ライバル企業との差別化や、自社独自の強みなどを知る際に活用される競合調査。
企業の個性を打ち出しつつ業界内でシェアを獲得するには、冷静な分析が欠かせません。しかし「競合調査と言っても何をどうすれば良いのか分からない」という担当の方も多いはず。専門機関はコストもかかるため「まずは自社でやってみたい」という方もいますよね。
そこで、本記事では競合調査でメジャーな7つのフレームワークの解説と、各フレームワークのテンプレートをダウンロードできるようにしました。テンプレートはこちらからダウンロードできます。
各フレームワークの使い方を事例つきで解説しているので、ぜひ活用してみてください。
競合調査の必要性、メリットデメリットについてはこちらの記事で詳しく解説しております。
新しいサービスや企画をスタートさせる際、欠かせないのが競合調査です。 自社がどれくらいの立ち位置にいるのか ライバルと差別化するポイントはどこか 魅力的な付加価値はあるか 競合調査は、上記のような要素を明確にする時に役立ちます。 しかし、正しい方法を把握しないで競...
目次
3C分析
「3C分析」とは、顧客、自社、競合の頭文字のCから取った言葉で、戦略を成功に導くために必要なもの分析するフレームワークです。
- 顧客(Customer)
- 自社(Company)
- 競合(Competitor)
顧客は何を望んでいるのか、あなたの会社は何がしたいのか、競合はどういった強みをもっているのか、そうした3者の視点から物事を考えるフレームワークです。
例えば、自社のことだけを考えて戦略を立てると視野が狭くなったり落とし穴を見落としたりしがちですが、顧客、自社、競合と3つの視点を持つことで、バランスのとれた戦略が立案できます。
一般的には「顧客」→「競合」→「自社」の順番で分析していきますが、優先順位をつけず自由に考えてみるのもいいでしょう。
3C分析テンプレートの使用例
事例として「カフェの売上アップ」を目的とした3C分析を行ってみました。
店舗のある地域やエリアによってターゲットや競合は異なりますので、しっかり調査した上で各項目を埋めましょう。サラリーマンや学生がメインのカフェであれば、落ち着いて勉強や仕事ができる空間やインスタ映えなどのニーズがあると考えられます。
近くにスタバがある場合、競合になるため強みや弱みを明確にするべきです。実際に店舗へ訪れて良い面と悪い面を分析してみましょう。例えば「仕事したい」ターゲットに対してWi-Fiが遅ければ弱みになります。
最後に自社の強みと弱みを出す作業です。客観的に事実を捉えられない時は、第三者に協力してもらい意見をもらうと良いでしょう。3つの項目を全て埋めると「何をするべきか」が見えてきます。
3C分析は市場の「今」を理解するのに役立つフレームワーク。 競合調査のフレームワークには様々なアプローチが存在することで知られていますが、中でも事業の成功要因に焦点をあてる際には、3C分析が効果を発揮します。 本記事では、3C分析の「C」とは何を指すのか、そして具体的な施策を生み出す方法...
4C分析
「4C分析」は、商品やサービスを購入するまでに影響する4つの要素から、顧客視点で分析するフレームワークです。
顧客価値 Customer value |
商品・サービスに対して顧客が抱く価値。製品そのものだけでなく、ブランドイメージも含まれる。 |
顧客のコスト Customer cost |
価値に対して顧客が支払うコスト。顧客がいくら支払うかを多角的に検討・分析する。時間的なコストも含む。 |
利便性 Convenience |
見込み顧客にとって購入しやすい導線ができているか。決済方法の選択肢は十分か。販売方法は最適かなど。 |
コミュニケーション Communication |
どのようなツール・手段で顧客と繋がるのか。顧客が気軽にコミュニケーションを取れる環境があるか。SNS、実店舗、オフラインイベントなど。 |
上記4つの視点を分析することで、新商品の開発や既存商品の改善策に役立ちます。
商品価値と価格とのバランスから、使いやすさ、購入後のサポートなど、広範な意味での商品価値を導き出す分析項目が揃っているのが特徴です。これは競合調査というよりは、自社分析に近いフレームワークです。
マーケティングの数ある分析方法の中でも「顧客目線」という特徴を持っているのが4C分析です。名前は知っているものの、具体的にどんな用途に活用できるのかや、他のフレームワークとの違いについて理解している方は少ないのではないでしょうか? 本記事では、4C分析の特徴や他フレームワークとの違いを事例付き...
