1>
<h2>メインセクション</h2>
<h3>サブサクション</h3>
<h4>サブサクション</h4>
<h4>サブサクション</h4>
<h4>サブサクション</h4>
<h3>サブサクション</h3>
<h4>サブサクション</h4>
<h4>サブサクション</h4>
<h4>サブサクション</h4>
<h2>メインセクション</h2>
<h3>サブサクション</h3>
<h3>サブサクション</h3>
<h3>サブサクション</h3>
多くの場合、使われるのはh4までです。h5以降を使う機会は多くありません(あまりに細かくセクションを区切っても、それはそれでユーザビリティが悪くなるため)。
pタグ
段落はpタグで囲みます。見出しや箇条書きリストなど、段落とは異なる要素をpタグで囲まないよう注意してください。
<p>これは段落です。</p>
ul・olタグ
箇条書きリストは単純に中黒(・)を使うのではなく、ul・olタグでマークアップします。ulは単純な列挙のときに使い(番号なし)、olは手順やステップを表す場合に使います(番号あり)。
<ul>
<li>ポイント1</li>
<li>ポイント2</li>
<li>ポイント3</li>
</ul>
<ol>
<li>ステップ1</li>
<li>ステップ2</li>
<li>ステップ3</li>
</ol>
Googleのクローラーは性能が高いので、マークアップに多少の不備があっても、コンテンツ内容の理解にそれほど支障はないかもしれません。とはいえ、適切にマークアップしておくに越したことはありません。
PAA(People Also Ask)関連のツールで注意したいこと
PAAの質問を抽出してくれるツールも存在します。例えば「AlsoAsked」 は、キーワードに関連するPAAの質問を視覚的にわかりやすく抽出してくれます。
このようなツールは、コンテンツのトピックを考えるのに役立つことはありますが、あまり依存しないよう注意してください。
そもそも、PAAの質問はGoogleのAIが自動生成しているものであって、実際の検索ユーザーが打ち込んでいるクエリではありません。検索ユーザーのニーズを必ずしも的確に反映しているとは限らないのです。
したがって、「ツールで抽出した質問文を全部コンテンツに網羅しよう」 という発想は捨ててください。
そのような発想では、ユーザーにとって不要な情報が無造作に詰め込まれた無価値なコンテンツが出来上がるだけです。いわゆる情報の羅列的なコンテンツです。
検索上位ページの内容を全網羅したり、ユーザーにとって不要な情報を無造作に詰め込んだりといった、網羅性をはき違えた施策が多くの業界で蔓延していますが、それではコンテンツの品質とユーザーの満足度を大きく落としてしまいます。
コンテンツには何かしらの機能的価値(役割や目的)があり、その機能的価値を満たすために必要なトピックを、抜け漏れなく盛り込む必要があります。これが「網羅性を高める」ということの正しい解釈です。
出典:SEOにおける網羅性とは?コンテンツに盛り込むトピックや情報量を決めるプラニング方法を解説
我々はPAAに表示させるためだけにコンテンツを作るわけではありません。PAAのためのコンテンツ制作となると、おかしな方向に進んでしまいます。
PAAは検索順位と同様にアンコントローラブルなものなので、過度に意識はせず、優れたコンテンツの作成に集中してください。以下の記事でご紹介しているノウハウが役立つはずです。
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先ほどご紹介したテクニックは、スパイスとして少し付け加える程度で問題はありません。あくまで、優れたコンテンツであることが前提です。
まとめ
ここまでの内容をまとめます。
-
- PAAとは「People Also Ask(他の人はこちらも質問)」の略称。Googleの検索結果に表示される質問と回答の欄のことを指す。強調スニペットの一種。
- 特定のキーワードで検索するユーザーの多くが抱くであろうトピックをGoogleのAIが予測して、質問を自動的に生成する。
- PAAにより、検索ユーザーは関連性の高い情報を探しやすくなり、検索の利便性が向上する。
- 質問への回答は実際のコンテンツから50〜150文字程度(明確な規定はない)で抜粋される。
- 抜粋箇所をGoogleに対して指定することはできない。ユーザーへの回答として最適だとGoogleのAIが判断した部分が抜粋される。
- PAAに表示される確率を上げるには、端的な回答の記述やPREPを意識した文章作成、名詞の多用、適切なHTMLタグのマークアップといったテクニックが有効。
テクニックはあくまでスパイス程度に。優れたコンテンツを作ることに集中すればPAAはカバーできる。
PAAの実装により、Googleの利便性はますます向上しました。
これは喜ばしい反面、サイト運営者側としては、検索結果における競合が増えることを意味します。多くの検索キーワードにおいて、通常の1〜10位のページに加えてPAAが検索結果に表示されるわけですから、クリックを獲得するための難易度は多少なりとも上昇しているはずです。
特に「ちょっとした疑問の答えを知りたい」 といった程度の動機で検索されるキーワードの場合、PAAの回答を見ただけで満足してしまい、ページに訪問されないリスクも考えられます。キーワード選定のやり方も、PAAの登場に合わせて変化させていく必要があるでしょう(PAAだけで事足りる“浅い”キーワードは対策候補から除外する など)。
一方で、「変わらないものは何か?」 を見極めることも重要です。
PAAが実装されようが、コンテンツ作成の原理原則は変わりません。PAAに合わせてコンテンツの作り方を大きく変える必要はなく、「人が見たときに価値を感じるか?」 を基準にして、優れたコンテンツを作り続ければいいだけです。これに関しては、以下のGoogleのアドバイスが参考になると思います。
- 特定のユーザー層がすでに存在しているか、想定されており、その人たちがビジネスまたはサイトを直接訪問した際に、コンテンツを有用だと感じてくれると思いますか。
- コンテンツは、実体験や深い知識(たとえば、実際に商品やサービスを使用したり、ある場所を訪れたりした経験に基づく特別な知識)を明確に示していますか。
- サイトには主要な目的またはテーマがありますか。
- コンテンツを読み終わったユーザーは、あるトピックについて、目的を果たすのに十分な情報を得たと感じることができますか。
- コンテンツを読んだユーザーは、有益な時間を過ごせたと感じられますか。
ツールで抽出したPAAの質問を網羅するような、PAAのためのコンテンツ作成は避け、ユーザーを第一に考えたコンテンツを作ることに集中してください。そうすれば、良い結果が得られるはずです。
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