4C分析テンプレートの使用例
コーヒーメーカーを制作することを目的として、4C分析を行ってみました。
全ての項目を顧客視点で考えるのがポイントです。自分自身が顧客だとして、理想的な商品やサービスを想像してみるのも良いでしょう。競合の商品やサービスを4C分析して強みを炙り出すのも有効です。
注意点は、企業の主観や理想を強調しすぎないこと。4C分析はあくまで「顧客の視点」で分析する方法です。主観が入ると分析結果がブレてしまうので気をつけましょう。
4P分析
「4P分析」は、マーケティング戦略をより具体化する際に役立つフレームワークです。
商品 Product |
どんな商品やサービスを提供するか。 メニューの改善や拡販など。 |
価格 Price |
いくらで販売するか。どのように決済するか。 決済方法や課金手段など。 |
販促 Promotion |
どのように広めるか。 販促に何を使って、予算はどうするか。 |
流通 Place |
どんなふうに提供するか。 商品の作成工程や流通手段など。 |
上記4つの要素を分析することで、具体的な施策を導き出します。
競合他社の製品と差別化するポイントを見つけたり、効果的なマーケティング方法を見つける際に用いられることが多いです。より細かい点にフォーカスして、明確な施策を打ち出しやすくなります。
顧客のニーズが多様化している昨今では、単に商品を最安価格にするだけでは売れません。 どんなに素晴らしい商品でも、宣伝方法や適切な売り場がなければ、顧客は価値を見出だせなくなっています。たくさんの人にシェアされる商品やサービスは、質や価格などのバランスが取れているものです。 4P分析は、複...
4P分析テンプレートの使用例
フードデリバリーサービスを例に、4P分析を行ってみました。
競合のサービスを当てはめてみると、自社が取るべき行動を明確にしやすくなります。価格や販促方法などの「どこに力を入れるべきか」も把握できるでしょう。4P分析を上手に使いこなせば、非常に具体的な戦略や仮説を立てられます。
前述した4C分析が顧客視点なのに対し、4P分析は企業視点になっているのが特徴です。両方の側面から分析することで、より深い検証ができるようになります。
ファイブフォース分析
ファイブフォース分析とは、企業戦略を研究するハーバード大学教授のマイケル・ポーターが提唱した概念で、5つの要因をもとに自社の優位性や、取るべき戦略などを見出だせるフレームワークです。
競合企業 | 競合他者の数。資本力、技術力、価格。 |
新規参入者 | 業界自体の参入のしやすさ。新規参入して売上を伸ばしている企業。自社に与える影響レベル。 |
代替商品 | 自社製品に代わる価値を持つ製品やサービス。乗り換えにかかるコストや労力。 |
購入者の交渉力 | 顧客(購入者)と自社のパワーバランス。競合が多ければ買い手市場となり、収益性が落ちやすい。適切な価格設定ができているか。 |
販売者の交渉力 | サプライヤーと自社のパワーバランス。例えば自社と原材料を販売する業者との関係。業者に顧客がたくさんいれば、売り手市場になり価格交渉が難しくなる。 |
競合だけでなく新規参入や、代替商品などの脅威も合わせて分析できるのが特徴です。多角的な視点で分析し、自社ならではの「できること」や「やるべきこと」を見つけます。新しい業界に参入する際も活かせるフレームワークです。
ちなみに「代替商品」とは、自社製品と同じ商品やサービスではありません。
<例>テレビゲームの代替商品
- スマホゲーム:ゲーム自体の代替
- YouTube:「暇つぶし」の代替
- Netflix:「月額制」の代替
上記の通り、分析する目的によって「代替」の対象も変わることを覚えておきましょう。
ファイブフォース分析テンプレートの使用例
焼肉食べ放題を例に、ファイブフォース分析を行ってみました。
すでに存在する競合から、今後脅威となりえる参入者なども分析。代替商品では「安い」と「満腹」の条件を満たす「寿司食べ放題」や「ファミレス」をリストアップしました。ファミレスは「家族でゆっくり食事」の代替でもあります。
「美味しい肉」の代替では「高級焼肉店」も入ってくるでしょう。「居酒屋」は「飲める場所」の代替サービスです。
販売者と購入者の交渉力では、付き合いのある卸業者や近隣の状況について分析しています。分析をより深堀りしていけば「どんな店にするべきか」や「そもそも焼肉食べ放題をオープンするべきか」などが明確にできるでしょう。
SWOT分析
SWOT分析は、自社を取り巻く外部環境と、自社の商品やサービス、資金力などの内部環境を、プラス面とマイナス面に分けて分析するフレームワークです。
- 強み:自社商品やサービスの強み
- 弱み:自社商品やサービスの弱み
- 機会:ニーズの規模
- 脅威:ニーズやシェア率が下がる要因
業界における自社のポジションを明確にして、今後取るべき方向性や戦略を分析します。市場機会やプロジェクトの課題を見つける際にも有効です。
- 具体的な目標を決める
- 外部環境を考える
- 内部環境を考える
- 分析結果から戦略を立てる
上記の順で進めていきます。
SWOT分析テンプレートの使用例
介護施設を例にSWOT分析を行ってみました。
好立地な場所で認知度が高く、熟練スタッフの温かみのあるサービスが強み。その反面、慢性的な人手不足により、スタッフ自体が高齢化している問題点が見つかりました。「熟練スタッフだからこそ、雑に行われる作業もある」というような、強みが弱みになることもあります。
高齢化によるニーズの増加はあるものの、脅威として今後、人口減少によってニーズも減ることや同業者の増加も予想されます。人手不足に対する解決策も必要なことが分かるでしょう。
SWOT分析は、課題や改善点を見つける際にとても役立ちます。
バリューチェーン分析
バリューチェーン分析は、活動別に分割して分析できるフレームワークです。
「主活動」と「支援活動」の2種類に分類した後、さらに細分化していきます。
- 主活動の例
- 購買/製造/物流/マーケティング/販売など
- 支援活動の例
- 調達/技術開発/会計/財務/人事など
各項目を細かく分析できるため、無駄なコストがかかっている部分を発見したり、他社と比較して価値のあるポイントを見つけたりできます。製造から顧客の手に届くまでの工程を具体的に俯瞰できるのが特徴です。今まで気づけなかった隠れた問題を見つける際に役立ちます。
バリューチェーン分析テンプレートの使用例
冷凍からあげの製造・販売を例にバリューチェーン分析を行ってみました。
「主活動」には、仕入れから販売、アフターサービスまで、一連の流れを記入します。からあげを作るのに欠かせない原材料の仕入れから、顧客のクレーム対応などの活動をリストアップしました。
「支援活動」には、各工程で必要な行動やイベントをリストアップします。各活動を明確にしていくことで「この工程は不要なのでは?」や「よりコストを削減できるアイデア」などを見つけられるでしょう。
ちなみに分析する目的によって、主活動や支援活動の項目は変えて構いません。重要な活動や要素を当てはめて、自社に最適な分析を行ってみてください。
Points of X
Points of Xは、3つの視点から差別化戦略を分析できるフレームワークです。
- 相違点:差別化の肝となるポイント
- 類似点:ありきたりだが「なければ選ばれない」ポイント
- 脱落点:選ばれない、嫌がられるポイント
「差別化=相違点」なのですが、これだけでは突拍子もない差別化プランになりがちです。類似点や相違点を含めることで、浮世離れしない現実的な差別化プランを作れます。
Points of Xテンプレートの使用例
ツアー会社の羽田・韓国プランを例にPoints of X分析を行ってみました。
相違点は、2万円で航空券やホテルなどの費用をカバーしているところですね。企業Aはフライトの質を売りにしているものの、顧客のニーズとはズレているため脱楽点になります。類似点はツアーパッケージとして全てセットになっている点です。
自社と競合で比較していくと、どんな点が差別化に役立っているかが分かります。いろいろな角度から検証すると、より明確に差別化ポイントを把握できるのでおすすめです。
まとめ
効果的な競合調査は、決してかんたんなことではありません。だからこそ、競合調査を専門にする企業やコンサルタントなどがいるのです。しかし、テンプレートを活用していけば、徐々に競合調査のコツを掴めてきます。
※テンプレートは以下よりダウンロード頂けます
外部に依頼するとしても、途中まで分析できていれば依頼費を節約することもできるはずです。
今回紹介した7つのフレームワークは、適材適所で組み合わせると、より具体的で深い分析ができます。1つの方法で競合調査するよりも、複数の方法で行った方が濃いデータを取れるものです。
競合調査のスキルを身につければ、商品やサービスを作る際に必ず役立ちます。ぜひ、フレームワークを駆使して、独自の強みや問題点を明確にしてみてくださいね。
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第1回 :競合調査のやり方
第2回 :競合調査のテンプレート(当記事)
第3回 :マーケティングオートメーション(MA)とは?
第4回 :無料MAツール3選
第5回 :WordPressにおすすめなMAツール
第6回 :市場調査のやり方
第7回 :3C分析とは
第8回 :4C分析とは
第9回 :4P分析とは
第10回 :ファイブフォース分析とは
第11回 :SWOT分析とは?
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